本日は「ジャズの100枚」シリーズから離れて、先日CDで再発売されたデューク・ジョーダン「危険な関係のブルース」を取り上げます。この作品にはいわゆる裏話がありまして、もともと本作に収録されている楽曲は1959年のフランス映画「危険な関係」のためにジョーダンが書き下ろしたものだそうです。演奏したのは人気絶頂にあったアート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズで、映画自体が当時はやりのヌーヴェルヴァーグの波に乗ってヒットしたこともあり、サントラもジャズにしては異例の好セールスを記録したとか。ところがレコードジャケットに作曲家として書かれているのはジャック・マレーという名前で、ジョーダンの名はどこにもありません(再発売のCDにはジョーダンの名前が併記されていますが・・・)。ジャズマンがレコード会社の契約の関係で変名を使うのはよくあることですが、この場合はそうではなく、マレーは実在の人物で印税は彼のところに入って、肝心のジョーダンには一銭も入ってこなかったとか。著作権意識の薄い昔の話とは言え、これはあまりに気の毒と思ったのか、チャーリー・パーカーの未亡人であるドリス夫人が自分の所有するレーベル、その名もずばりチャーリー・パーカー・レコードからリリースしたのが本作というわけです。(ジョーダンは40年代後半にパーカーのバンドに在籍していたので、その縁でしょうか?)録音は1962年1月、映画の公開から2年以上後の話です。ただ、それでジョーダンが印税を取り戻したかというとそうでもなく、マイナーレーベルの悲哀か、それともジョーダン自身のネームバリューがなかったのか、大して売れたという話は聞かず、CDも長らく廃盤になっていました。一方のジャズ・メッセンジャーズ盤は名盤の仲間入りを果たし、例の「ジャズの100枚」シリーズからもリリースされていますので対照的ですね・・・
裏話はさておき、肝心の内容を見てみましょう。まず、メンバーですが、リーダーのジョーダン(ピアノ)に加え、テナーがベテランのチャーリー・ラウズ、トランペットがベイシー楽団に在籍していたソニー・コーン、ベースがエディ・カーン、ドラムがアート・テイラーです。通好みのメンバーと言えば聞こえはいいですが、ジャズ・メッセンジャーズ盤は御大ブレイキーに、リー・モーガン、ボビー・ティモンズ、さらに地元フランスのバルネ・ウィランと豪華ですので、メンツ的に見劣りするのは否めません。収録曲は全7曲、うち表題曲の「危険な関係のブルース」(原題“No Problem”)がハードバップ調、ラテン調、ブルース調の3バージョン、サントラ盤で“Prelude In Blue”というタイトルだった“The Feeling Of Love”がバラード調とミディアム調の2バージョンと5曲を占め、後は“Jazz Vendor”(サントラ盤では“Valmontana”)、“Subway Inn”(同“Miguel's Party”)の2曲で、実質4曲のみです。
以上、メンバーも地味かつ収録曲も少なく大丈夫?と思ってしまいますが、これが充実した内容なのですから、ジャズの世界は奥が深いですね。4曲とも楽曲の質が良いのもありますが、それ以上に演奏が良いです。作曲者でリーダーのジョーダンも端正なピアノを全編で聴かせてくれますが、何よりチャーリー・ラウズのテナーが素晴らしい。この人、セロニアス・モンクのサイドマンを長らく勤めたせいか、ややクセのあるテナー奏者と見られがちですが、それはあくまでモンクの個性的な音楽に合わせたからなんですよね。実際はモダンジャズの王道を行く正統派のテナー奏者です。冒頭、ハードバップ調の“No Problem”でのソウルフルかつ力強いテナーソロは圧巻の一言。一転して、バラードの“The Feeling Of Love”ではまろやかで温かみのあるトーンで聴き手をうっとりさせてくれます。スモールコンボでの演奏は珍しいソニー・コーンの高らかに鳴るラッパも魅力的ですね。ジャズ・メッセンジャーズ盤に比べれば地味ですが、決して二番煎じなどではない薫り高きハードバップが味わえる隠れ名盤です。
裏話はさておき、肝心の内容を見てみましょう。まず、メンバーですが、リーダーのジョーダン(ピアノ)に加え、テナーがベテランのチャーリー・ラウズ、トランペットがベイシー楽団に在籍していたソニー・コーン、ベースがエディ・カーン、ドラムがアート・テイラーです。通好みのメンバーと言えば聞こえはいいですが、ジャズ・メッセンジャーズ盤は御大ブレイキーに、リー・モーガン、ボビー・ティモンズ、さらに地元フランスのバルネ・ウィランと豪華ですので、メンツ的に見劣りするのは否めません。収録曲は全7曲、うち表題曲の「危険な関係のブルース」(原題“No Problem”)がハードバップ調、ラテン調、ブルース調の3バージョン、サントラ盤で“Prelude In Blue”というタイトルだった“The Feeling Of Love”がバラード調とミディアム調の2バージョンと5曲を占め、後は“Jazz Vendor”(サントラ盤では“Valmontana”)、“Subway Inn”(同“Miguel's Party”)の2曲で、実質4曲のみです。
以上、メンバーも地味かつ収録曲も少なく大丈夫?と思ってしまいますが、これが充実した内容なのですから、ジャズの世界は奥が深いですね。4曲とも楽曲の質が良いのもありますが、それ以上に演奏が良いです。作曲者でリーダーのジョーダンも端正なピアノを全編で聴かせてくれますが、何よりチャーリー・ラウズのテナーが素晴らしい。この人、セロニアス・モンクのサイドマンを長らく勤めたせいか、ややクセのあるテナー奏者と見られがちですが、それはあくまでモンクの個性的な音楽に合わせたからなんですよね。実際はモダンジャズの王道を行く正統派のテナー奏者です。冒頭、ハードバップ調の“No Problem”でのソウルフルかつ力強いテナーソロは圧巻の一言。一転して、バラードの“The Feeling Of Love”ではまろやかで温かみのあるトーンで聴き手をうっとりさせてくれます。スモールコンボでの演奏は珍しいソニー・コーンの高らかに鳴るラッパも魅力的ですね。ジャズ・メッセンジャーズ盤に比べれば地味ですが、決して二番煎じなどではない薫り高きハードバップが味わえる隠れ名盤です。