『炎の帰還』
巨人の山高帽の男が街に出現し、一輪の薔薇を手に頬杖をつき彼方を眺めている。異様なほど巨きな男は街を足下に優雅にもどこかを見つめているが覆面のためもあり、特定できない視線である。
街を足下に…地球の上に跪いているということだろうか。地球から某所を見つめているという構図かもしれない。
炎、赤く燃え滾る情熱。
黄色の薔薇。黄色は光や太陽のイメージがあり、バラは女性や美に通じる。
帰還(Rekindled)は、再び新たなる情熱を燃やすということである。
雄々しくも地球(現世)に跪き、優雅なポーズで頬杖をつき、右手には薔薇(愛と優美)をもつ洒落男は地球外(冥府)を見ているのではないだろうか。
振り払っても振り払っても、募る思い。
素顔は見せらせない、この思いは人に覚られてはならない。大きく膨らむ哀惜、いつまで経っても消えない追慕。
屈折した思いをこの作品に託したのだと思う。
(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)
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