前回のスタン・ゲッツに引き続き、今日は同じくテナーの巨人であるソニー・ロリンズの作品をご紹介します。ロリンズと言えば「サキソフォン・コロッサス」「テナー・マッドネス」「ニュークス・タイム」「橋」などジャズファンなら誰でも知ってる名盤が目白押しで、私も当然それらのCDは所有しております。ただ、本盤は1951年から53年にかけて録音されたロリンズの中でも初期の作品と言うことで今までスルーしておりました。一応、タイトルではモダン・ジャズ・カルテットつまりMJQとの共同名義になっていますが、実は彼らとの共演は13曲中4曲のみで、残り9曲のうち8曲は1951年に録音されたケニー・ドリュー(ピアノ)、パーシー・ヒース(ベース)、アート・ブレイキー(ドラム)とのカルテット演奏で、あと1曲“I Know”はなぜかあのマイルス・デイヴィスがピアノを弾いているという異色の編成です。
曲は全て2分台から3分台前半までの短い演奏です。50年代前半はまだビバップからハードバップへの移行期で、各楽器がたっぷりソロを取る長尺の演奏よりもアドリブ一発勝負が主流だった時代。そんな中でもロリンズの力強いテナーは十分説得力を持っています。バックの演奏ですが、贔屓目を抜きにしてもやはりMJQとの共演の方が質が高いですかね。伴奏の域を脱していない感のあるケニー・ドリュー・トリオと違い、ミルト・ジャクソンの華麗なヴァイブとジョン・ルイスの端正なピアノソロが大いに存在感を放っています。特に“The Stopper”と“Almost Like Being Love”は必聴の出来です。もちろんドリュー・トリオとの演奏も悪くはなく、アップテンポの“Newk's Fadeaway”“On A Slow Boat To China”、バラードの“Time On My Hands”あたりが短いながらもキラリと光る演奏ですね。