今年はいろいろあってあまり読めなかったな……と思いつつあげてみることにしよう
1、源氏物語……紫の上が夢に出た。ぶつぶつなんか言ってた……
2、南総里見八犬伝……どうも、あまり作風にのれなかったな。わたくしにとってどうしても、儒教的な側面がひっかかるのだ。
3、千坂恭二『思想としてのファシズム』……一部で千坂氏は再評価が進んでいるのであるが、わたくしにとっては切れ味がよすぎるところがあるのだった。
4、エンレンスト・ユンガー『労働者』……ユンガーもまた、一部で再評価が進んだので、わたくしも再読してみたわけだが、――わたくしは昔『大理石の断崖の上で』の冒頭を読んだときなんだかいらいらしたことを思い出した。幸福な時代を思い出すときに我々は「むしゃくしゃした憂鬱の念」に捕らわれるというのだ。確かにそれはそうなんだろうと思いながら、ちょっと落ち着けと言いたい気がした。この『労働者』もなんだか、一歩だけ進めばいいところをジャンプしているようなところがあるような気がするのであった。
5、東浩紀『ゆるく考える』……東氏にとっても激動の一年であったが、この投げやりな「ゆるい」気分は、同い年の者としてよく分かる気がする。とはいえ、氏の場合は、結構はじめからそういう気分の人ではあったと思う。末尾に置かれた、「ゲンロンと祖父」――(みんながわりと褒める)も気分としてはよく分かるのだ。我々の世代にとって大きいのは、団塊世代の両親とともに、戦中派の祖父祖母の影響なのである。NHKでやっている「ファミリーヒストリー」というのも、我々のアイデンティティが、親というよりも、それ以前との関係の問題であることを直観している気がするのである。良くも悪くも、「永遠の0」の作者もそれを分かっている訳だ。
6、最果タヒ『夜空はいつでも最高密度の青色だ』……授業であつかったのでね……
7、安里健『詩的唯物論神髄』……楽しかった
8、都築響一『夜露死苦現代詩』……楽しかった2
9、デリダ『条件なき大学』……これ、なんとなく「コンディションなき大学」と言った方がいいような気がするのであるが、それはどうでもいいとして、デリダは「権力なしに」「防御なしに」という意を仄めかしたいんだと言う。デリダは大学は負けたらいいと思っているのである。確かに無条件降伏こそ必要なのだ。
10、細谷松太『ものがたり労働運動史』……細谷氏は民別などの結成に重要な役割を果たしたひとで、晩年は「労働運動史家」であった。それにしてもやっぱり鈴木文治というのはいろいろ言われている。ここでは「横へいな、官僚的な人間にしか見えなかった」と記されている。鎌倉から二等車で通い、つねに自動車を呼ばせるさま、――こんなことも書かれている。いまでもそういうことで恨みを買っている運動族は多いのであった。