ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ウィルトン・ゲイナー/ブルー・ボギー

2012-10-10 23:05:49 | ジャズ(ヨーロッパ)
マイナーレーベル第4弾はテンポ・レコードに残されたウィルトン・ゲイナー「ブルー・ボギー」です。以前ご紹介した澤野工房発売の1枚ですね。テンポはイギリスのレコード会社で他にもタビー・ヘイズ、ジミー・デューカーらの録音が残されているようですが、彼らはともかくこのウィルトン・ゲイナーというテナー奏者については全く未知の存在でした。ジャケットを見ればわかるように黒人で、ジャマイカからロンドンに渡ってきてプレイしていたようです。同じような経歴の持ち主でトランペッターのディジー・リースがいますが、ブルーノートにリーダー作を残す幸運に恵まれた彼と違い、このゲイナーは終生無名のままヨーロッパでひっそり演奏活動を行っていたようです。



1959年録音の本作はワンホーンのカルテット編成で、他のメンバーはテリー・シャノン(ピアノ)、ケニー・ナッパー(ベース)、ビル・エイデン(ドラム)。全て地元イギリスのジャズメン達です。ハードバップ全盛期とあってゲイナーのプレイも本場の黒人ジャズを強く意識したもので、テクニック的に特筆すべきものこそないものの、哀調を帯びたブルージーなプレイには捨て難い魅力があります。曲は全6曲。スタンダードの“The Way You Look Tonight”、クリフォード・ブラウンの“Joy Spring”のカバーもありますが、お薦めはむしろ自作曲の方。歌謡曲チックなマイナーキーの“Wilton's Mood”、ファンキー節全開の“Rhythm”、そして本作のハイライトである美しいバラード“Deborah”と魅力的な楽曲が揃っています。タイトル通りブルーに統一されたジャケットも秀逸ですね。
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ア・スウィンギン・ギグ

2012-10-06 11:48:07 | ジャズ(ウェストコースト)

マイナーレーベル第3弾はタンパ・レコードです。西海岸に短期間存在したレコード会社で、20数枚のアルバムしか残していないという幻のレーベルですが、その中に全盛期のアート・ペッパーの録音が2枚含まれるということで熱心なジャズファンにはお馴染みかもしれません。ただ、それ以外の作品はほとんど無視されているというのが実情でしょう。1956年録音の本作「ア・スウィンギン・ギグ」も一応ジャケ帯では「ウェストコースト・オール・スターズ」と銘打ってるものの、その割にオールスターでも何でもないメンツばかりで正直購入意欲がなかなか湧きませんでした。



ただ、思い切って買ってみるとこれがなかなかいいんですな。いかにもウェストコーストらしい軽めのアレンジですが、曲もいいし演奏内容もいいし、無名だからと侮るなかれ!ですよ。一応メンバーを紹介しますと、ジョン・アンダーソン(トランペット)、デイヴ・ウェルズ(トロンボーン)、バディ・コレット(テナー)、ウィリアム・グリーン(アルト)、チャック・ジェントリー(バリトン)、ジーン・チプリアーノ(オーボエ)、ジェラルド・ウィギンス(ピアノ)、マックス・オルブライト(ドラム)、ベースはカーティス・カウンスとジョー・コンフォートが曲によって交代します。うちソロを主に取るのはアンダーソン、ウェルズ、コレット、ウィギンスの4人で後はアンサンブルがメインです。

曲はメンバーのオリジナルとスタンダードが半々。どれも3分前後の短い演奏ですが、西海岸らしい洒落たアンサンブルに乗って、各自が少しずつソロを取っていくスタイルです。自作曲ではアンダーソン作の切れ味鋭い“Crow's Nest”、ちょっぴりベイシー風の“Some Folks Like The Blues”、バディ・コレット作の陽気な“Sunset Drive”。スタンダードではスイングジャズ風の“Remember”、アンダーソンのアレンジが冴えわたる“One Morning In May”がお薦めです。カリフォルニアの青空をバックにブランコで遊ぶ子供達を写したジャケットもいいですね。ブランコの英語名はswingですから、タイトルとも引っかけたのでしょう。その名のとおりまさにスウィンギーな名演です。

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ジミー・フォレスト/オール・ザ・ジン・イズ・ゴーン

2012-10-05 22:27:32 | ジャズ(ソウルジャズ)
マイナーレーベル第2弾はテナー奏者ジミー・フォレストがデルマークに残した「オール・ザ・ジン・イズ・ゴーン」をピックアップします。デルマークはシカゴを本拠地とするレコード会社で、ブルースの世界ではそこそこメジャーなレーベルのようですが、ジャズの世界で省みられることはほとんどありませんでした。どうやらジャズと言ってもR&B色の濃いホンカー系の作品が多く、正統派ジャズファンからは評価されなかったのでしょうね。ただ、今日紹介する「オール・ザ・ジン~」は普通のハードバップ好きも大いに満足できる内容です。



1959年録音の本作ですが、まずメンバーがいい。リーダーのフォレストはお世辞にもメジャーとは言えませんが、他がグラント・グリーン(ギター)、ハロルド・メイバーン(ピアノ)、ジーン・ラミー(ベース)、エルヴィン・ジョーンズ(ドラム)と精鋭揃い。特にグリーンはこれが記念すべき初録音とのことで、後にブルーノートの花形スターとなる才能の片鱗を感じることができます。メイバーンのスインギーなピアノ、エルヴィンの熱いドラミングもさすが。ただ、強調すべきは本作の主役があくまでリーダーのフォレストであるということ。メンバー全員が熱いソロを繰り広げる“All The Gin Is Gone”での力強いブロウ、“Myra”でのファンキー節全開のプレイもさることながら、バラード“You Go To My Head”やミディアムテンポに料理された“Laura”での温かみのあるテナーソロは絶品です。隠れた実力派の魅力を余さずとらえた貴重な1枚と言えるでしょう。
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J・R・モンテローズ・イン・アクション

