……学生から勧められたので読んでみたのだが、考える材料として面白いものであった。授業でちょっと使ってみることにしよう。
イギリスEU離脱決定か?のニュースで、かなりいろいろなところに動揺が走っている。考えてみると、こういうニュースで市場が混乱してしまう経済システムはやはり問題なのではないかと思うが、専門外なのでさっぱり分からない。とはいえわたくしみたいな人間にとっても――、安倍政権、スコットランドの独立運動、ユニバーサル化、スマホを持った生意気匿名大衆の台頭(笑)、女子力、AKB48、必ず馬鹿がのし上がってしまう組織、まだまだ退場しない団塊おじさんたち、近代文学の終焉……これら様々なことが、アメリカやイギリスがいよいよただの国になるような気がしただけで、違って見えてきてしまうのは避けられない。
確かなのは、これまで根本的に思考していなかった部分があらわになるだけでなく、根本的に考えることを避けていた連中が、またもやうまいこと処世を考え始めるであろうということだ。さっそく、自分のポスコロ的論文の改訂作業に取りかかった学者たちもいるであろう。
しかしまだ考え直す余地が我々の頭に残っているならまだよいと思う。そういう人間が少しでも多ければ、悲劇の反復を減らせるかも知れない。最悪なのは、いままで「時代が変わった」と称して、少数派の弾圧にやっきになっていた連中であって、こういうのは「考え直すことのできる」人間とは言えない。大学でも、ユニバーサル化だか学生中心化だかしらんが、そういう妙なスローガンを使って、文革もどきの迫害が行われている。主導しているのは、もちろん学生ではなく、考え直すことの出来ない、学生の味方のつもりの元知識人である。彼らにとっては、まわりが知的に頑固で差別的な人間にみえるからやっかいである。彼らの考え直すというのは、貶められていた対義語に飛びつくことに過ぎないから、周囲が異様にゆっくり思考しているようにみえるのである。従って、自分の馬鹿さを自覚するのは非常に困難である。……たぶん、勇気がなくなると我々のような人間はみんなそんなところに落ち込んでしまうのだ。だから、乱世は恐ろしいのである。
付記)以前、内田樹が、フェミニストを批判している時に、「フェミニズムを終わらせなければならぬ」ではなく、「フェミニズムには終わった」という「事実認知的言明」によって、フェミニストは彼らの業界からずるがしこく去って行くのだとか、確か書いていた。私は、このことに当時懐疑的だったが、分かる部分もあった。周りにそういうタイプがたくさんいたからである。ただ、マルクス主義やフェミニズムは学問だからそういうことも起こるだろうが、「EUはもう終わってた」的なグローバルなごたごたは何が得になるのかさっぱり分からんという意味でもっとずるがしこい人間が要請されている、と若手の一部なんかは考えるだろう。いやになりますね……