個人的にオペラはそれほど得意ジャンルではないのですが、それでもモーツァルト「フィガロの結婚」、ヴェルディ「椿姫」、プッチーニ「ラ・ボエーム」、ビゼー「カルメン」などメジャーどころは一応所有しております。ただ、オペラの第一人者と言われるワーグナーの作品は今まで1枚も持っていませんでした。何せワーグナーのオペラはどれも長大な作品ばかり。特に今日ご紹介する「ニーベルングの指輪」なんて合計時間なんと15時間。実際に上演される際は4日間に分けて行われるという超・超大作ですからね。そう簡単に手が出るはずもありません。
今回、購入したのもさすがにオペラの全曲盤ではなく、管弦楽曲のハイライトです。「ニーベルング」のハイライトは古今東西多くの名指揮者が録音していますが、私がその中から選んだのはダニエル・バレンボイム指揮シカゴ交響楽団のCDです。収録曲は全部で5曲。「ワルキューレ」から「ワルキューレの騎行」、「ジークフリート」から「森のさざめき」、「神々の黄昏」から「夜明けとジーグフリートとラインの旅」「ジークフリートの死と葬送行進曲」「ブリュンヒルデの結びの歌」が入っています。他のCDも若干の違いはあるとは言え、収録曲はほぼ同じでこの5曲が人気のようですね。
「ワルキューレの騎行」はコッポラの映画「地獄の黙示録」の戦闘シーンで使われたことで非常に有名です。荒々しくも重厚なオーケストレーションが迫力満点です。「森のさざめき」は一転して森の中の小鳥のさえずりから始まる静かで美しい旋律。動からの静へうまく転換する見事な選曲だと思います。「夜明けとジークフリートのラインの旅」はタイトルが示すように主人公の旅立ちを描いた非常にポジティブで雄大な音楽。個人的には本CDの中で一番好きな曲です。「ジークフリートの死と葬送行進曲」は文字通り死をイメージした暗く、重々しい曲。ただ、終盤は暗雲が振り払われたかのように力強い壮麗な旋律が現れます。ここまでオーケストラのみでしたが、最後の「ブリュンヒルデの結びの歌」は唯一ソプラノ独唱が加わります。20分に及ぶ大曲で15分過ぎまで熱唱が繰り広げられますが、やはり最後の締めのオーケストラ部分が感動的ですね。以上、15時間のオペラから1時間強を抜き出したハイライトで、曲も飛び飛びのはずですが、通して聴くとまるで1つの作品のような統一感ある仕上がりになっています。選曲・構成の素晴らしさでしょう。「ニーベルング」全曲には今後もなかなか手は出ないと思いますが、少なくともワーグナーの素晴らしさを理解するには最適の1枚だと思います。