『選集』
小さな林檎、否、巨きいかもしれない。視線は林檎の中央当たりであれば、這うようにして描いた林檎なのか、人の目の高さからの位置なのかは不明である。
リンゴの葉の量感には違和感があるし、リンゴの葉が馬に置換されているのもまるで不自然である。飛翔する馬が尾だけで支えられているのは重力を無視した図である。
雲の色や形も記憶にない彩色であり、地表にも遠方の山にも草木が見えない不毛の地であるのに唐突に林檎があるという光景は条理を外している。
総てが不条理である、自然の法則に反しているものの寄せ集め、つまり『選集』なのだろうか。
不条理をあたかも条理のように嘘をつく、今の世の中に対する皮肉だろうか。不条理から「条理」を垣間見る。逆に言えば、条理として押し通そうとしているものへの警告かもしれない。
写真は『マグリット』展・図録より
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