モダンジャズ全盛期には数多くのジャムセッションが吹き込まれました。ハードバップ・ファン御用達なのはプレスティッジの一連のジャムセッションでコルトレーン、ドナルド・バード、ケニー・バレルら当時の若き黒人ハードバッパー達の熱い演奏が楽しめます。一方、ヴァーヴ・レコードは社長のノーマン・グランツの好みを反映してか、それより一世代上のジャズメン達の作品が多いですね。本作「ジャズ・ジャイアンツ’58」も中間派またはクール世代の大物達が一堂に会した豪華セッションで、即席の顔合わせながらも落ち着いた大人のジャズを聴かせてくれます。このシリーズではもう1枚「ジャズ・ジャイアンツ’56」という作品もあるのですが、そちらはレスター・ヤング、ロイ・エルドリッジ、テディ・ウィルソンと言ったさらに上のスイング世代の大御所ばかりで、さすがにややオールドファッション過ぎます。私は本盤の方が好きですね。
メンバーは総勢7人ですが、すごいメンツですよ。トランペットがハリー・“スイーツ”・エディソン、テナーがスタン・ゲッツ、バリトンがジェリー・マリガン、ピアノがオスカー・ピーターソン、ギターがハーブ・エリス、ベースがレイ・ブラウン、ドラムがルイ・ベルソンと誰がリーダーでもおかしくない大物ばかりです。曲は全5曲。1曲目の“Chocolate Sundae”だけがオリジナルのブルース曲(オスカーのピアノソロが素晴らしい!)で、後は歌モノスタンダード中心。軽快な“When Your Lover Has Gone”“Candy”と続き、4曲目はバラード・メドレーでマリガンの“Lush Life”、スイーツの“Lullaby Of The Leaves”、ブラウンの“Makin' Whoopee”、ゲッツの“It Never Entered My Mind”とソロが受け渡されていきます。ラストはディジー・ガレスピーの“Woody'n' You”を全員がノリノリで演奏して締めくくります。個人的にはスイーツのミュート一辺倒のトランペット・ソロはやや苦手ですが、ゲッツのまろやかなテナーはいつも通りの見事さですし、何よりオスカー・ピーターソンのピアノが全編に渡って素晴らしいですね。リーダー作はトリオ演奏ばかりですが、管楽器入りのコンボ編成で見せる絶妙なバッキングとキラリと光るソロは演奏全体の質を高めています。