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『停止原基の綱目』
停止原基? 原基とは個体の発生段階で形態や機能が器官として未分化な状態の細胞群のこと。まだ分化していない状態の停止、まだ現れ出ていないものの打ち止め。それは《無》に等しい領域である。その領域の綱目(大要と細部)となると、さらに理解は困難になる。難しいというより支離滅裂な印象である。
きっちりマス目(方眼)として図られた線条に描かれた若干具象を匂わせる絵図は(時間)を暗示しているようにも見える。
そして、その上下の暗澹…理解を超えた(あるかもしれない)(在ると予想される)根源的な原点、始まりであり終わりであるような核を潜ませた空想の域。
基点から分岐していく線条、振られた数字の意味、法則の不明はすべてが偶然であるしかないような連帯の欠如である。
題名の意味から推して考えれば、「何かが誕生しようとして生まれる前に消された大まか、かつ微細な図解」ということになる。
しかし、大真面目に失笑に値する図解であって、意味の霧消の表明であることに気づく。
彼(デュシャン)は、真剣なる眼差しで《無意味の意味》を追求したのだと思う。
意味のないものは抹殺され、有意義なものを探求している世界を裏側から覗き見ている虚無感が、むしろ痛快な快感としてくすぐる要素を孕ませている沈黙の作品である。
(写真は『マルセルデュシャン』㈱美術出版社より)
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