続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

🈞マグリット『喜劇の精神』③

2018-04-26 06:44:40 | 美術ノート

 喜劇の精神は人のみに宿る感情である。
 この人型(擬人化された紙片のようなもの)のいる状況に『喜劇の精神』があるという。見えない精神を具象化し垣間見せた作品を前に考え込んでしまう。
 喜劇とは何だったかと…。

 立ち姿というより、何気ないが踏ん張っているポーズである。下り坂であるにもかかわらず、上半身は直立している。大変さを見せない、水面下で足を忙しく掻く水鳥のような平静さである。
 足は下方に向かっているのに顔は上方に向き、行動と思考が相反している。すなわち《葛藤》があり、常に上昇志向に身を挺している。
 何かを求めるための眼差しがそこに潜んでいる、隠しているが秘めているという風である。

 薄っぺらな身体、坂は身体的な年齢、死へと向かう道筋かもしれない。しかし思考ばかりはそれに逆らっている。
 儚い抵抗・・・滑稽に映る現象。すべては幻であるという前提に立てば、喜劇であるほかないではないか。わたくしの告白であり、自画像である。


(写真は新国立美術館『マグリット』展/図録より)


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