ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ジョニー・グリフィンズ・スタジオ・ジャズ・パーティ

2024-11-20 18:56:51 | ジャズ(ハードバップ)

本日はジョニー・グリフィンの少し変わった作品をご紹介します。名付けて「ジョニー・グリフィンズ・スタジオ・ジャズ・パーティ」。ニューヨークのスタジオに知り合いを招き、MCを入れたパーティ形式で演奏したものです。スタジオ録音なのかライブ録音なのかどっちやねん!とツッコみたくなりますが、この頃(1960年)のグリフィンは以前「ザ・ケリー・ダンサーズ」で書いたように少し変わった試みを色々していたようなので、その一環でしょうか?

メンバーはデイヴ・バーンズ(トランペット)、ノーマン・シモンズ(ピアノ)、ヴィクター・スプロールズ(ベース)、ベン・ライリー(ドラム)と言った顔ぶれ。グリフィンのリヴァーサイド作品の中では比較的地味なメンツですが、デイヴ・バーンズはビバップ期から活躍する隠れた実力者ですし、ノーマン・シモンズもシカゴ時代からのグリフィンの旧知で、「ザ・リトル・ジャイアント」や「ビッグ・ソウル・バンド」にも楽曲を提供しています。MCを務めるのはバブス・ゴンザレス。ジャズシンガー兼作曲家、さらにジャズクラブのオーナーを務めるなどマルチな活躍をする人物だったようで、彼のおしゃべりもたっぷり収録されていますが、残念ながら何を言っているのかよくわかりません・・・

全6曲。ただし、1曲目"Party Time"はバブス・ゴンザレスのおしゃべりなのでスキップしましょう。続くタッド・ダメロンの名曲”Good Bait"が実質的なオープニングです。ジョン・コルトレーン「ソウルトレイン」の名演でも知られるこの曲ですが、グリフィンはよりソウルフルに迫ります。デイヴ・バーンズとノーマン・シモンズも好調なプレイぶり。歓声や拍手も入って演奏を盛り上げます。3曲目は定番スタンダード”There Will Never Be Another You"をバーンズ→シモンズ→グリフィンのソロ順でドライブ感たっぷりに料理します。

4曲目”Toe-Tappin'"はデイヴ・バーンズのオリジナル。実にファンキーな曲でバーンズのパワフルなソロの後、シモンズを挟んでグリフィンが怒涛のテナーソロを披露します。聴衆も興奮していますね。5曲目は一転して大人の哀愁漂うバラード”You've Changed"。バーンズとグリフィンがダンディズム溢れるバラードプレイで魅了してくれます。6曲目”Low Gravy"はバブス・ゴンザレス作となっていますが、どこかで聞いたことある曲。グリフィンも参加した「ブルース・フォー・ドラキュラ」によく似たマイナー調のファンキーチューンです。以上、グリフィンはもちろんのことデイヴ・バーンズ、ノーマン・シモンズの隠れた実力も知ることのできる1枚です。

 

 

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リロイ・ヴィネガー/リロイ・ウォークス

2024-11-19 19:47:58 | ジャズ(ハードバップ)

ウェストコーストジャズと言えば白人中心のジャズと言うのが一般的な認識かと思います。確かにパッと思い浮かぶのはアート・ペッパー、チェット・ベイカー、バド・シャンク、ショーティ・ロジャース、バーニー・ケッセルら白人ばかりですが、彼らを陰で支える黒人ジャズマンが多くいたことも忘れてはいけません。特にリズムセクションには黒人が多く、ピアノのカール・パーキンス、ドラムのローレンス・マラブル、フランク・バトラー、ベースのカーティス・カウンス、ベン・タッカー、ジミー・ボンド、そして今日ご紹介するリロイ・ヴィネガーがウェストコーストジャズの屋台骨を支えていました。

ヴィネガーはもともとインディアナ出身ですが、50年代に西海岸に移住し、ウォーキングベースの名手として多くのジャズ名盤に名を連ねています。代表的なものだけでもスタン・ゲッツ「ウェスト・コースト・ジャズ」、コンテ・カンドリ「ウェスト・コースト・ウェイラーズ」、デクスター・ゴードン「ダディ・プレイズ・ザ・ホーン」、アート・ペッパー「ザ・リターン・オヴ・アート・ペッパー」、シェリー・マン「マイ・フェア・レディ」、ベニー・カーター「ジャズ・ジャイアント」、ソニー・ロリンズ「コンテンポラリー・リーダーズ」等で、他にもまだまだあります。

