自民党大勝など、出エジプトとか学級崩壊ぐらい自明の出来事であり、一方、希望とか思想というものは実現可能性とは全く関係なく語るものである。したり顔で現実を語る連中なぞ、もしかしたら思想的に成熟しているつもりなのであろうが、歴史的にはいてもいなくても同じようなもんである。なぜかといえば、いつも個人の判別が出来ないほど大量にいるからである。
ところで、山本太郎が本当に当選していたのは面白かった。テレビの選挙速報を見ててつい笑ってしまったよ。だいたい、彼は映画「光の雨」で連合赤軍のリーダーを裕木奈江さんと一緒に演じていて、彼女とともにすばらしい演技だったので、記憶していたのである。で、原発事故のあと本当に運動に乗り出し、結婚もし、議員になってしまうとは、完全に「勝ち組」である。彼のような人物は現実的には敗れ去る運命にあるといえようが、そんなことが全く希望や思想とは関係がないことは既に述べたとおりであるなあ。
自民党が憲法を改正したいのは、もはやそれ自体が目的というより積年の恨みを晴らすことつまり「勝つこと」であるような気がする。吉本隆明の「勝利だよ勝利だよ」という「沈黙の言葉」を思い出すのはわたくしだけではあるまいて。どうも私には、戦後、経済復興を果たし、知的にもまあまあ優秀だと言われた時期をもつに至った日本人が、最後の自己回復を図ろうとして、憲法に手をつけようとしている気がする。先生に怒られて生活がすさんでしまった生徒が、怒られた理由を閑却して、怒られる前の状態に戻ろうとしているようなものである。気持ちはまあわかるのである。しかし、そういう回復をしたがる生徒が優秀であった試しはない。だいたいプライドの回復に何年かけるつもりだ。そんな暇があったら勉強した方がいいのである。わたくしは全く同じことを中国にも言いたいのであるが、ルサンチマンを溜めてる状態にある方が病気の症状としてはかわいそうだ、……そういう意味でかわいそうなのは我が国の方なのではあるまいか。
万国の労働者よ、団結する前に我が国を助けたまえ。