『心臓への一撃』
地面というより岩盤の上に突出した薔薇一輪、あたかも枝から生え出たような鋭い刃の短剣が薔薇と一体になっている。
背景は曇天、水平線が認められる他は何もない景色である。
美しい薔薇は何の象徴だろうか・・・《愛》そのものの危うさと高貴(誇り)。
《愛》を傷つける刃、否、守る刃だろうか。精神と凶器(物)の相反する関係は、むしろ密接に結びついているものかもしれない。愛の先に見える暴力的なまでの裏切り、建国に対する造反、嫉妬・憎悪の負の感情、完成された美は常に滅びの運命を担っている。
『心臓への一撃』、大いなる愛を常に脅かす一撃は表裏一体、離れがたく結びついている。接触の予感、瞬間は、嵐を呼ぶ不気味な空模様に違いない。
写真は『マグリット』展・図録より
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