本作はそんなヴィネガーのリーダー作として1957年にコンテンポラリー・レコードに吹き込まれた1枚です。2管編成にヴァイブを足したセクステットで、ジェラルド・ウィルソン(トランペット)、テディ・エドワーズ(テナー)、ヴィクター・フェルドマン(ヴァイブ)、カール・パーキンス(ピアノ)、ヴィネガー、トニー・バズリー(ドラム)と言うラインナップです。ヴィクター・フェルドマンのみ英国出身の白人ですが、他は全員ウェストコーストで活躍していた黒人で、特にハロルド・ランドと西海岸黒人テナーの双璧を成すテディ・エドワーズの参加が目を引きますね。ジェラルド・ウィルソンは後年アレンジャーとして大成し、パシフィック・ジャズに何枚もビッグバンド作品を残していますが、本盤はトランペッターとしての参加です。

全7曲、ウォーキングベースの名手ヴィネガーにあやかって、全てwalkにちなんだ曲が選ばれています。1曲目"Walk On"はヴィネガーのオリジナル曲で、ズンズンとリズムを刻むヴィネガーのベースをバックに、エドワーズのソウルフルなテナー、フェルドマンのクールなヴァイブ→ウィルソンのミュートトランペット→パーキンスのピアノソロとリレーして行きます。続く”Would You Like To Take A Walk?"は一転してハリー・ウォーレン作のバラード。トランペットとテナーは抜きで、フェルドマンのヴァイブとパーキンスのピアノで美しいメロディを紡いで行きます。3曲目"On The Sunny Side Of The Street"は厳密に言うと曲名にwalkは入っていませんが、streetなのでOKということでしょうか?お馴染みのスタンダードを快適なミディアムチューンに仕上げています。

後半(レコードのB面)はマイルスの名演で有名な"Walkin'"、ミディアム調のスタンダード”Walkin' My Baby Back Home"、ダイナ・ショアやナンシー・ウィルソンの名唱で知られるバラード"I'll Walk Alone"と続き、最後はスインギーな名曲"Walkin' By The River"を快調に演奏して締めくくります。

共演陣では何と言ってもテディ・エドワーズのソウルフルなテナーが素晴らしいですね。この人は西海岸を拠点にしていたため過小評価されていますが、同世代のジョニー・グリフィンに負けない実力の持ち主と思います。一方、ジェラルド・ウィルソンはマイルスを意識したのか全てミュートトランペットを吹いていますが、こちらは正直イマイチ。アレンジャーに転身したのは正解かもしれません。その他ではカール・パーキンスはいつもながら安定の仕事ぶりですし、ヴィクター・フェルドマンのヴァイブも良いアクセントになっています。リーダーのヴィネガーは"I'll Walk Alone"で多めにソロを取るぐらいで、それ以外ではことさら自分の技を見せつけるでもなくいつもと同じように堅実にリズムを刻んでいます。

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ジョニー・グリフィン/ザ・コングリゲーション

2024-11-09 21:19:16 | ジャズ(ハードバップ)

ジョニー・グリフィンについては本ブログでもたびたび取り上げてきました。シカゴNo.1テナーの看板を引っ提げて1956年にニューヨークにやって来たぐグリフィンはまずブルーノートと契約、「イントロデューシング・ジョニー・グリフィン」で実力のほどを見せつけます。翌年4月にはジョン・コルトレーン、ハンク・モブレー、リー・モーガンを加えた超豪華な4管編成による「ア・ブローイング・セッション」を吹き込み、その半年後の10月に録音したのが今日ご紹介する「ザ・コングリゲーション」です。本作を最後にグリフィンはリヴァーサイドに移籍。同レーベルの看板スターとして「ジョニー・グリフィン・セクステット」「ウェイ・アウト!」「ザ・ケリー・ダンサーズ」等の傑作を残します。

