★さちゅりこん――渡邊史郎と縦塗横抹

世界が矛盾的自己同一的形成として、現在において過去と未来とが一となるという時、我々は反省的である。(西田幾多郎)

形式の帰還

2010-09-03 23:40:33 | 文学
私の大学院後半からの課題は、ひたすら、抽象的に見えるものを具体的な文脈に翻訳することだったと思う。大学院前半での形式化への反省によってそうなった。ただ、ややそれをやりすぎた結果、ただの経験的な問題しか論じられなくなってきていることも確かである。

時代とか、環境とか、引用とか、そんなところに還元していくやり方の底のない恐ろしさを知らないものは、多文化主義とかなにやらでひたすら突き進んで頂ければいいのだが、……退屈に思えてきた。もともと私が考えようとしていた問題をすこし想い出してみる必要がありそうだ。文学的な言い方になるが、過剰な情熱を持つ人間は観念的ではなく形式的である──この問題である。