9日の月曜日、小学生クラスで4年生の晴花ちゃんが一人になった時間に、清瀬保二(きよせやすじ)さんのピアノ曲をかけました。
花岡千春さんによる『清瀬保二ピアノ独奏曲全集』からです。
漢字の練習をしながら、
晴花ちゃん:「誰の曲?」
わたし: 「清瀬保二という人だよ。」
晴花ちゃん:「生きてる?」
わたし: 「ううん、もうだいぶ前に亡くなったよ。」
晴花ちゃん:「わたし、この人に会いたかったな。」
「この人と握手してみたかった。」
「モーツァルトみたい。」
「これ、弾くの難しいよ。弾いている人たいへんだと思うよ。」
わたし: 「これが清瀬さんの写真だよ。」
晴花ちゃんは、黙って、にこやかに、興味深そうに眺めていました。
真っ直ぐで可愛らしい晴花ちゃんは、淡々と、でも、気持ちを込めて上記のように話したのです。
聞いていて、わたしは、鳥肌が立ちました。
素朴で優しく深みのある音楽・土着性を感じさせる日本的な旋律ーーー
ーーこの曲をつくった人と「握手してみたかった。」という感想を超えた言葉には、清瀬作品の本質をひとことで表現されたようで、電気が走りました。
旋律も和声もモーツァルトと似てはいませんが、簡明な響きは、確かに共通します。
音数の少ないシンプルな曲を聞いて、「この曲、弾くの難しいよ。」と言ったのにも驚かされました。プロのピアニストがどう弾いたらよいか、分からずに難儀するのが清瀬作品だからです。
西洋音楽の体系を、まるで受験勉強と同じように教育される音大生は、自分自身の心身の内側で深く音楽を捉えることが苦手ですので、「私」の内面から発する清瀬の独創を前にしてとまどうのです。
それを、「弾いている人、たいへんだと思うよ。」とさらりと一言。
う~ん、参った(笑)