らーめん 海老蔵@八幡市男山松里12-10

2002年9月に新規オープン。ちょっとした高級割烹料理店か小料理店と間違ってしまいそうな店構えでいかにも高そうなお店だ。お店の裏側にキャパ3台の駐車場あり。


ラーメンのメニューは、海老蔵らーめん\1.000・海老蔵らーめん上品盛(麺七分目)\800・海老蔵ちゃーしゅーめん\1.200・金華ハムらーめん\2.000。他、えびちゃーはん、海鮮あんかけちゃーはんを主力メニューとし、その他高級中国料理的サイドメニューもあって、全体的にはやはりかなり高級指向のお店。(メニューには鮒ずしなんかもある)だからといって1000円のラーメンだけなら歓迎されないかというと、全然そんなことはない。
セコい私は「海老蔵らーめん上品盛(麺七分目)\800」を注文した。カウンター越しに自家製麺の製造機が置いてある厨房は京都で初めて見た。ラーメン鉢にスープが張られ、麺と具が盛られ、ネギ投入の後から熱した油がふり注がれる。その時、かすかに「ジュっ!!」とネギ達が軽く鉢の上で揚げられて香ばしさを漂わせる。その控えめながらマニアックな演出に期待感が高まる。
いよいよ運ばれてくる。食べる前に思わず居住まいを正そうとしている自分に気付き、心の中で苦笑いする。

ところが、ひと口めのスープの味は、何だかかき揚げうどんの味みたく感じた。カツオだしに油、この組み合わせがかき揚げうどんを連想させるのだろうか。それが何の油かは特定できなかった。丁寧にとられた鶏の出汁と魚系をあわせたものだと推察するが、率直なところ、ラーメンである以上はもう少し動物性の風味がきいたスープの方が良いと思う。好みの問題なのかもしれないが、うどん・そばのツユとの明確な差を求めたくなる。
麺について。かん水は多分入っていないか、あるいは途方もなく微量だろう。極細でありながら、歯ごたえ、シコシコ感、嚙みごたえ、小麦の風味を楽しめるすばらしい麺だ。



チャーシューは肩ロース肉を生の状態でタレに数日間冷蔵庫にて漬け込んだ後、オーブンで焼くという製法によるもの。程よい弾力感があって、タレと肉の味がうまく馴染んでとてもおいしい。その他の具にはヒメタケノコ、ネギ+刻んだ香味野菜(ネギに混じって追加されている葉菜がスープの中で脇役的な香りを添えていて、それがまた良い)+チャナダルというインド原産の豆、「ひよこ豆」とも呼ぶらしい。さらには日替わりで空芯菜とツルムラサキが日によって入れ替わるという。私が行った日は空芯菜の日だった。
このお店、普通のラーメン屋さんとはちょっと違うかもしれない。ともすればちょっと高級なうどん、そばの親戚のようにとらえられてしまうかもしれないが、とことん材料にこだわり、自家製麺の持ち味を生かしたラーメンを追求したらこうなったということなのだろう。普通の感覚に一杯千円は確かに高すぎるが、その味を楽しみに行くに充分な値打ちはあると思った。大ざっぱに評すれば、若干うどんみたいな感じはあるが、それでも実に手の込んだ、繊細な仕事がうかがえるのが海老蔵ラーメンだ。私はそのうちまた食べに行こうと思う。やはりお店の味は変わり行くものだろうし、何より新しい味わいの開拓に意欲的なお店の姿勢には敬意を表したい。(2002.10)
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11:30~14:30には500円(→2003年2月、780円に価格改定した模様)でラーメン、チャーハン、餃子のセットをサービスメニューとして始めた。カウンター席に座ると大将は私を覚えてくれていた。サービスメニューを注文しようとすると、「海老蔵らーめんとは別物ですよ」と暗にサービスメニューをお薦めにならなかったので、それならば、と海老蔵らーめんを注文した。この「大将が薦めなかった」サービスメニュー、それ自体もはや海老蔵らしからぬ感がある。サービスメニューの方は従来の高級ラーメンとは完全に別物で、麺もスープもチャーシューもすべて違う食材で作ったもので、原価も極端に低いのだそうだ。同行した職場同僚はこのサービスメニューを注文。「これで500円なら良いんでないかい?」と言っていたが、やはり安物感は感じると言うコメントだった。
で、「以前と比べてかなりパワーアップしましたよ」とおっしゃる海老蔵らーめんだが、食べてみて、具体的に大きく変わったことが分からない。以前は日替わりだった空芯菜とツルムラサキは、空芯菜のシーズン限定らしく、いまはツルムラサキのみにしているそうだ。(と言っても、ツルムラサキというものをこれがツルムラサキだと意識して食したのもこの日が初めてだった)。大将とはカウンターをはさんでポツリポツリと言葉を交わしながらいただいたので、食べたあと、何もコメントしない、というわけには成り行き上、行かなくなってしまった。そこでちょっと困ってしまったのだが、相手は食のプロ。どのみち私のオベンチャラなどすぐに見抜くだろうから、失礼承知で「私にはどこがどう変わったたのか、わからないです」と忌憚なく申し上げ、自分が好みとする「旨いラーメン観」とは違うものだと申し上げた。
大将によれば、オーガニック、無化調の食材と言うことにこだわり抜いて作っているのだが、それをわかってリピートするお客は1000人中3人くらいです。ということだった。ラーメン自体としては結構美味しいし、この味の対価が1000円であることに不満があるわけではない。しかし、「パワーアップした」ということを食べて見抜くことは出来なかった。
大将は、10年先にはきっとこういうタイプのラーメンの時代が来ると信じて海老蔵らーめんをはじめとする高級食材ラーメンを作っているとのことだ。500円のサービスメニューはその資金調達の手段としてはじめたもので、「『海老蔵は商売に走った』とはよく言われますね」と仰っていた。だけどわかってくれる人はわかってくれるという。自信を持って将来のトレンドを見ているようだ。
その時代時代の大衆には受け入れられず、時間が経ってからその良さが評価される例はピカソの絵、ストラビンスキーの音楽のようによくあるハナシ。海老蔵らーめんもそうなのかなぁ?
積極的に摂取しようとしているわけではないにせよ、日頃知らぬ間に化学調味料やその他の合成添加物を摂取しながら平気で生きている私はそう思った。どうやら私は「1000人中の3人」にはなれないようだが、そのこと自体は仕方がないことだ
今、売れるラーメンを作るのではなく、作り手としての胸を張って客に提供できる理想のラーメンと、次の時代に求められる味を本気で模索しているようだ。
(2002.12)

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