ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

モダン・ジャズ・カルテット/フォンテッサ

2024-04-03 21:28:06 | ジャズ(その他)

モダン・ジャズ・カルテット(MJQ)については過去に「淋しい女」「シェリフ」を取り上げましたが、いずれも60年代以降の作品で、彼らの作品の中ではやや異色とも呼べる内容です。MJQの王道といえばジョン・ルイスの作り出す室内楽風の典雅なサウンドで、本作「フォンテッサ」はその代表作に挙げられます。録音年月日は1956年1月22日と2月14日。前年までプレスティッジに所属し、「ジャンゴ」や「コンコルド」を発表した彼らがアトランティック・レコードに移籍した第1弾にあたります。メンバーは今さら言うまでもないですが一応挙げておくと、ミルト・ジャクソン(ヴァイブ)、ジョン・ルイス(ピアノ)、パーシー・ヒース(ベース)、コニー・ケイ(ドラム)です。

全7曲。うち1曲目”Versailles”と3曲目”Fontessa”がジョン・ルイスの作曲です。前者はクラシックの対位法を導入して作曲したと解説書に書かれていますが、難しくてよくわかりません。リズミカルで華やかな楽曲です。後者は4部構成から成る11分にも及ぶ組曲で、いかにもジョン・ルイスらしい室内楽的作品です。解説書では絶賛されていますが、正直あまり私の好みではありません。個人的にはミルト・ジャクソン自作の”Bluesology”やディジー・ガレスピーの"Woody 'n' You"のようなバップ・ナンバーの方が好きです。こういった曲ではミルトのソウル・フィーリングが抑えようもなく溢れ出て来るのがわかります。普段は抑え気味のジョン・ルイスのピアノもパピッシュです。残り3曲は歌モノスタンダードで"Angel Eyes""Over The Rainbow""Willow Weep For Me"といった定番曲を演奏します。中では"Angel Eyes"がブルージーなミルトのヴァイブとMJQ的典雅さが融合した好演です。

 

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チャーリー・パーカー・10th・メモリアル・コンサート

2020-12-19 07:22:31 | ジャズ(その他)

本日はちょっと変わったところで、チャーリー・パーカーの没後10年の1965年にニューヨークのカーネギーホールで行われた記念コンサートの模様を収めたオムニバス形式のCDをご紹介します。発売元はマーキュリーの傍系レーベルであるライムライト・レコード。リーダーは特におらず計14人ものジャズマンが入れ代わり立ち代わり演奏する形式です。メンバーの中にはディジー・ガレスピー、トミー・ポッター、ロイ・ヘインズ等パーカーと多くの演奏をともにした盟友と呼べる人達もいますが、一方でスイング世代の大御所であるコールマン・ホーキンスやロイ・エルドリッジ、パーカーと同世代ながらクール派でスタイルの異なるリー・コニッツ、当時まだ21歳だったポストバップ世代のケニー・バロン、さらにはスキャットの名人デイヴ・ランバートとパーカーとあまり縁のなさそうなジャズマンも多く、良く言えばバラエティ豊か、悪く言えば良く分からない人選の寄せ集めセッションです。1965年当時ならパーカー直系とも言えるハードバップ世代の俊英達がたくさんいたと思うのですが、あえて外したのか、意図せずたまたまなのか・・・演奏や録音の質もバッチリとは言い難いですが、個人的にはいろんなメンバーの演奏が聴けて楽しい1枚ではあります。

曲は全9曲。うち前半4曲はディジー・ガレスピー率いるクインテットによる演奏です。メンバーはガレスピー(トランペット)、ジェイムズ・ムーディ(テナー)、ケニー・バロン(ピアノ)、クリス・ホワイト(ベース)、ルディ・コリンズ(ドラム)です。1曲目”Um-Hmm!(Ode To Yard)”はパーカーに捧げたケニー・バロンの自作曲でなかなかの佳曲です。ただ、2曲目以降は”Groovin' High””Blues From Gillespiana””A Night In Tunisia”とどれもガレスピー自身の持ち曲で、あまりパーカーとは関係ありません。コンサートの趣旨からするとどうなの?とも思いますが、演奏自体は良くまとまっています。ガレスピーのトランペットもまだまだ健在ですし、陰の実力者ムーディ、当時まだ21歳だったバロンも熱のこもった演奏を聴かせてくれます。

