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雷電とどろく海上と穏やかだが非現実的かつ空疎な部屋、この二つの異世界が開口を介して繋がっている。
大荒れの海、船は無事に目的地に着くだろうか。手前の部屋(来世)に着かざるを得ないのだろうか。開口から覗く景色は単に現実(現世)であり、浮世の荒波、困苦かもしれない。人生の悲哀、死に吞み込まれるような困窮、辛苦。
活性、激動のエネルギーの放出は、来世(死)への航海の消費にすぎないのか。
異世界(来世)の静けさ、辛うじて眼差しだけを留めたビルボケ(手足のない人型)が現世を見つめている。
作家の眼差しは異世界(来世)の側にある。死んだ人への思いに身を委ね、作家自身の生きる荒海をビルボケ(母)と共に眺めている。
公言不可であるが、母と共に在ることが唯一の安息のエリアだったかもしれない。
写真は『マグリット』展・図録より
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