三条大橋で、弥次さん喜多さんとの面会を果たした後、日を改めて、
東海道五十七次を辿るため、京阪京津線で追分駅にやって来た。
ここかから髭茶屋追分に出て南西に向けて歩く事になるが、その前に立
寄りたい場所がある。
嘗て東海道の髭茶屋追分と大谷の中間辺りの逢坂山には「走井茶屋」
が有った。ここには走り井という、清涼で冷気凛々とした名水が湧き、
訪れる旅人の喉の渇きを癒やしていた。又近江の米をこの水で搗き上げ
餡を包み込んだ、ほとばしる水滴を現わした名物「走井餅」で持てなし
ていた。明治に入ると、茶屋とこの餅は、この地から姿を消した。
前回歩いた折には気付けなかったが、この大津の名物がここから程近
い横木に有る、京名物・八橋で有名な「井筒八ツ橋本舗・追分店」で売ら
れている事を知った。
平成6(1994)年、平安建都1200年を記念して、業界初の生産ライン
が見学できる工場として作られた店舗があり中にコーナーが設けてある。
店に立ち寄ると、直ぐに店員さんが茶と菓子を供してくれる。「走井餅」
のばら売りはないかと尋ねると箱入りだけだという。これから歩くのにお
土産を持って歩くのも煩わしいので、一番小さいのを一つ頂いた。
この「走井餅」は、「石清水八幡宮」門前の「やわた走井餅老舗」でも、
6代井口市郎右衛門の四男嘉四郎から伝承の名物として売られている。
一方ここ「井筒」のものは、走井市郎右衛門の末裔である片岡家に伝承
された「走り井餅本家」の物で、「走り井餅」と称している。
どう言う経緯で店が分かれたかは知らない。
方や「走井餅」、一方は「走り井餅」の一文字違いだが同じものだ。
経緯はともあれ、こうして昔からの名物が引き継がれ、ゆかりの地で売
られていることは甘党には結構なことだと思う。
どちらも店舗で頂いたが、「いずれも美味しゅうおます」。(続)
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