雀の手箱

折々の記録と墨彩画

馬酔木

2015年03月17日 | 日々好日
 昔、女学校の教科書で「瑠璃光寺の春」という堀辰雄の随筆を読んで、この寺の参道に植えられた馬酔木に強く惹かれていました。まだ見たこともない花木の愛らしさと、九品仏に憧れを持っていました。

 初めてこの花を見たのは終戦から四年たった春、奈良東大寺の大仏殿の前の池の畔でした。
 以来、馬酔木は奈良の春をいろどる木と私は勝手に決めていました。

 父が亡くなって管理が出来なくなった池を埋めて、大きくなりすぎた庭の木も何本か撤去し、門の内側に私の車の車庫を作るために改造するとき、庭師に希望の木があったらと言われ、躊躇わずに馬酔木を一番に挙げました。

 もうそれから30年、毎年春にはやさしい微笑みの「顔施」を受けています。ただ、持ち込まれた馬酔木は奈良の馬酔木とは違って園芸種のうっすらとピンクの華やいだ色がついていましたから、万葉集に詠まれている白い花数も少なめの地味な奈良の馬酔木を探してもう一本植えています。
 毎年の画題にも登場してくれています。









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