『花嫁』
結婚式当日の、または結婚したばかりの女性の美称。在るが無いような微妙で一時的、すぐに霧消する仮の呼び名である。花嫁という美称は実態から浮いており、周囲に人の眼差しに他ならない。しかし、どこの国においてもこの美称は通用し、誰もが抱く感慨を孕んだ美称であり否定はない。
その作品である。
存在感はあるのに、地に着地しておらず、この流れの行方を図り知ることは困難である。既存の形、部分的には何かの形に似ているが、決定はない。疑似三次空間ではあるけれど、目的を持たない連鎖であり、単に《まことしやか》であるにすぎない。
念の入った複雑な構成であるが、構成に意味がない。
大いなる意味、誰もが思い描くことができる『花嫁』という言葉は、男女の連鎖がある限り通用する仮称である。
この不思議さ。知っていて見たこともあると誰もが証言する『花嫁』。
花嫁は女性に限るという制約ある言葉であるが、『花嫁』という美称は女性を通り抜けていき、決して長くは留まらない。
『花嫁』、憧憬をもって放たれる『花嫁』という言葉は、風や雲のように実測不能であり、動かぬ証拠を証明できないものである。デュシャンは鋭利な感覚をもって《言葉と物(実態)》を見つめている。
写真は『DUCHAMP』 www.taschen.comより
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