ワンホーン・カルテットでリズムセクションはソニー・クラーク(ピアノ)、ポール・チェンバース(ベース)、ケニー・デニス(ドラム)と言う布陣。ブルーノートの看板ピアニストであるクラークの参加も作品の価値を高めています。なお、ブルーノートには珍しいイラストのジャケットを手がけたのはあのアンディ・ウォーホルだそうです。私は彼のマリリン・モンローに代表される一連の”ポップ・アート”は正直何が良いのかよくわからないのですが、このイラストはセンスがあって好きです。なお、ウォーホルは他にケニー・バレルの名盤「ブルー・ライツ」も出がけてますね。

全5曲。アルバムはグリフィン自作のタイトルトラック”The Congregation"で幕を開けます。congregationとは教会での集会を意味する言葉で、曲調もゴスペルを思わせる陽気な曲で、思わず手拍子したくなるノリの良さです。雰囲気的にはホレス・シルヴァーの”The Preacher”に似ているかもしれません。2曲目は本作のハイライトである名曲”Latin Quarter”。グリフィンのシカゴ時代の盟友であるジョン・ジェンキンスがスタンダード曲の”Tangerine”を下敷きにラテンフレイヴァーを加えたオリジナルで、ジェンキンスもグリフィンも参加したウィルバー・ウェア「ザ・シカゴ・サウンド」に収録されていました。パワフルでいながら歌心も失わないグリフィンのテナーに、魅力的なフレーズを次々と繰り出すクラーク、チェンバースのピチカートソロを挟んで再びグリフィンが熱くブロウします。個人的にはこの曲を聴くだけでもアルバムを買う価値があると思います。

3曲目はスタンダードの”I'm Glad There Is You”。通常はバラードで演奏される曲ですが、ここではミディアムテンポで料理されています。4曲目は再びグリフィンのオリジナル”Main Spring”で、こちらはソウルフルな曲。ラストは定番スタンダードの”It’s You Or No One"で、こちらはドライブ感たっぷりの演奏。グリフィンのエネルギッシュなテナーはもちろんのこと、クラークの躍動感あるピアノソロが最高ですね。50年代後半のグリフィンはまさに絶好調で、この頃の彼のリーダー作にハズレなしをあらためて実感させてくれます。

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ケニー・ドーハム/ジャズ・コンテンポラリー

2024-11-05 21:19:15 | ジャズ(ハードバップ)

本日は久々にケニー・ドーハムをご紹介します。ドーハムと言えばブルーノートやリヴァーサイドに多くの作品を残していますが、タイム・レコードと言うマイナーレーベルにも2枚の作品を残しており、コアなジャズファンの間では人気です。そのうち1枚はジェローム・カーンのミュージカル曲を集めた「ショウボート」でジミー・ヒースやケニー・ドリューの参加もあり、非常にオーソドックスで聴きやすい作品です。もう1作が今日ご紹介する「ジャズ・コンテンポラリー」です。

メンバーはチャールズ・デイヴィス(バリトン)、スティーヴ・キューン(ピアノ)、バディ・エンロウ(ドラム)。ベースは曲によってジミー・ギャリソンとブッチ・ウォーレンが交代で担当しています。何と言っても注目すべきはスティーヴ・キューンですよね。ハーヴァード大卒のインテリ白人ピアニストで、70年代にソロで大活躍する彼の最も初期の演奏が収められています。本作録音が1960年6月ですので、まだ22歳になったばかりです。実はこの頃キューンはジョン・コルトレーン・カルテットにも短期間在籍していたそうです。その後マッコイ・タイナーが起用され、キューン入りカルテットの演奏はレコードに残っていませんが、新進気鋭の若手ピアニストとして注目を集めていた存在だということがわかります。

さて、新世代のキューンを起用し、タイトルも”現代のジャズ”と銘打った作品ですが、内容は意外と普通です。確かに前年に発表した典型的なハードバップ作品「静かなるケニー」や「ブルー・スプリング」と比べると、かなりフレッシュな感じはしますが、キューンのピアノもまだそこまでトンがっていませんし、何よりドーハムがいつもと同じように暖かみのあるトランペットを響かせています。ドーハムが相棒に起用したチャールズ・デイヴィスのバリトンも良いですね。ちょっとペッパー・アダムスを思わせる感じです。

