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留まることを知らない新時代のデュオ
いま、もっとも未来に耀いているヴァイオリニスト
アリーナ・イブラギモヴァ
&
ロン・ティボー国際コンクールで優勝したイブラギモヴァの盟友ピアニスト
セドリック・ティベルギアン
モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ全曲演奏会[全5回]
2015年日本ツアー オフィシャル・サイト
公演日程
[東京公演:全5回]主催:王子ホール
2015年10月1日(木)19:00 銀座・王子ホール Vol.1
2015年10月2日(金)19:00 銀座・王子ホール Vol.2
2015年10月3日(土)15:00 銀座・王子ホール Vol.3
2016年3月24日(木)19:00 銀座・王子ホール Vol.4
2016年3月25日(金)19:00 銀座・王子ホール Vol.5
[名古屋公演]主催:電気文化会館
2015年10月6日(火)19:00 名古屋・電気文化会館
- 2015.09.24
- 矢澤孝樹氏(音楽評論)のエッセイ「予測不能の変容力~イブラギモヴァとティベルギアンのモーツァルトに期待する」をアップしました。
- 2015.09.16
- アリ-ナ・イブラギモヴァの新譜情報9/21日本先行発売 バッハ:ヴァイオリン協奏曲集の情報をアップしました。
- 2015.09.07
- 舩木篤也氏(音楽評論)のエッセイ「アリーナ・イブラギモヴァ讃」をアップしました。
- 2015.09.07
- アリーナ・イブラギモヴァ&セドリック・ティベルギアン:モーツァルト・ヴィオリン・ソナタ全曲演奏会日本ツアー2015の特設サイトをアップしました。
[東京公演:前期]主催:王子ホール
2015年10月1日(木)19:00 銀座・王子ホール Vol.1 [好評発売中]2015年10月2日(金)19:00 銀座・王子ホール Vol.2 [好評発売中]2015年10月3日(土)15:00 銀座・王子ホール Vol.3 [好評発売中] *残僅少各公演:全席指定 6,000円
[チケットのお問合わせ]王子ホールチケットセンター 03-3567-9990
詳細はこちら■チケットの予約
王子ホールチケットセンター 03-3567-9990
CNプレイガイド 0570-08-9990
ローソンチケット 0570-000-407 (Lコード:32192)
e+ イープラス (パソコン&ケータイ)
[東京公演:後期]主催:王子ホール
公演チケット:11月28日(土)10:00発売
2016年3月24日(木)19:00 銀座・王子ホール Vol.4
2016年3月25日(金)19:00 銀座・王子ホール Vol.5 主催|王子ホール
[チケットの問い合わせ]王子ホールチケットセンター03-3567-9990
[名古屋公演]主催:電気文化会館
2015年10月6日(火)19:00 名古屋・電気文化会館[好評発売中]全席指定 5,000円 学生券 3,000円
*学生券は電気文化会館チケットセンターのみ取扱い
主催|電気文化会館
[チケットの問い合わせ]電気文化会館チケットセンター052-204-1133
詳細はこちら■チケットの予約
電気文化会館チケットセンター 052-204-1133
チケットぴあ 0570-02-9999
芸文PG 052-972-0430
ヤマハPG052-201-5152
[2015年日本ツアー公演プログラム]
アリーナ・イブラギモヴァ&セドリック・ティベルギアン
モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ全曲演奏会 2015年10月1日(木)19:00 銀座・王子ホール Vol.1 [公演チケット発売中]
2015年10月6日(火)19:00 名古屋・電気文化会館 [公演チケット発売中]モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ
ト長調 K301
変ロ長調 K10
変ホ長調 K481
ト長調 K379
ヘ長調 K30
ハ長調 K14
ホ短調 K304
2015年10月2日(金)19:00 銀座・王子ホール Vol.2 [公演チケット発売中]モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ
ヘ長調 K376
変ロ長調 K15
イ長調 K402
ハ長調 K6
ニ長調 K29
ト長調 K9
ニ長調 K7
イ長調 K305
2015年10月3日(土)15:00 銀座・王子ホール Vol.3 [公演チケット発売中]モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ
変ロ長調 K454
ト長調 K27
ハ長調 K296
ヘ長調 K547
変ロ長調 K31
ニ長調 K306
2016年3月24日(木)19:00 銀座・王子ホール Vol.4 [11月28日(土)10:00発売]モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ
ヘ長調 K377
変ロ長調 K8
ハ長調 K303
ヘ長調 K13
ハ長調 K28
変ホ長調 K26 他
2016年3月25日(金)19:00 銀座・王子ホール Vol.4 [11月28日(土)10:00発売]モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ
変ホ長調 K380
ト長調 K11
変ホ長調 K302
イ長調 K526他
© Rikimaru Hotta
アリーナ・イブラギモヴァ:ヴァイオリン
Alina Ibragimova : violin
今、もっとも未来へ耀いているヴァイオリニスト!
