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《傑作あるいは地平線の神秘》
三人に分割された一人の紳士、その頭上には三日月がそれぞれ光を放っている。
あり得ない光景である。それを傑作(優れた出来栄えの作品/奇妙で滑稽なさま)と言い、地平線の神秘と名付けている。
三日月が南中するのは正午から日没ごろだが、この景は薄暗く少なくとも真昼とは言い難い。
月との関係は、地平線(大地と天との境界線)に垂直に立つことで観察者のものになる。月を見るという行為が、月を所有することにはならないが、心理的には通用する。
(わたしの月)はあり得るし、分解された自己内に同じ月を所有(思い描く)することは可能である。
ただ、物理的観点からいえば、そうした現象は非現実的であり、偽に括られる。
《傑作あるいは地平線の神秘》というのは《奇妙かつ心理の謎を孕んだ存在の神秘》であり、真実ではないが真理の鍵を開けうる前提条件である。
(写真は『マグリット』東京美術より)
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