本日は前々回に引き続きJ・J・ジョンソンの作品をご紹介します。J・Jのキャリアの絶頂は1950年代後半のコロンビア時代で「ファースト・プレイス」、「ブルー・トロンボーン」、「ダイアル・J・J・5」等の傑作を次々と発表しました。本作はそれより少し前の1953年から54年にかけてブルーノートに録音されたもので、53年6月のセッションがクリフォード・ブラウン(トランペット)、ジミー・ヒース(テナー)、ジョン・ルイス(ピアノ)、パーシー・ヒース(ベース)、ケニー・クラーク(ドラム)を加えたセクステット。54年9月がウィントン・ケリー(ピアノ)、チャールズ・ミンガス(ベース)、ケニー・クラーク(ドラム)のリズムセクションにサブー・マルチネスのコンガを加えた変則的ワンホーン作品となっています。なお、本作には「Vol.2」があり、そちらはハンク・モブレーやホレス・シルヴァーとのクインテットだそうですが、未聴です。
メンツだけを見ると53年のセッションが天才クリフォード・ブラウンのトランペットが聴けるとあって、ついそちらに注目してしまいがちですが、主役はあくまでJ・J。“Lover Man”や“It Could Happen To You”等のバラードではソロはJ・Jのみですし、“Turnpike”“Get Happy”“Capri”等アップテンポの曲でもブラウンの切れ味鋭いソロは聴けるものの、出番も短いですし、あくまで3管編成の一員という扱いです。ブラウン目当てで聴くとやや肩透かしを食うかも。リーダーのJ・Jもどちらかというと3管のアンサンブルを重視してソロも控えめな印象を受けます。ちなみにあまり目立たないもののリズム・セクションは初代MJQのメンバーです。
個人的には1954年のセッションの方が魅力的ですね。まだメジャーになる前のウィントン・ケリーのスインギーなピアノも良いですし、サブーのコンガが絶妙のスパイスとなっています。とりわけ自作の“Jay”は本作のベストトラックでサブーの野性的なコンガに煽られるようにJ・Jが1分半にわたって超高速パッセージを一気に吹き切ります。ここでのJ・Jのソロはまさに神技とでも言うべきもので、タイトル通り彼があまたのトロンボーン奏者の中でもEminent=傑出した存在であったことを証明しています。同じく自作曲の“Coffee Pot”もアップテンポのナンバーでメンバー全員が快調に飛ばします。一方、スタンダードの“It's You Or No One”は通常アップテンポで演奏されることが多いですが、ここではスローバラードで演奏されており、J・Jの卓越したバラード演奏が堪能できます。なお、ベースを務めるのは超個性派のミンガスですが、本作の時点ではまだ“俺様”的な要素は微塵も見せず、いたってオーソドックスなプレイに徹しています。