ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ジジ・グライス/セイイング・サムシン

2014-01-17 10:25:17 | ジャズ(ハードバップ)
ジジ・グライスはモダンジャズ界きってのインテリです。同時代のジャズメン達がクラブでのライヴやビッグバンドでの下積みを経たいわゆる“現場叩き上げ”なのに対し、ジジは名門ボストン音楽院で学士号を取得。その後はさらにフルブライト奨学金でパリに留学。作曲家のオネゲルらに師事し、交響曲や室内楽の作曲法を学んだとか。こんな経歴のジャズメンは他にいません。ただ、彼の不思議なところは、クラシック音楽の影響がその後の演奏からほとんど感じられないところ。50年代のジジはクリフォード・ブラウン、アート・ファーマー、ドナルド・バードら錚々たる面々と共演していますが、そこでの演奏は紛れもない純正ハードバップ。“Minority”“Nica's Tempo”等残された多くの自作曲もコテコテのバップチューンです。高度な音楽教育を受けながらもジジの心をとらえたのは結局バップだったということなのかもしれません。



本作「セイイング・サムシン」はそんなジジが1960年にプレスティッジ傍系のニュージャズに残した作品。参加メンバーはジジ(アルト)に加え、リチャード・ウィリアムズ(トランペット)、リチャード・ワイアンズ(ピアノ)、レジー・ワークマン(ベース)、ミッキー・ローカー(ドラム)。中でもウィリアムズはジジの片腕と言っても良い存在で、この頃の彼の作品には必ず顔を出しています。知名度は低いですが、高らかに鳴るトランペットの腕前は一級品です。

演奏はハードバップからさらにコテコテ度を増し、ブルースへの傾倒が感じられる内容となっています。全6曲、既知の曲が1つもないので、最初聴いた時はパッとしませんが、繰り返し聴くうちにそれなりに愛着が湧いてきます。中でもお薦めはドラマチックな“Blues In The Jungle”、ゴスペル調の“Down Home”あたりでしょうか。その後、ジジはニュージャズに2つ、マーキュリーに1作(以前に紹介した「レミニシン」)を残し、表舞台から忽然と姿を消します。その後の彼は子供たちへの音楽教育に力を注いでいたとか。若い頃に学んだ音楽理論はその時に役立ったのでしょうか?
コメント