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日本海廃止

2011-11-18 21:23:00 | 秋田のいろいろ
各社の報道によれば、秋田県を含む日本海側各府県を通って青森と大阪を結ぶJRの寝台特急でありブルートレインの「日本海」が、来年春に廃止されるらしいことが明らかになった。
共同通信では「廃止する方向で最終調整に入ったことが18日、関係者への取材で分かった。」、日経新聞は「(JRグループが)廃止する方針を明らかにした」、読売新聞関西版は「廃止する方針を決めた」、読売新聞全国版は「廃止されることが決まった」、青森放送は「廃止する方向で最終調整に入った」と、言い回しは異なるが、廃止は確定だろう。
ちなみに、「JRグループ」といっても、日本海が通るのはJR東日本とJR西日本の2社の線路で、車両や乗務員も含めて他社はほとんど関与していないので、実質的には東日本と西日本2社での調整ということだろう。
共同通信によれば「2社は今後、沿線の自治体関係者などにも事情を説明し、理解を得たい考え。」とのこと。

報道によれば、廃止理由は乗客減と車両の老朽化で、現在の乗車率は5割程度。
日本海が廃止されれば、残るブルートレインは「あけぼの(上野-青森・秋田経由)」と「北斗星(上野-札幌)」だけになり、関西からは消える。

早朝の秋田駅に停車中の下り「日本海」※2008年撮影
機関車はJR東日本エリア内もJR西日本の敦賀(福井県)所属の機関車が担当する。東日本や貨物所属の同型機関車とは異なり、塗装などが国鉄当時の原型に近いのが特徴。ただし、たまに、緑色のトワイライトエクスプレス塗装の機関車が入ることもある。


このニュースを受けて、いろいろ。
まず、「寝台特急」や「ブルートレイン」の定義について。
残るブルートレインは「あけぼの」と「北斗星」だけとあるが、「カシオペア」とか「サンライズ」各列車などがあるんじゃない? と思われる方もいると思う。でも、それらは「寝台特急」ではあるけれど「ブルートレイン」ではないのだ。
厳密には、次のような定義。
寝台特急:寝台(ベッド)を備えた「寝台車」を連結する列車のうち、「特別急行列車(特急)」の種別で運行されるもの。これが「急行」なら「寝台急行」。
ブルートレイン:20系、14系(15形含む)、24系(25形含む)と呼ばれる形式の客車列車を使って運行される列車。車体が青い色であっても、他の形式の列車はブルートレインとは呼ばない。過去には特急でなく急行のブルートレインもあった。

したがって、現在運行されている寝台特急「サンライズ出雲・瀬戸」「カシオペア」、寝台急行「きたぐに(一部座席車)」、それに昔走っていた「はくつる」「ゆうづる(の一部)」などは、別形式の車両なので、寝台列車だけどブルートレインではない。
今回の記事を見る限り、誤解した記者はいなかったようだが、今後、どこかの早とちりマスコミが勘違いするかもしれない。

ちょっと気になったのが、日本海と走る区間が一部重なる大阪-札幌間の豪華寝台列車「トワイライトエクスプレス」。これは、ブルートレインの条件を満たす「24系25形」を改造して使用しているのだが、改造時に車体が緑色に塗り替えられている。形式としてはブルートレインだけど、色はブルーじゃないわけだが、どうなるのだろう?
報道では、トワイライトはブルートレインではないとみなしているようにも思うが、定期列車でない(臨時列車扱い)から除いたのかもしれない。
ともかく、数十年前は日本中を走っていたブルートレインも、風前の灯。



日本海の廃止については、数年前から「今度のダイヤ改正で…」という噂が(一部鉄道愛好家の間で)あったが、ついに現実となった。新幹線と競合する「あけぼの」が存続するのが、むしろ意外。
航空機、新幹線、夜行バス、格安のビジネスホテルが登場・普及し、寝台列車の需要が減ったのは時代の流れと言える。かつては青森や秋田の高校などの修学旅行での利用も多かったが、公立高校でも航空機利用が可能になったり、旅行先が海外へシフトしたことも一因かもしれない。
(個室でない)開放型寝台はセキュリティ面で不安があるし、トイレは和式がメイン、コンセントは洗面所だけなど、時代に合わなくなった。
横になって寝ている間に移動できるのは便利だが、このような設備では正直言って、僕も乗りたいとは思わない。

