以下は、武装勢力に拘束された経験をもつ高遠 菜穂子さんのメッセージです。
このような体験談に基づく見解を無視する政府や自民党議員の言動は、非現実的な想念により、日本を悲劇に陥れる公共悪というほかありません。
現代の戦争は「対テロ戦争」。もしそこに同盟国アメリカと行くなら、相手(敵)は正規軍ではなく「武装勢力」になりますよね。たとえば、イラク。(アメリカでは最近、イラクとシリアで勢力を拡大しているグループが第2の9.11をやるかもしれないという懸念の声もあるそうですし)
「武装勢力」と呼ばれる彼らのほとんどが肉親などを残虐に殺された遺族であり、武器を持つ動機は深い絶望の中で抱え続けた憎悪であることが大きいと言えます。正規軍のように「命令に従っただけです」とは言わないでしょう。残虐な行為に壊されたその心は想像を超える激しさがあります。戦闘でも米軍を追いつめるほどでした。
私はそんな「武装勢力」に拘束されました。彼らはまず私たちの国籍を確認しました。日本人であることを確認してから拉致したのです。「人道復興支援」として武装した自衛隊を送ったことに怒り狂っていたのです。
「なぜだ!? なぜ日本軍(アラビア語で自衛隊にあたる言葉がない)をイラクに送った?」「なぜアメリカの味方をする?!」
何度も怒号を浴びました。
「対テロ戦争」を続けた結果、アメリカはどうなったでしょう?
イラクはどうなったでしょう?
こんな「テロの世界」で集団的自衛権を行使する意味があるでしょうか?
若い命を失った分、世界は安全になったでしょうか?
「テロ」は減ったでしょうか?
「人道復興支援」で武装していっても標的になるのです。集団的自衛権を行使することになったら一体どんなことが起こりうるのでしょうか?
「平和の国ニッポン」というブランドイメージが私たちに安全をもたらしてくれていたのに、日本の「米国追随」のイメージは支援の現場でも深刻な問題をもたらしました。その後、何年もイラク支援のNGOは「日本からの支援」ということを表明できませんでした。表明すれば、現地スタッフが私たちの代わりに標的になってしまったからです。
あれから何年もかけて、必死に必死に働き、やっとやっとイラクの人々からの信頼を回復することができました。なのに、もう一度それを失うのでしょうか?
2014年6月30日 高遠 菜穂子
(なお、太字、赤字は、武田による)
集団的自衛権については、泥 憲和さん(元自衛官)の名演説をぜひご覧ください。
http://blog.goo.ne.jp/shirakabatakesen/e/40768d2be233f251b6ff75903613f0db