アルバムはドーハムのオリジナル曲"A Waltz"で始まります。曲名通りワルツ調の曲で、ドーハムも参加したマックス・ローチ「ジャズ・イン・3/4タイム」の”The Most Beautiful Girl In The World"に似ています。2曲目のセロニアス・モンク”Monk's Mood"は一風変わった曲が多いモンク・ナンバーの中では珍しくクセのないバラードで、ドーハム→デイヴィス→キューンと叙情的なソロをリリーします。3曲目はデイヴ・ブルーベックの”In Your Own Sweet Way"。マイルスの演奏が有名ですが、ミディアムテンポでまとめたドーハムのバージョンも悪くないです。

4曲目”Horn Salute"と続く”Tonica"はどちらもポストバップ的な空気を感じさせるドーハムのオリジナル。特に前者がドーハムらしいマイナーキーの佳曲で、キューンの清新なプレイも大きくフィーチャーされます。後者はバラードで3分弱の小品です。ラストの”This Love Of Mine"は、フランク・シナトラがトミー・ドーシー楽団在籍時に作詞を手掛け、その後も持ち曲として歌ったポップナンバー。ドーハムの歌心溢れるトランペットはさすがですが、キューンも意外とメロディアスなソロを聴かせます。

 

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ジョニー・グリフィン/ザ・ケリー・ダンサーズ

2024-10-31 21:40:10 | ジャズ(ハードバップ)

1958年にブルーノートからリヴァーサイドに移籍したジョニー・グリフィンは「ジョニー・グリフィン・セクステット」「ウェイ・アウト」「リトル・ジャイアント」とストレートアヘッドなハードバップ作品を次々と発表し、ジャズテナーのスターとしての地位を確立します。ただ、その後はエディ・ロックジョー・デイヴィスとのツインテナー”グリフ&ロック”として活動する一方、ソロ名義では少し変わった作風にチャレンジするようになります。

1961年の「チェンジ・オヴ・ぺイス」はフレンチホルンとベース2本でなおかつピアノレスと言う異色の編成。続く「ホワイト・ガーデニア」は亡きビリー・ホリデイに捧げたストリングス入りの作品です。ただ、正直言ってそれらの試みは成功しているとは言い難く、私的には上記2作は失敗作と言っても良いと思います。今日ご紹介する「ザ・ケリー・ダンサーズ」は「ホワイト・ガーデニア」の次に発表された作品で、ここでもグリフィンはアイルランドや英国のトラディショナルソングを大々的に取り上げており、試み自体はとてもユニークです。ただ、編成自体はシンプルなワンホーン・カルテットと言うこともあり、意外と普通に聴けるジャズに仕上がっています。なお、リズムセクションはバリー・ハリス(ピアノ)、ロン・カーター(ベース)、ベン・ライリー(ドラム)と言う顔ぶれです。

全8曲、うち前半(レコードのA面)4曲は全てトラディショナルソングです。タイトルトラックの"The Kerry Dancers"はアイルランド、2曲目"Black Is The Color Of My True Love's Hair"はスコットランド、3曲目"Green Grow The Rushes"はイングランドの民謡です。youtubeで原曲を検索するとジュディ・コリンズやケルティック・ウーマンが歌ったバージョンが出てくるので、聴き比べてみると面白いと思います。グリフィンはバリー・ハリス・トリオをバックに気持ちよくブロウしており、どの曲も快適なミディアムチューンに仕上がっています。4曲目"The Londonderry Air”は"Danny Boy"の名前で日本人にもすっかりお馴染みのアイルランド民謡。この曲はビル・エヴァンスも「エンパシー」で取り上げていましたが、ここでも美しいバラードに仕上がっています。

後半は民謡縛りから外れ、サラ・キャシーと言う人のオリジナル曲が2曲(”25½ Daze""Ballad For Monsieur")あります。この人のことは良く知りませんでしたが、デトロイト出身の黒人の女性ピアニストだそうです。前者はシンプルなリフのブルース、後者はタイトル通りバラードですがちと地味か?グリフィン唯一のオリジナル曲"Oh, Now I See"もバラードでこちらの方が良いですね。グリフィンのダンディズム香るバラードプレイがシブいです。残る1曲は”Hush-A-Bye"で、サミー・フェインが書いた映画音楽です。hush-a-byeは英語で♪ねんねんころり、という意味があるようですが、グリフィンのバージョンは寝た子も目が覚めるような力強いプレイで、グリフィンのソウルフルなテナーが素晴らしいです。

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