本日はちょっと変わり種でアメリカ東部の名門エール大学で1959年11月に行われたコンサートの模様を収録した作品をご紹介します。日本でも大学の学園祭でアイドル歌手やロックバンドのコンサートはつきものですが、50年代のアメリカでは同じようなノリで各地のキャンパスでジャズコンサートが行われていたようですね。まあ、当時はジャズもいわゆる流行音楽の一種でしたから学生達も軽いノリで参加していたのでしょうね。同じような企画としてはチェット・ベイカーがミシガン大学で行った演奏を収めた「ジャズ・アット・アナーバー」、バド・シャンクがカリフォルニア工科大学で行った演奏を収めた「ジャズ・アット・カルテック」などがあります。
参加メンバーはズート・シムズ(テナー)、サム・モスト(フルート)、ジミー・レイニー(ギター)、テディ・チャールズ(ヴァイブ)、デイヴ・マッケンナ(ピアノ)、ビル・クロウ(ベース)、エド・ショーネシー(ドラム)の7名。全員が白人ミュージシャンで当時東海岸でプレイしていた面々です。一応、テディ・チャールズがリーダーということになっていますが、実質はリーダー不在で冒頭の“Rifftide”以外は各自が曲ごとにイニシアチブを取るという一風変わった構成です。名義上のリーダーであるチャールズはエール大学の学生歌“Whiffenpoof Song”で美しいバラード演奏を聴かせますが、もともと実験的な音楽を得意としているだけあって“Yale Blue”“Nigerian Walk”の2曲でトンがった演奏を聴かせます。ただ、個人的には他のオーソドックスな演奏の方が好きですね。マッケンナによる“Struttin' With Some Barbecue”、レイニーによる“Yesterdays”、モストによる“That Old Black Magic”。どれもストレートな演奏ですが各人のソロがたっぷり楽しめます。ただ、イチ押しはやはりズート・シムズによる2曲。スインギーな“Too Close For Comfort”もいいですが、続く“These Foolish Things”が最高。テナーによるバラードプレイの真髄とでも言うべき名演です。エール大学のキャップをかぶったブルドッグのジャケットも何ともユニークですね。