後半はメンバーが流動的で、5曲目はパーカーの代表曲”Now's The Time”をホーキンス(テナー)、エルドリッジ(トランペット)、J・J・ジョンソン(トロンボーン)、ビリー・テイラー(ピアノ)、トミー・ポッター(ベース)、ロイ・ヘインズ(ドラム)のセクステットで演奏します。全体的に年齢層高めで特にホーキンスとエルドリッジの演奏が聴いていてちょっとしんどいかも。続く”Donna Lee”と”Cherokee”は上記のリズムセクションをバックにデイヴ・ランバートがスキャットを披露します。♪ドゥビドゥバドゥビ~とおそらくパーカーのソロを声で模しているのでしょうか?なかなかユニークな企画です。8曲目”Blues For Bird”はなんとリー・コニッツ(アルト)の無伴奏ソロによる即興演奏。コニッツとパーカーは同じアルト奏者とは言え、片や白人クール派、片や黒人バップ派とあまり共通点はなさそうですが、生前は交流があったのでしょうかね?演奏はまあコニッツ好きにはたまらないのかもしれませんが、私はイマイチです。(そもそも誰の演奏であれ無伴奏ソロってのはあまり好きでない)ラストの”Bird Watcher-Disorder At The Border”はコニッツ、J・J、ガレスピーにこの曲だけケニー・ドーハム(トランペット)が加わり、テイラー、ポッター、ヘインズのリズム・セクションをバックにアドリブ大会を繰り広げます。ただ、これもドーハムの演奏がヘロヘロで、コニッツとガレスピーは可もなく不可もなく、J・Jとビリー・テイラーが貫録のソロを聴かせると言ったところでしょうか?以上、特に後半は演奏の質も玉石混交ですが、まあいろんなメンバーが楽しそうにワイワイやってる雰囲気は伝わってくるので、まあこれはこれで良いのではないでしょうか?

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モダン・ジャズ・カルテット&オスカー・ピーターソン・トリオ・アット・ジ・オペラ・ハウス

2020-11-19 17:41:23 | ジャズ(その他)

ジャズファンならJATPという言葉をどこかで聞いたことがあると思います。Jazz At The Philharmonicの略で、ヴァーヴ・レコードの創設者であるノーマン・グランツが大物ジャズメン達を集めて開いたコンサート・シリーズのことです。メンバーは流動的ですが、代表的な名前を挙げるだけでもレスター・ヤング、ベン・ウェブスター、コールマン・ホーキンス、ベニー・カーター、ジーン・クルーパ、ライオネル・ハンプトン、ディジー・ガレスピー、チャーリー・パーカー等いずれも超のつく大物ばかりです。最も活動が盛んだったのは40年代後半から50年代前半にかけてで、その頃の録音は数も少なく、CD化もあまりされていないこともあって全貌は良く分かりません。そんな中で1957年の秋にシカゴのオペラ・ハウスで行われたコンサートの模様はヴァーヴより複数CD化されており、スタン・ゲッツとJ・J・ジョンソンが共演した「スタン・ゲッツ・アンド・J・J・ジョンソン・アット・ジ・オペラ・ハウス」、エラ・フィッツジェラルドがオスカー・ピーターソン・トリオをバックに歌う「エラ・フィッツジェラルド・アット・ジ・オペラ・ハウス」等があります。今日ご紹介する「モダン・ジャズ・カルテット&オスカー・ピーターソン・トリオ・アット・ジ・オペラ・ハウス」もMJQとオスカー・ピーターソンという人気者同士の組み合わせで、ネイムバリュー的には上記2作に引けを取りません。

