続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

マグリット『会話術』

2015-10-04 08:06:20 | 美術ノート
 採掘され切り取られた石が積み重なっている。文字を現わしている形があり、REVE(夢)と認識される単語もある。
 巨大かつランダムに組まれた石の壁、それを見上げる豆粒にも等しい二人の男のシルエット。

 一見すると、強力・不動の石の積み重ねであるが、一つ一つの力関係を追っていくと、極めて危うい、あるいはこうは積めないだろうという疑惑がわく。
 
 崩壊を免れない構築である。REVEのVの上部などは空白であり、それぞれが微妙に危機的な構築関係なのである。崩落を免れないが、崩落を予感させないような構築としての描写である。

 
 文字・言語(会話)の持つ偉大な力は人の力の及ぶところではない。確かに人が思考したはずのものである。言語は社会の要として世界を動かしていると換言してもいい。その強固な言語が崩れるなど想定外であるし、そんなことは有り得ない。
 一抹の不安は、その言語によって人間が押しつぶされる危険があるかもしれないということである。

 言語は崇拝に値するツールである。
 しかし・・・と、マグリットは考える。

《夢だ、夢に過ぎないのだ》

 言語は重力に作用されない、ゆえに崩壊の危機などあり得ない。

 言葉とイメージの関係の表象を描き、鑑賞者の前に差し出した作品だと思う。


(写真は『マグリット』㈱東京美術刊より)

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