東京展の記事を拝見していて、もう生涯に目にすることもない海の彼方に渡った至宝であってみれば、ぜひ見に行かねばと思っていました。
虫ならぬ身でも、今日、啓蟄ともなれば、寒さに籠りがちで延び延びになっていた特別展へと重い腰をあげました。同行はKさんです。夫はどうせ人が多いなかを、時間をかけるのだろうから遠慮するというので、気心の知れた少し年下の女友達を誘っての念願の太宰府行きです。
予想通り、九国博は、駐車待ちで25分の行列でした。苛立ちの気分を転換してからと、まずは梅が満開の天満宮に参詣して、梅林を散策し、梅の木の下で昼食。どの茶店も人で込み合っていました。
満開の天満宮の梅
トンネルを抜けて博物館に引き返した会場は、行列こそないものの、かなり混み合っているようなので、先に4階の「江戸の粋 印籠展」を見学しました。こちらは宣伝されていないので、人も少なくじっくりと見学できました。
今年1月に、小倉城庭園で見た「印籠と煙草入れ」展とは規模の違う逸品ぞろいで、高円宮両殿下コレクションの根付けも14点が特別出陳されていました。
今回の印籠展は、我が国初公開で、フィンランド・クレスコレクションです。印籠のコレクターとして、また研究者として世界的に有名なクレス夫妻の30年にわたるコレクションの中から124点が選ばれての里帰りです。画像のほかにも、牡丹蝶蒔絵印篭の宝石を思わせるブルーの鮮やかさや、葦舟蒔絵螺鈿のデザインなども印象に残っています。展示の工夫が素晴らしく、宙に吊るしたり、鏡を使っての立体的な見せ方など、ユニークなものでした。
私が印籠に強い興味を持ったのは歴史も浅く、2010年京都国立博物館に、長谷川等伯展を見にいった折、相国寺の承天閣美術館で見た柴田是眞の漆の作品群を目にしたのがきっかけです。印籠や根付といった男性装身具の小さな工芸品に籠められたモダンで、粋なデザインに、その精巧な細工の見事さに開眼させられて以来、こうした展示があるごとになるべく出かけています。
目当てのボストンでの時間を考えて、名残を惜しみつつ会場を後にしました。
江戸の粋 印篭展