ただこの作品、タイトルだけ見ると2つのグループが一緒に演奏するのかと期待しますが、実際は共演盤でもなんでもなく、前半3曲をMJQ、後半5曲をオスカー・ピーターソン・トリオがそれぞれ演奏するだけ。要は人気グループのライヴを2つくっつけただけという安易(?)な企画です。しかも、前半のMJQの部分があまりよろしくない。一応、チャーリー・パーカーの”Now's The Time”やセロニアス・モンクの"'Round Midnight"を演奏していますが、内容的にそこまで特筆すべきところはなし。そもそも私はMJQはそんなに好きではないのですよね。アトランティックの諸作品群の中には良いものもありますけど、これに関しては録音状態も悪いし、演奏にも魅力は感じません。

お薦めは後半のオスカー・ピーターソン・トリオの方です。トリオと言ってもドラムのエド・シグペンを加えた後年のトリオではなく、ギターのハーブ・エリス入りのトリオですね。(本ブログでも以前に「シェイクスピア・フェスティヴァル」を取り上げました。)全5曲ですが、いわゆる定番スタンダードはなく、マイナーな曲を中心にした選曲ですが、どれもクオリティの高い演奏です。1曲目は「雨に唄えば」の作曲者であるナシオ・ハーブ・ブラウンが書いた”Should I”と言う曲。他で聞いた記憶のない曲ですが、実にキャッチーなメロディで、トリオのスインギーな演奏も相まって名曲・名演に仕上がっています。2曲目はラッキー・ミリンダーの書いた”Big Fat Mama”で、こちらはファンキーなブルースです。3曲目はジェイムズ・ハンリーと言う人が書いた”Indiana”。他ではスタン・ゲッツも演奏していますが、ここではピーターソンが超速弾きを披露。それについて行くエリスとブラウンもさすがです。4曲目と5曲目は他のジャズマンのカバーで、クリフオード・ブラウンの”Joy Spring”を落ち着いたミディアム・テンポで、ジェリー・マリガンの”Elevation”を超ハイテンポでそれぞれ料理しています。主役はもちろんピーターソンで、圧倒的なテクニックと抜群のドライブ感でぐいぐい牽引していきますが、時にはソロにそれ以外はリズム・ギターでズンズンズンズンとリズムを刻むハーブ・エリスにも注目です。

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ビル・エヴァンス&ジム・ホール/インターモデュレーション

2017-04-11 23:27:31 | ジャズ(その他)
年度末は仕事が忙しく、1ヶ月ぶりのブログ更新となりました。本日取り上げるのはビル・エヴァンスとジム・ホールが1966年に残したデュオ作品「インターモデュレーション」です。エヴァンスとホールのデュオ作品はもう1枚ユナイテッド・アーティスツに残した「アンダーカレント」という作品があり、そちらは名盤特集などにもかなりの頻度で取り上げられるのでご存じの方も多いと思います。ただ、私は基本的にベースとドラムが入ってない静かなジャズは性に合わない方で、「アンダーカレント」もジャズ初心者の頃に購入したものの良さがわからず、中古屋に売り払ってしまいました。にもかかわらず、同じデュオ作品である本作を購入するきっかけとなったのは本ブログでも取り上げたライブ盤「カリフォルニア・ヒア・アイ・カム」に収録されていたエヴァンスの自作曲“Turn Out The Stars”がもともと本作に収録されていることを知ったからです。いざ聴いてみるとお目当ての“Turn Out The Stars”はもちろん素晴らしいものの、他の曲も粒揃いでなかなかの傑作でした。



