四分割・・・しかし、なぜ喪章のような黒枠で縁取られているのだろう。
1928年制作とある、1928年は正しく父親の没年である。
社会的地位、然るべき仕事への情熱は、必ずしも家庭内へ向けられる視線とは合致しない。同じような日々、繰り返される日常の室内に父親の存在がいかに希薄であったかという追想である。
仕事一途、真面目な人物であったことは想像がつく。しかし家庭内に於いての存在の薄さ…家庭のなかに在っても、新聞(外/社会)を読むばかり。
四分割の上方に父を描いたのは、尊敬の念もあるかもしれないし当然感謝もしていたに違いない。にもかかわらず、「お父さん、あなたは…」息子であるマグリットはもの言いたげである。
「お父さん、あなたは物のようにそこに在るだけの人でした。しかも不在の方が多く、母の死にも・・・」
静かに物言わずコツコツと描き続けたマグリットの心境がいかなるものであったか知る由もないが、(この絵の通りでございます)という彼の言葉が聞えてくるようである。
(写真は新国立美術館『マグリット』展/図録より)
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