最近猫も杓子も3D、3Dという風潮のようですが、果たして立体映像が産業界を救えるのかは少々疑問があります。このブームは何度か起きたようで私の場合は十数年前に修理を通してクラシックカメラに引きずり込まれる原因となりました。 当時流行った本のタイトルで覚えているのは、かの赤瀬川源平さんの「二つ目の哲学」です。3Dによる脳内リゾート開発 と云う副題にぐっときました。 その他、立体で見る古い日本など数冊がまだ本棚に立っています。
そのまた前は、昭和30年代の立体映画ブーム、映画館で赤青の眼鏡をかけて小学校でまとまって鑑賞した記憶をお持ちの方も多いと思います。
更に以前は、戦後すぐ。この頃はアメリカで立体カメラを作っていたのです。後述する手元のカメラは二台ともメイドインUSAです。 大分県の宇佐ではありません。(苦笑) そしてその昔リンカーン時代の欧米の記録写真は3Dで撮られていました。今ならさしずめビデオで撮るという感覚だったとものの本で読んだことがあります。 日露戦争の記録写真にも3Dがありました。
これらの話は別として我が家にも最新鋭の3Dカメラがありました。(汗)オールプラスチック製の玩具カメラというものですが、ある程度の条件がそろうとよく撮れます。そして意外に飛び出します。
数年前の中古カメラ市で近代カメラの風貌と安さについぐらっとして買ったのですが、近距離に弱いのが玉に瑕です。レンズは固定焦点、中には鏡が入っているのでまあそれなりの画質です。ASA400プリントフィルムで写し、専用のビューワーで見ると誰でも立体写真を楽しめるという次第です。
内部はごらんのように35mmフィルムを仕切りで分離し左右の映像を一枚の写真に焼き付けます。これを普通のプリントで焼けば同じ映像が一枚の印画紙に現れるのです。
右上のオレンジ色のレバーで普通の写真を撮ることも出来る優れもの(?)です。もちろん単三電池式で巻き上げ露出も自動です。
とはいえこのカメラのあることをすっかり忘れておりました。たまには使って3Dという世の中の流れに取り残されないようにせねばと気を引き締めています。(苦笑) さらには、金属製3Dカメラである昭和22年製リアリストや複雑怪奇なTDC Vividなどが転がっていますが、最近とんと出番がありません。もう一度このブームの中で復活させるかどうか昔と違い障壁の増えた今では悩ましいところです。
ところで、最近の3D報道は、アバターなどの映画をメインにアミューズメント界で持ち上げられているようですが、これまでも実務の場ではずーっと使われていたのが3Dです。 交通事故現場などでは距離感を示すために二台のカメラが活躍したきたようですし、脳血管の透視画像でも写真を立体視するのが脳外科医としての必要条件とのことでした。 さらには10年ほど前の火星からの画像はその殆どがステレオ写真で送られていました。 これは大変楽しめました。私の脳内に火星の立体画像が浮かぶわけで勤務中に楽しんでいた記憶があります。(汗)
単なる遊びとしての3Dであれば、あと半年もすれば萎むことでしょうが、古くて新しい3Dを実務の場にもっと簡単に生かし、次の何のステップに持って行くのかが問われているようです。CPUやGPUチップの高性能化でこのブームに火が付いたようですが、どう捌いていけばいいのか凡人の私にはよく分かりません。 この先の展開を楽しみにしています。
一般人にとって立体写真は単なるお遊びと思ってしまいますが、このブームが来た底流には何があるのでしょうか。