2012-10-04 23:41:40 | ジャズ(ハードバップ)

本日から何回か続けてマイナーレーベルの作品を紹介したいとます。第一弾は通好みのテナー奏者J・R・モンテローズが1964年に録音した「J・R・モンテローズ・イン・アクション」です。J・Rと言えば録音数こそ決して多くはないものの、天下のブルーノートにリーダー作「J・R・モンテローズ」を残しているおかげで、わりとポピュラーな存在といえるでしょう。もう1枚、ジャロというマイナーレーベルに残した「ザ・メッセージ」も隠れ名盤として名高いですね。ただ、今日取り上げる「イン・アクション」はイリノイ州のロックアイランドという地方都市にあった「スタジオ4」と言う超マイナーレーベルから発売された作品で、当時J・Rが出演するナイトクラブで手売りするためプレスされたレコードだとか。幻の名盤もここに極まれりという感じですが、そんなレコードをCDで再発売する日本のレコード会社の物好きぶりにもただ感服するばかりです。まあ、それを買う私のようなマニアがいるから商売が成り立つんでしょうが・・・

サポートメンバーがまた無名揃い。デイル・オーラー(ピアノ)、ゲイリー・アレン(ベース)、ジョー・アボディーリー(ドラム)と言われても「誰じゃいそれ?」ですよね。何でもJ・Rが拠点にしていたアイオワ州の片田舎で活躍していたミュージシャンらしいので知らなくて当然ですよね。ブルーノート盤ではホレス・シルヴァー、ジャロ盤でもトミー・フラナガンと共演していただけに、メンバーの格落ち感も半端じゃないです。ただ、そんな不安要素は冒頭“Waltz For Clare”を聴いた瞬間に吹き飛びます。J・Rの自作曲でもある名バラードで、ここでの力強さと美しさを兼ね備えたテナーソロは全てのジャズファンを虜にすること間違いなしでしょう。ラストのこれまた自作曲“Herky Hawks”も素晴らしい。こちらはアップテンポの曲で、J・Rのハードドライヴィングなソロで見事に締めくくります。正直この2曲だけで買う価値アリですが、他もスタンダードのバラード“I Should Care”、自作曲の“Red Devil”と聴き応えのある内容。バックのトリオの演奏も特筆すべきものこそないものの、オーラーもピアノソロを無難にこなしており、J・Rのテナーをきちんとサポートしています。ジャケットのデザインも秀逸なこれぞ幻の名盤ですね。

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ケニー・クラーク&フランシー・ボラン/ジャズ・イズ・ユニヴァーサル

2012-10-02 12:23:57 | ジャズ(ヨーロッパ)
先日ジョン・ルイスとサシャ・ディステル、バルネ・ウィランとの共演盤を紹介しましたが、ジャズ黄金期にはアメリカから多くのミュージシャンがヨーロッパに渡って活動しました。その多くは一時的なツアーでしたが、中には完全に移住してしまった人達もいます。バド・パウエル、デクスター・ゴードンらが有名ですが、今日紹介するケニー・クラークもその代表格でしょう。彼はバップ・ドラムの開祖と呼ばれ、アメリカのジャズ界でも重鎮的な存在でしたが、黒人差別の根強い本国に見切りをつけたのか56年にさっさとパリに定住してしまいます。その後の彼は現地のミュージシャンと積極的に演奏活動を行った後、1961年にベルギー人のフランシー・ボランと組んでジャズ史に名高い「クラーク=ボラン・ビッグバンド」を結成。本作はアトランティックに録音された記念すべき第1作目です。



メンバーは計13人。各国のトッププレイヤーが集まっており、さながらジャズのヨーロッパ選手権と言った趣です。ざっと国別に紹介してみましょう。ジャケットの国旗の左上からオーストリア代表カール・ドレヴォ(テナー)、ベルギー代表フランシー・ボラン(ピアノ)、イギリス代表ジミー・デューカー(トランペット)&デレク・ハンブル(アルト)、フランス代表ロジェ・ゲラン(トランペット)、スウェーデン代表オーケ・パーション(トロンボーン)、トルコ代表アフメド・ムバファクファライ(トランペット)、そしてアメリカからもケニー・クラーク(ドラム)、ベニー・ベイリー(トランペット)、ナット・ペック(トロンボーン)、ズート・シムズ(テナー)、サヒブ・シハブ(バリトン)、ジミー・ウッド(ベース)が参加しています。

曲は全7曲。誰か特定のミュージシャンにスポットライトが当たるのではなく、各人に少しずつソロの機会が与えられる形式を取っています。基本的にはこれぞビッグバンドと言った感じの華々しいホーンセクションが繰り広げられるアップテンポのナンバーが中心ですが、個人的お薦めは2曲だけ収録されているバラード。“Gloria”はカール・ドレヴォの独壇場で、そのダンディズム薫るテナーに心を奪われます。“Volutes”はゆったりしたホーンアンサンブルが幻想的なムードを盛り上げる中、前半はボランのピアノ、後半をナット・ペックのトロンボーンがソロを取ります。それ以外では最後を飾る“Last Train From Overbrook”がいいですね。キレのいいブラスをバックにベイリー、シハブ、ドレヴォ、シムズが軽快にソロを交換して作品を締めくくります。
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