自己の不全感・疎外感から人を愛する。いわば穴埋めだ。
理屈をつけて人を愛する。利害損得勘から抜けられぬ悲劇だ。
金への執着、出世への執着。主義や主張への執着が凄いと、人を愛することができない。
ただそのまま人を愛するという当たり前ができない不幸は、底知れぬ不幸だ。
存在は汚れ、濁り、狡知が支配する。
そういう嫌な人が出世し、金を為め、何気に威張る。それがどれほどの醜さであり厭らしさであるか。
それを自覚できない不幸は、自他を道連れにして、己と世界を腐食させる。
そういう不幸な人を現代文化は量産している。
幼いころから競争、なんでも競争、それを当然とする。幼子の愛する心を消去して、勝つ、上に立つことを教え込み馴致する。
柔らかな人間性の魅力は減じ、戦士の名誉を羨望する存在に変える。堕落は極限的だ。
自覚なき罪は、永遠だ。世代に受け継がれる人間性の堕落。それが「エリート」だと思い込む。これ以上の罪はない。
武田康弘