続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

マグリット『真夜中の結婚』

2016-03-16 15:32:50 | 美術ノート

 『真夜中の結婚』
 真夜中の結婚とは何を意味しているのだろう。
 結婚とは一般的には成人男女の性的関係、家族としての基本的形態を意味するものであるけれど、時間を指定する根拠はどこにあるのだろう。
 真夜中・・・夜の真ん中、例えば0時などを指すと思うが、この場合は精神的な真夜中、例えば時間の狭間、時間を超越した時空を意味しているのではと思われる。

 この空間をよぎる不定形な空間を流線形に固めたような奇妙なものは説明がつかない。

 あけがた近くの苹果の匂が/透明な紐になって流れて来る。(『青森挽歌 三』宮沢賢治)

 心理的な感覚を物理的な現象に置換したものなのだろうか。
 背景の樹木が逆さに描かれているが、前景と後景では時空が切断されている。自然の理をもってすれば、不条理な幻想空間にほかならない。

 ものはみな/さかだちをせよ/そらはかく/曇りてわれの脳はいためる(『歌稿』より・宮沢賢治)

 手前の台座には、上に男の後頭部、中段には金髪のかつら(実体がない)が置かれている。結婚という題名から、男女を想定してみるが、そういうことではないようである。
 明らかに人為的な領域(ベランダ)であり、虚空を映した鏡が傍らに置かれている。

 これら条件を指して『真夜中の結婚』と名付ける。
 真夜中の混沌、超自然の景色。どちらがどうというのではなく、重力と無重力、逆さであると認識する根拠を並べて一つに見なす。
 つまり、積み重ねられた観念からの解放である。現実と幻想空間の合体、結婚という観念的な制度を外した自由な合体がこの画面の中に在る。
 人間的な温度を感じない世界、奇妙な幻想との合体。
 思考は迷路を彷徨する、いわく言い難い驚愕(混乱)は、超自然との結びつきを言うのかもしれない。


(写真は『マグリット』西村書店より)


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