続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

エドワード・ホッパー「ナイトホークス」③

2020-05-24 06:54:10 | 美術ノート

「ナイトホークス」、人口の光彩である。カップルの彼はバーテンと視線を一つに会話している。彼女は彼に左手をのばし、彼の右手の指先に触れている。
 一人で座っている男の手はなぜかカウンターの内部に伸びている。
 それぞれ積極的な動きはなく気だるい雰囲気だが、秘密めく妖しいムードはぬぐえない。

 今日一日の疲れを癒す、しかし労働者ではない彼らの仕事は何なのだろう。戦火にいる身内への想いなのか自身の明日への不安なのか・・・夜が明けるまでの安息、否、震えるような緊張かも知れない。
 機密情報のやり取りなどではなく、単なる休息に過ぎないかもしれない。窓越しの光景に荒々しさは微塵もない。
 静かすぎる夜更けの街角、道を挟んだ灯りの消えた店内にも人影があるように見える。

 クリーム色の壁の明るさが全体の暗さを脅かしている。全体の暗さは明るい壁の部分に全力で対抗している。しかし、夜が明ければ勝敗は一つの色の中に集結してしまうに違いない。
 夜の安らぎ、平穏なひと時。忍び寄る気配は妄想にすぎない。

 だが、真夜中の時間と空間は秘かに暗躍している。


 写真は日経『経済で見る名画/十選』田中靖浩より


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