バロック音楽から委嘱新作までピリオド楽器とモダン楽器の両方で演奏するアリーナ・イブラギモヴァは、ロンドン交響楽団、フィラデルフィア管、クリーヴランド管、ドイツ・カンマーフィル・ブレーメン、シュトゥットガルト放送響、フランス放送フィルハーモニー管、マリインスキー劇場管、フィルハーモニア管、エイジ・オブ・エンライトメント管、BBCの全てのオーケストラ等と共演を果たしている。
これまでに共演した指揮者には、ベルナルド・ハイティンク、サー・チャールズ・マッケラス、ヴァレリー・ゲルギエフ、サー・ジョン・エリオット・ガーディナー、パーヴォ・ヤルヴィ、ウラディミール・ユロフスキ、フィリップ・ヘレヴェッヘ、ヤニック・ネゼ=セガン、トゥガン・ソヒエフ、ジャナンドレア・ノセダなどがいる。
最近の主な協奏曲の共演で、ベルナルド・ハイティンク指揮ロンドン交響楽団とモーツァルト3番、サー・ジョン・エリオット・ガーディナー指揮ロンドン響とシューマン、ファンホ・メナ指揮クリーヴランド管とシベリウス、フィリップ・ヘレヴェッヘ指揮ロイヤル・フランダース・フィルハーモニー管とメンデルスゾーン、ウラディミール・ユロフスキ指揮フィラデルフィア管のデビューでモーツァルト4番を演奏。また今後の主な協奏曲の予定は、ケント・ナガノ指揮モントリオール響とベートーヴェン、コチシュ・ゾルタン指揮ハンガリー国立管とバルトーク2番などがある。
またソリストとしての弾き振りでクレメラータ・バルティカ、エンシェント室内管ともツアーを行っている。
ソロ作品と室内楽で定期的にパートナーを組むセドリック・ティベルギアンとは、ウィグモア・ホール、コンセルトヘボウ、モーツァルテウム、ムジークフェライン、カーネギー・ホール、シャンゼリゼ劇場などの他、ザルツブルク、ヴェルビエ、ロッケンハウス、そしてオールドバラなどの音楽祭に出演している。前シーズンのリサイタルのハイライトとしては、名古屋と東京でのベートーヴェン・ヴァイオリン・ソナタ全曲演奏会、サン・フランシスコやニュー・ヨークのパーク・アヴェニュー・アーモリ-・リサイタル・シリーズなどでアメリカをツアーした他、再びウィグモア・ホールとシャンゼリゼ劇場に登場した。
ロシア生まれ、モスクワのグネーシン音楽学校で学び、1995年には家族とともにイギリスに移住。メニューイン・スクールと王立音楽院で学び、ナターシャ・ボヤルスキ、ゴルダン・ニコリッチ、クリスティアン・テツラフ、エイドリアン・バターフィールド等に師事。
2010年のロイヤル・フィルハーモニック協会のヤング・アーティスト賞、ボルレッティ=ブイトーニ・アワードを受賞、 ハイペリオン・レコードで録音を多数行っており、使用楽器は、ゲオルク・フォン・オペルから貸与されたアンセルモ・ベローシィオ(c.1775年製)を使用。
© Jean Baptiste Millot
セドリック・ティベルギアン:ピアノ
Cédric Tiberghien, Piano
輝かしい国際的なキャリアは五大陸全土にわたり、カーネギー・ホール、ケネディ・センター、ロイヤル・アルバート・ホール、クイーン・エリザベス・ホール、バービカン・センター、ザルツブルクのモーツァルテウム等、世界で最も名声の高いホールに登場している。
今後は、ロンドン交響楽団へのデビューや、エンリケ・マッツォーラ指揮パリ管弦楽団とベートーヴェンのピアノ協奏曲全曲演奏会を完結させる。リサイタルでは、ウィーン・コンツェルトハウス、アムステルダム・コンセルトヘボウのほか、ウィグモア・ホールの名誉あるマスター・シリーズへの出演やシャンゼンリゼ劇場に再び登場する。
最新のCDは、ハイペリオンより2014年『シマノフスキ:ピアノ作品集』をリリースし、「その上品な妙技は巨匠の域である」(グラモフォン誌)など各誌で絶賛された。その他、「デュボワ:ロマン派ピアノ協奏曲シリーズ」(アンドルー・マンゼ/BBCスコティッシュ交響楽団)、「フランク:交響的変奏曲、交響詩《鬼神》」(フランソワ=グザヴィエ・ロト/リエージュ・フィル)、「ブラームス:ピアノ協奏曲第1番」(ビエロフラーヴェク/BBC交響楽団)、6枚のソロ作品集がハルモニア・ムンディからリリースされている。
パリ国立高等音楽院でフレデリック・アゲシーとジェラール・フレミーに師事し、1992年、わずか17歳でプルミエ・プリを受賞。その後、複数の国際コンクール(ブレーメン、ダブリン、テル・アヴィヴ、ジュネーブ、ミラノ)で入賞し、1998年ロン=ティボー国際コンクールでの優勝では、合わせて5つの特別賞も受賞した。
