ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ソニー・ロリンズ・プラス4

2024-05-28 21:09:21 | ジャズ(ハードバップ)

本日はソニー・ロリンズのプレスティッジ盤「ソニー・ロリンズ・プラス4」を取り上げたいと思います。ただし、聴いていただければわかると思うのですが、実際はクリフォード・ブラウン=マックス・ローチ・クインテットの作品です。テナーにハロルド・ランドを擁し、西海岸を拠点にプレイしていたブラウン=ローチ・クインテットですが、1955年にニューヨークに帰ってきます(もともとはブラウンもローチも東海岸の出身)。ただし、ランドが引き続き西海岸での活動を継続したために、代わりにロリンズがクインテットに加わったというわけです。メンバーはクリフォード・ブラウン(トランペット)、ロリンズ、リッチー・パウエル(ピアノ)、ジョージ・モロウ(ベース)、マックス・ローチ(ドラム)。このメンバーでまず彼らが専属契約を結んでいたエマーシーに名盤「アット・ベイズン・ストリート」を吹き込みます。録音時期は1956年1月から2月にかけてで、クインテット名義ではこれが最後のスタジオ録音となります。ただ、実は3月22日にもプレスティッジにも吹き込みが行われており、それが本作です。実態はブラウン=ローチ・クインテットですが、契約上の問題からプレスティッジと契約していたロリンズがリーダーとなったというのが経緯です。なお、後年になってブラウンが6月26日に事故死する直前のライヴを収めたという「ザ・ビギニング・アンド・ジ・エンド」という作品がコロンビアから発売されましたが、最近の定説では前年の1955年5月の録音だそうです。と言うわけで本作がブラウン最後のスタジオ録音となります。

上述のとおりジャズ史的に見て価値の高い作品ですが、そんなものを一切抜きにして純粋な音楽的観点から見ても素晴らしい作品だと思います。アルバムはまずロリンズの自作曲"Valse Hot"で始まります。3/4拍子という変則リズムのワルツですが、メロディ自体はとても優しく心温まる名曲です。ロリンズもローチもよほどこの曲を気に入ったのか、翌年にローチのリーダー作「ジャズ・イン・3/4タイム」(ロリンズも参加)でも再演しています。2曲目から4曲目は歌モノですが、いわゆる定番曲ではなくサム・コスロー作の”Kiss And Run"、ジミー・マクヒューのミュージカル曲"I Feel A Song Coming On"とあまり他では聴いたことのない曲です。ただ、メロディ自体はとても親しみやすいですし、何より演奏が素晴らしいですね。ノリにノってブロウするロリンズ、唯一無二の超絶技巧を次々と繰り出すブラウン、そしてバンド全体をコントロールするローチのドラミング、そして彼らの影に隠れがちなリッチー・パウエルのピアノも良いです。アーヴィング・バーリンの”Count Your Blessings Instead Of Sheep"は2分半しかない箸休め的バラードで、ここではブラウンがお休みしてロリンズのワンホーンです。ラストは再びロリンズの自作曲”Pent-Up House"。チェット・ベイカーはじめ多くのジャズメンにカバーされた名曲ですが、初演は本作です。2管の力強いテーマ演奏の後、ブラウンが輝かしいソロを繰り広げ、続くロリンズは出だしこそ手探りなものの途中から閃きに満ちたアドリブを聴かせます。結局、この録音がブラウンにとって遺作となるのですが、当たり前のことながら演奏にはそんな悲劇の前兆など微塵も感じられず、ジャズをプレイする喜びが聴いているこちらにも伝わって来ます。


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