松方コレクションをつくったイギリスの画家・総合芸術家であるHrank・Brangway(フランク・ブラングィン)の展覧会が昨日終わりました。国立西洋美術館(松方コレクション)の50周年記念の最後を飾る展覧会でした。
松方とブラングィン、ふたりの個人の思いと行動によって集められた美術コレクションが、国立の西洋美術館を誕生させ、それが今年で50周年を迎えたわけです。
この日本を代表する美術館=『国立西洋美術館』は、20世紀最高の建築家・フランスのルイ・コルビジェの設計で、シンプルで品位の高いデザインです。これみよがしなところがなく、内外装ともに美しく親しみのある建造物です。
「普遍性」とは、「私」の情熱が生みだすものであり、それに裏打ちされない単なる「一般性」は、よろこびのない灰色の世界しか生みませんが、そのことを見事に証明するのが、『国立西洋美術館』です。日本にある「国立」と名のつく施設は色気のないものばかりで、美しさと親しみのある普遍性を感じさせる世界とは無縁ですが、松方とブラングインの「私」の想い・情熱からうまれ、コルビジェの「私」につく設計から誕生した『国立西洋美術館』は、何度でも足を運びたくなる素晴らしい美術館です。わたしは、小学5年生の時から47年間、数え切れないほど来館しましたが、訪れるたびにいつも嬉しくなります。西洋美術館はわたしの美術館です。
今回のフランク・ブラングィンの展覧会は、実に素晴らしいもので、はじめてみる油絵の大作には圧倒されました。その色彩とボリュームは、イギリスのドラクロワ!とさえ言いたくなるほどで、大変な力量の持ち主であることを知りました。彼は、若いころはウイリアム・モリスの工房で働いていたとのことですが、職人技に支えられた芸術がもつ普遍的な強さを改めて感じました。
船乗りの仕事をしたこともあったブラングィンは、造船所や労働者の姿も生き生きと描き、よい意味での現実性をもつ創作は、生活世界の強さと安定性をもち、最良のコモンセンスです。
食器や家具のデザインもみな楽しく親しみのある美しさで、ほんとうによい展覧会でした。はやく知っていれば、このブログで期間中にご紹介できたのに、残念です。
(いかにして西洋美術館がつくられたか、その数々のエピソードについては、『芸術新潮』の2009年2月号をご覧ください。実に面白い!)
武田康弘