60曲を超える協奏曲のレパートリーを持ち、一流オーケストラと共演を重ねている。これまでに、ボストン交響楽団、クリーヴランド管弦楽団、ワシントン・ナショナル交響楽団、ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団、チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団、スイス・ロマンド管弦楽団、ブダペスト祝祭管弦楽団、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団、シュトゥットガルト州立歌劇場管弦楽団、BBC交響楽団、フランス放送フィルハーモニー管弦楽団、パリ管弦楽団、フランス国立管弦楽団、シドニー交響楽団、NHK交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団、東京交響楽団、札幌交響楽団等と共演。指揮者では、クリストフ・エッシェンバッハ、イルジー・ビエロフラーヴェク、ライオネル・ブランギエ、ロビン・ティッチアーティ、ヤニック・ネゼ=セガン、シモーネ・ヤング、チョン・ミョンフン、クルト・マズア、イヴァン・フィッシャー、ジェフリー・テイト、ルイ・ラングレー、リュドヴィク・モルロー、ステファン・ドヌーヴ、エンリケ・マッツォーラ等と共演している。
室内楽にも熱心で、特に、アリーナ・イブラギモヴァ(vn)、アントワン・タメスティ(va)、ピーター・ウィスペルウェイ(vc)と定期的にパートナーを組んでいる。
チケット情報
TICKET INFORMATION
[東京公演:前期]主催:王子ホール
2015年10月1日(木)19:00 銀座・王子ホール Vol.1 [好評発売中]2015年10月2日(金)19:00 銀座・王子ホール Vol.2 [好評発売中]2015年10月3日(土)15:00 銀座・王子ホール Vol.3 [好評発売中] *残僅少各公演:全席指定 6,000円
[チケットのお問合わせ]王子ホールチケットセンター 03-3567-9990
詳細はこちら■チケットの予約
王子ホールチケットセンター 03-3567-9990
CNプレイガイド 0570-08-9990
ローソンチケット 0570-000-407 (Lコード:32192)
e+ イープラス (パソコン&ケータイ)
[東京公演:後期]主催:王子ホール
公演チケット:11月28日(土)10:00発売
2016年3月24日(木)19:00 銀座・王子ホール Vol.4
2016年3月25日(金)19:00 銀座・王子ホール Vol.5 [チケットの問い合わせ]王子ホールチケットセンター03-3567-9990
[名古屋公演]主催:電気文化会館
2015年10月6日(火)19:00 名古屋・電気文化会館[好評発売中]全席指定 5,000円 学生券 3,000円
*学生券は電気文化会館チケットセンターのみ取扱い
主催|電気文化会館
[チケットの問い合わせ]電気文化会館チケットセンター052-204-1133
詳細はこちら■チケットの予約
電気文化会館チケットセンター 052-204-1133
チケットぴあ 0570-02-9999
芸文PG 052-972-0430
ヤマハPG052-201-5152
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■ディスコグラフィー
-
- PCDA68068(日本語解説付き国内仕様盤)
CDA68068
- J.S.バッハ:ヴァイオリン協奏曲集
- アリーナ・イブラギモヴァ(ヴァイオリン)
アルカンジェロ、ジョナサン・コーエン(指揮)
-
- PCDA67993(日本語解説付き国内仕様盤)
CDA67993
- イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ集 Op.27
アリーナ・イブラギモヴァ(ヴァイオリン)
-
- OCDA67911/2(日本語解説付き国内仕様盤)
CDA67911/2
- シューベルト:ヴァイオリンとピアノのための作品全集
アリーナ・イブラギモヴァ(ヴァイオリン)
セドリック・ティベルギアン(ピアノ)
-
- PCDA67820(日本語解説付き国内仕様盤)
CDA67820
- ラヴェル:ヴァイオリンとピアノのための作品全集
アリーナ・イブラギモヴァ(ヴァイオリン)
セドリク・ティベルギアン(ピアノ)
-
- PCDA67795(日本語解説付き国内仕様盤)
CDA67795
- メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲集
アリーナ・イブラギモヴァ(ヴァイオリン)
ウラディミール・ユロフスキ(指揮) エイジ・オヴ・インライトゥメント管弦楽団
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- OCDA67691/2(日本語解説付き国内仕様盤)
CDA67691/2
- J・S・バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータ(全曲)
アリーナ・イブラギモヴァ(ヴァイオリン)
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- CDA67703
- シマノフスキ:ヴァイオリンとピアノのための作品全集
アリーナ・イブラギモヴァ(ヴァイオリン)
セドリク・ティベルギアン(ピアノ)
-
- CDA67637
- ロースラヴェツ:ヴァイオリン協奏曲集
アリーナ・イブラギモヴァ(ヴァイオリン)
イラン・ヴォルコフ(指揮) BBCスコティッシュ交響楽団
-
- CDA67547
- ハルトマン:ヴァイオリンと管弦楽のための『葬送協奏曲』(1959年版)
無伴奏ヴァイオリンのための組曲第1番/無伴奏ヴァイオリンのための組曲第2番/無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第1番/無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第2番
アリーナ・イブラギモヴァ(ヴァイオリン)
ブリテン・シンフォニア
エッセイ&インタビュー
ESSAY & INTERVIEW
予測不能の変容力
~イブラギモヴァとティベルギアンのモーツァルトに期待する
矢澤孝樹(音楽評論)
Sussie Ahlburg
すばらしい女性ヴァイオリニスト―こういう言い方が今や意味のないものであることは承知しているけれども、ジェンダーあるいはそれ以前の固有の美質というものはたしかにあると信じたいのだ―が数多活躍する現代において、私が特にその個性と共通性において注目する3人は、イザベル・ファウスト、パトリツィア・コパチンスカヤ、そしてイブラギモヴァの3人である。それぞれ1960年代、70年代、80年代生まれの彼女たちは、未知のレパートリーやアプローチへの開拓精神と、ピリオド楽器演奏(あるいはH.I.P)の洗礼を拒まず、結果として異なる時代を様式的差異を十分に意識しながら行き来できる柔軟性を併せ持つ。
そしてそれぞれの個性と言えば、ファウストの包容力と自然さ、コパチンスカヤの憑依的魔力に対し、イブラギモヴァは「変容力」とでも形容すべきだろうか。ハルトマンの厳粛さ、ロスラヴェツの2曲の協奏曲の様式的変化をみごとに描き出したかと思えば、J.S.バッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータでは、ピリオド楽器奏者以上に過激にヴィブラートを減らし、凍りつくように緊迫した空間を創りだしていた。一方でルクーやラヴェルを香り高く奏し、プロコフィエフには圧倒的切れ味を、そしてイザイは内在する魔性を露わにし…まったく、手塚治虫の『火の鳥 未来編』に登場する、何にでも姿を変えることができる不定形生物・ムーピーのようだ。
いやいや、この魅力的なヴァイオリニストを、架空の不定形生物などにたとえてはいけない。それにムーピーは、飼い主の意志に反応して姿を変えるが、イブラギモヴァは自発的に変容してゆくのである。しかも、一聴すると細身だが、芯のあるしなやかな描線で鮮明に楽曲を造型してゆくその特質には、いささかの揺るぎもないのだ。
そのイブラギモヴァが、盟友セドリック・ティベルギアンと共に、モーツァルトのデュオ・ソナタを奏でる。このコンビは一昨年前に、ベートーヴェンのソナタのみごとな実演を聴かせてくれた(CDもある)。放埓さや大言壮語を慎重に排する一方で、遊びやきわどい逸脱を随所に潜ませつつ、聴き手の関心を一瞬たりともそらさないスリリングなベートーヴェン。ならばこのコンビのモーツァルトは、いったいどうなるのか。どちらかといえばピアノに主導権があるそのソナタたちを、ティベルギアンはどう牽引し、イブラギモヴァはいかなる変容力をもってそこに絡んでゆくのか。予測不能の変容力によって、モーツァルトのソナタたちが新しい貌を見せてくれるのを、心待ちにせずにいられようか!