収録は全6曲。うち最初の2曲がいわゆるジャズ・スタンダードで、コール・ポーターの“I've Got You Under My Skin”、そしてガーシュウィンの「ポーギーとべス」からの1曲“My Man's Gone Now”です。前者はスインギーな演奏で、後者はけだるいムードの漂う大人のジャズです。3曲目はお目当ての“Turn Out The Stars”。実にエヴァンスらしいリリカルなメロディを持った名曲で、エヴァンスの夢見るようなピアノソロが圧巻です。続く“Angel Face”はジョー・ザヴィヌルがキャノンボール・アダレイのために書いた曲だそうですが、こういう隠れた名曲を取り上げて、まるで自分の曲のように演奏してしまうのもエヴァンスの得意技ですね。続く“Jazz Samba”はアレンジャーとしても有名なクラウス・オガーマンの曲。タイトル通り陽気なサンバ風の曲で落ち着いた曲風の多い本作の中で絶妙のアクセントとなっています。ラストはジム・ホールの自作曲である“All Across The City”。メランコリックなメロディが印象的なバラードでしっとりと幕を閉じます。アルバム全編を通してエヴァンスはいつもと同じようにきらびやかなソロを繰り広げますが、一方でホールはあまり派手にソロを取るでもなく、あくまでエヴァンスの脇に回るという感じです。名手なのにあえて控え目にプレイするのは大人の余裕というやつでしょうか?でも、だからこそエヴァンスはデュオの相手に2度もホールを選んだのかもしれませんね。
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ウィリー・ボボ/ボボズ・ビート

2017-03-13 12:26:47 | ジャズ(その他)
本日はちょっと変わり種でラテンパーカッション奏者ウィリー・ボボのルーレット盤をご紹介します。本名はウィリアム・コレア。プエルトリコ移民でニューヨークの通称“スパニッシュ・ハーレム”で育ったそうです。以前に本ブログでも紹介したグラント・グリーンの「ラテン・ビット」やハービー・ハンコックの「インヴェンションズ・アンド・ディメンションズ」等多くのジャズアルバムに参加しており、ラテンパーカッションの分野ではキャンディドやカルロス・バルデスらと並んで第一人者と言えるでしょう。ただ、多くのジャズファンにとっては正直パーカッションという楽器自体が“おまけ”みたいな存在で、せいぜい後ろでチャカポコ鳴ってるなあという程度の認識しかないのが事実です。このたび「ジャズ・マスターズ・コレクション1200」シリーズで再発売にはなりましたが、購入前の期待値もそんなに高くなく、「まあ買ってみっか」程度でした。ところがいざ聴いてみるとなかなかクオリティが高く、拾いモノの1枚でした。



曲は全9曲。冒頭の“Bon Sueno”なんてイメージ通りのラテン・ムード全開の陽気なナンバーですが、続く“Naked City Theme”は一転してスローバラードで、ホーンセクションとオルガンが都会の夜の雰囲気を演出します。そこから“Felicidade”“Bossa Nova In Blue”“Boroquinho”とボサノバ風の楽曲が3曲続き、続く“Crisis”はフレディ・ハバード作でジャズ・メッセンジャーズも演奏したモードジャズの名曲です。続くブラジル風の“Mi Fas Y Recordar”を経て、今度はトム・マッキントッシュ作のハードバップ“Capers”。最後はオルガンを全面的にフィーチャーしたソウルフルな“Let Your Hair Down Blues”で締めくくり。以上、いかにもラテン風の演奏もあれば、“Crisis”等ジャズ度の高い曲も多く、バラエティに富んだ選曲です。バックのホーンセクション陣の演奏も聴き応え十分で、あいにく参加メンバーの詳細が記載されていないものの、トランペットにクラーク・テリー、テナーにジョー・ファレル、オルガンにフランク・アンダーソンが参加しており、随所に小気味良いソロを聴かせてくれます。それ以外にも“Boroquinho”ではトロンボーンが大々的にフィーチャーされますが、誰が吹いているのかはわかりません。もちろん主役のボボも全編にわたってチャカポコチャカポコとリズムを刻んでいますが、どちらかと言うとトータルのサウンドで楽しむ作品ですね。
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