九州から帰還して二週間以上たつとそろそろ記憶が曖昧になります。先日の佐賀での記憶と九州の味について即興でまとめ今回の締めくくりとします。もともと佐賀は食べ物に質素というか質素にさせられた土地柄で天領の唐津とは全く違うのではないかと思います。色々小難しい話はありますが、武雄中心に美味しいものを考えてみます。
とはいえ、今は無くなってしまったと思われる懐かしい味は。唐香(とうこう)です。この文字で良かったかどうか曖昧でありますが、醤油の搾り滓に紫蘇の実、胡麻などを混ぜて固めたものを農家の小母さんが町屋に売りに来ていました。これをぱらぱらと崩し、ご飯にかけて食べると美味しいこと、お茶漬けにしても味わいのあるものであった記憶があります。ちょうど石鹸ぐらいの大きさ、もう武雄には無いものでしょうね。と無い物ねだりです。 佐賀にはこのようなご飯の添え物が多いようです。たとえば塩辛い蟹漬けやあみ漬け、これだけでおかずなしでご飯が進みます。一説には鍋島藩では贅沢を許さなかったので一汁一菜で済ますことの出来るものが名物だとか。
話は変わりますが、宿泊したペンション・ピクニックで美味しかったのは若楠ポークのしゃぶしゃぶとソテーでした。いくらでも食べられるという馬鹿な気分になりました。これ以上デブになったら困るのですが、やっぱりデブになって帰りました。(汗)
武雄では忘れ去られかけていますが、有明海の海産物が昔からの武雄の味の一つでしょう。 まずはムツゴロウ、高橋の町には一畳ほどの生け簀にムツゴロウを入れてその場で蒲焼きにしてくれる魚屋がありました。次は正月の生牡蠣、これは美味かった。武雄ではセッカといった記憶があります。海のもので一番好きなものは海茸です。元はといえば貝の一種だと思いますが、普通は干し物です。スルメの味わいですが香りがいいと思います。一昨年武雄で生のバター炒めを食べましたがこれも良かった。あとはグロテスクなワラスボ、マテ貝などを懐かしく思います。
忘れ去られたものは鯨です。赤身鯨の刺身は日常のものでしたが、我が家のご馳走は祖母と母の実家の有田から買ってきた百尋(ひゃくひろ)でした。大根ほどの塊を薄くスライスするとまるでロースハムです。親父の酒の友でありました。白長須鯨の小腸をボイルしたもので有田の魚屋にいつもありました。今や浅草では高級品として鰯鯨のものなどが売られていますが、昔のものほど美味しく感じません。ノスタルジィなんでしょうか。今回は九州の地で鯨を食べることはありませんでした。
武雄は温泉です。東京で目にするのは温泉豆腐ですけど大抵は嬉野版です。嬉野の温泉が豆腐をよく溶かすと聞いています。武雄のお湯はいかがなものでしょうか?
有田では呉豆腐が名物のようですが、武雄では泡雪豆腐といいましたっけ?片栗で固めた豆腐でしょうか、お寺でいただく胡麻豆腐の味わいです。
このあと熊本へ回りました。やっぱり馬刺しを堪能しました。デパートで買っ てカミさんの実家でたらふく食べました。これ以外に買ったものは馬ロースカツ、ビーフカツ。これらがさりげなくデパートの食品売り場に並んでいます。油濃いことはなくあっさりとしていたのはやっぱり馬肉です。当然辛子蓮根もつまみとして頂戴した次第です。 そして東京へのお土産は、森の辛子蓮根とカリンゼリー?の古来のお菓子加勢以多(かせいた)でした。
加勢以多は昔から製造していた山城屋が倒産したので香梅が引き取って作っていました。昔のものより洗練されすぎかも知れません。
今回は博多、武雄、熊本と動き回りましたが、結局これはと云うものを食べたような気がしません。ラーメンも食べずじまいです。もう少し計画的に九州の食を回りたいものです。今回のテーマを選んでちょっと反省しています。(汗)