アリーナ・イブラギモヴァ讃
舩木篤也(音楽評論)
R. Hotta
一言でいえば、大人の魅力。アリーナ・イブラギモヴァのステージに圧倒されるときの感覚を、簡潔に表そうと思ったら、そんなことばが思い浮かんだ。
若いわりに大人びて見えるということか? と問われれば、たしかに、それもある。うっすらと微笑んではいるが、客席をほんのすこし睥睨するようなまなざしで、むやみに愛想を振りまかない。身のこなしは─ダンサーのようによく動くけれども─落ち着いており、かりに一瞬プレイが危うくなりそうになっても、動じた色をひとつも見せない。そうしてすぐに解決策を見いだす。さすが、6才の時からオーケストラを相手に舞台を踏んできただけのことはある、と言うべきか。
だが、なんといっても大人なのは、出てくる音楽そのものである。
たとえば、バッハの《無伴奏》。21世紀にキャリアを積んだヴァイオリニストの多くがそうであるように、彼女もまた、モダン楽器を用いながら、フレージングや、付点リズムの解釈、舞曲的キャラクターの探求などにおいて、「ピリオド」的知見を援用する。ところが、ダイナミックレンジに関しては、これをまったく反ピリオド的に、じつに幅広くとるのだ。ソナタ第2番のグラーヴェ楽章における最弱音など、そこまで行くかと、思わず息を呑んだほどである。
そしてここが重要なのだが、その際、ピリオドとモダンの混合とか、折衷とか、そういったことを微塵も感じさせない。つまり、全体のどこにも「ここはこのレシピで、あそこはこのレシピで料理してみました」的な恣意の痕がない。大人と呼ぶゆえんである。
そう、大胆かつ自然。
セドリック・ティベルギアンとベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタを演奏したときもそうだった。ティベルギアンのピアノは、かなり「仕掛けて」くるピアノだ。その意味では、イブラギモヴァよりも、やんちゃと言えるかもしれない。だがそれを、彼女は受けて立つ。たとえば、第7番の第1楽章。ドラマチックなこの曲で、ねっとり歌ったかと思うと、マーチを実にあっけらかんとやったりする。3日間かけたツィクルスで、音量の最高点を第9番《クロイツェル》に設定する賢さにも、舌を巻いた。
そんな二人が、このたびモーツァルトのヴァイオリン・ソナタを、ここ日本で5回かけて全曲演奏するという(東京・王子ホールにて)。今秋は、うち最初の3回。この全曲プロジェクトは、彼らの本拠地ロンドンでも昨年始めたばかりのもので、まだ録音もリリースされていないから、いわば初モノと言っていい。イブラギモヴァは、同じくモーツァルトのソナタを、去る7月にはフォルテピアノ奏者のクリスティアン・ベザイデンホウトともやったようだから、そこでの経験も加味された、いわば東京ヴァージョンが聴けるかもしれない。
ボディはしっかりあるが、甘くべったりとした響きではなく、どちらかといえばスル・ポンティチェロぎみの、辛口ヴァイオリン。シューマンやベルクの渋い協奏曲も好んで弾く。そんなところにも筆者は魅かれる。「未体験だが、それなら」と思われた向きは、ぜひ、この機会に足を運んでみてほしい。