ハードバピッシュ&アレグロな日々

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モーツァルト/レクイエム

2015-03-01 13:47:04 | クラシック(声楽)
本日はモーツァルトの「レクイエム」です。何を今さらと言うほどの有名曲ですが、レクイエム=鎮魂歌=暗い、という図式がどうも私の中のモーツァルト像と結びつかず何となく敬遠していた次第です。この曲はいろいろいわくが付いています。まず、この曲がモーツァルトの“絶筆”であるということ。モーツァルト自身は14曲中8曲目の「ラクリモーサ(涙の日)」を書き終えた時点で病に倒れたため、後半部分は弟子のジュースマイヤーという人物が書いたとか。またこの曲はある匿名の人物からの依頼で書かれ、モーツァルト自身はその使者を死神の使いと恐れていたとかいう説もまことしやかに伝わっています。(映画「アマデウス」ではさらに飛躍してライバル作曲家のサリエリが死神の使いに扮してモーツァルトを追い詰めたという設定にしています)



そんな伝説に色付けされた曲ですが、やはり死者のためのミサ曲だけあって重々しい雰囲気です。明るく天国的な旋律が持ち味のモーツァルトにとっては異色の作品と言えるでしょう。モーツァルトは他にも交響曲第40番など短調の曲はありますが、それらはあくまでメランコリックなだけであって、ここまで重苦しさを感じさせるものはありません。死神の恐怖に怯えていたなんてのは言い伝えだとしても、どことなく自身の体調から死期を予兆していたのかもしれません。もちろんかのモーツァルトですからただ単に重苦しいだけでなく、オーケストラと合唱を巧みに融合させ、随所に盛り上がる曲に仕上がっています。特に荘厳な第2曲「キリエ」、荒々しい第3曲「ディエス・イレー(怒りの日)」、映画「アマデウス」でも使われた第7曲「コンフタティス(呪われた者)」、そして遺作となった「ラクリモーサ」など聴き所は多いです。9曲目以降はジュースマイヤーの補筆ですが、師匠の意を十分に汲み取っていたのか、完成度はそれなりに高く、特に前半と後半で違和感はありません。CDはベーム、カラヤン、アーノンクール、ショルティら巨匠達の演奏が出回っていますが、私が購入したのは近年(2006年)の録音でドイツの中堅指揮者クリスティアン・ティーレマンがミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団を振ったものです。
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