ウヨロ川で自然産卵により生まれた稚魚は、どの程度帰って来ることができるのだろうか?
注目したい研究。
1.人工ふ化放流河川におけるサケ野生魚の割合推定(森田健太郎 高橋 悟,大熊一正,永沢 亨 独立行政法人 水産総合研究センター北海道区水産研究所)
要旨 サケ資源はほとんどが放流魚で維持されていると考えられているが,これまで野生魚(自然産卵由来)の寄与率は調べられていない。本研究では,耳石温度標識による大量放流が行われている北海道の8河川において,サケ野生魚の割合を推定した。ウライで捕獲されたサケに占める野生魚の割合は,調査河川全体で計算すると 28.3±1.2%,放流魚の全数が標識されている河川に限定すると 15.9±0.6% と推定された。野生魚の割合は河川や年級群によって大きく変動したが(0~50%),野生魚も十分に資源に貢献しうると考えられた。
2.網走川におけるサケ稚魚の降河移動(北海道立総合研究機構さけます・内水面水産試験場 北水試研報82,19-26(2012))によると、
孵化場からの放流魚について
●サケ稚魚では降海後の沿岸域での死亡率が高いことが知られている。
●5月中旬以降に0.8g以上のサイズで網走川に放流されるサケ稚魚では,放流後河川内に長く滞留せずに短期間のうちに降海する個体が多いことが示唆された。
●河川内で採捕された稚魚のサイズは放流時と同等あるいは小型の稚魚が多く,河川で稚魚が見られなくなる直前の旬にわずかに大型の稚魚が採捕された(Fig.4)。このことは,放流された稚魚のうち,大型の個体の多くは速やかに降海し,小型の個体の一部が河川にとどまり,成長した後に遅れて降海した可能性もある。
●河川を降河移動するサケ稚魚の成長は著しくないことが知られており(帰山,1986),網走川においても放流魚の瞬間成長率は低い群が多く,河川内ではそれほど成長することなく降海する個体の多いことが示唆された。
自然産卵の稚魚について
●天然産卵のサケでは,早期に浮上した少数の個体は産卵場所付近に長期間滞留するが,ほとんどの個体は浮上後短期間に降海移動するとされ,さらに,河川における滞留期間は稚魚の分布密度の影響を受けることが指摘されている(帰山,1986)
●サケ稚魚の放流時期の目安として,沿岸の水温が5℃を超える頃に開始し,13℃を超える頃までに沿岸で7cm,3g のサイズに成長できる時期が望ましいとされる(関,2005)。これが放流適期の目安となり,概ね沿岸水温が5℃を超える頃に放流が開始される。
●放流から2旬後の6月中旬には沿岸水温が13℃を超える年もあることから(Nagata et al.,2007),沿岸での生き残りの点からも6月以降も河川内に滞留することは不利と考えられる。
一方
3.漁獲安定へ 水産試験場研究(2011年08月26日 朝日)によると、
●秋サケの回遊数には、稚魚が川から海に出た時期の沿岸海域の環境などが大きく影響するとされる。同試験場の調査では、この時期に海水温が低すぎると、稚魚が十分に動き回ることができず、結果的に栄養分が取れずに死滅する割合が高くなる。
●同試験場は海水温は7~8度が適温とみており、沿岸の海水が適温前後になったらALC標識付きの稚魚を同町の敷生川に放流。しばらくして同町沖で回遊中の稚魚を捕獲、胃の内容物などを調べて健康度などをチェックしている。こうした定点観測場所を同町沖と伊達市沖の各沿岸部、中沖合、沖合の計9カ所に設定し、付近の水温や塩分濃度、透明度、プランクトン量などを調べている。
●「海水温が低いと活力がにぶった稚魚が沖に広がれないし、十分にえさを取れないようだ」と、2月の調査時に説明した。
ふ化場稚魚左と自然産卵稚魚右(2011/05/17北海道立総合研究機構 さけます・内水面水産試験場の調査を見学させていただいた時撮影)
今年5月下旬の海面水温
今年5月下旬の水深50mの海水温
ウヨロ川で自然産卵により生まれた稚魚は、どの程度帰って来ることができるのだろうか?
少し遅いかもしれませんが、白老産サクラマス(本ます)美味しかった。
サクラマス&トキシラズが食べごろ!(ようこそさっぽろ)