JR側にしてみれば、(電車でなく客車なので)客車と機関車を別々に管理・運用する手間、東日本と西日本にまたがって運用するのでその調整の手間、冬期を中心とする悪天候による運休の多さ、電車に比べて速度が出ないためダイヤ上で支障になること、1両当たりの定員が少ないことによる収益性の低さ、そして需要が減っているので新造もできないと、廃止したかったであろうことも想像に難くない。

汚れているけど「日本海」のヘッドマーク(冒頭の写真と同じ)
荒波と左上に星が1つ輝くだけのシンプルだけど「日本海」らしいマークも、見られなくなるのか。


今回の報道では、「日本海」は1968年に運行開始とされている。
それで間違いではないのだが、列車名の「日本海」はそれ以前の1950年に、同じ大阪-青森間で急行列車として登場している。
その後、1968年10月のいわゆる「ヨンサントオ(昭和43年10月)」の大ダイヤ改正時に、新たに創設された寝台特急に「日本海」の名を譲り(←これが今の日本海の起源)、従来の急行日本海は急行「きたぐに」となった。
きたぐには、後に大阪-新潟間に短縮されて現在に至っている。


僕が物心ついた頃は、日本海が2往復運転されていた。
歴史をさかのぼると、当初は1往復で、(定期列車としては)1978年から2往復体制になったそうだ。
秋田駅では上りは2号が19時半頃、4号が22時半頃。下りは1号が5時半頃、3号が9時前の到着だった。青森~秋田周辺(区間は列車ごとに異なる)での利用は寝台料金が不要で、上りは指定席特急券、下りは立席特急券(自由席特急券と同額)で利用できた。通称「ヒルネ(昼寝)」。

青函トンネルが開通した1988年から2006年までは、1・4号が函館まで行っていた。これが秋田方面から北海道へ行く、唯一の直通列車だった。ただし、函館行きの1号を立席特急券で利用できるのは東能代以北だったので、秋田から乗るとすれば寝台料金が必要だった。

2008年には、2・3号が廃止され、1往復になる。
号数がつかない「日本海」になったが、時刻は1・4号を踏襲。


現在のダイヤでは
上り:青森19:31→秋田22:31→富山5:28→金沢6:16→福井7:17→京都9:51→大阪10:27
下り:大阪17:47→京都18:22→福井20:26→金沢21:31→富山22:20→秋田5:32→青森8:45

下りの秋田着がもう少し遅いと使いやすくも感じるが、それだと青森着が遅すぎるだろうから、仕方ないか。
上りの京都・大阪着は、明らかに遅すぎる。大阪圏での通勤ラッシュを避けるためかもしれないが、むしろ、北陸地方がちょうどいい時間帯になる。
秋田駅の発車標 ※2010年撮影

英語版
秋田駅で「大阪」行き表示が見られなくなる。

寝台特急のマークも目にする機会が減った ※寝台急行の場合は、色が反転する

日本海が廃止されれば、秋田と関西を結ぶ交通手段は、航空機とフェリーだけとなる。また、北陸の富山・金沢・福井などへ乗り換えなしで行かれる交通手段がなくなる。
上記「トワイライトエクスプレス」は秋田県を通るが、秋田県内で乗客の乗り降りを扱う駅はない。(ちなみに秋田駅は深夜0時前後で、潟上市の大久保駅で上りと下りのトワイライトどうしがすれ違うダイヤだそうだ)
北前船時代とは違って現在は関西・北陸と秋田の交流はそれほどないし、秋田の人は“東京が好き”だし、現状でも北陸へわざわざ東京を経由して行き来する人もいるから、廃止による影響は軽微かもしれない。
でも、昔は「日本海」「白鳥」など、日本海側を結ぶ列車がたくさんあったのを思うと、不便になったと感じずにはいられない。

秋田県では、秋田空港発着のソウル便を維持しようと、公費を投じてあの手この手の策を講じている。
だったら、同じく秋田県(県民や旅行客)の交通手段の1つである「日本海」には何もしてくれないのだろうか。日本海存続は無理でも、ダイヤや料金面での“激変緩和措置”を要望するとか。

それから、上記の通り、秋田以北では日本海の座席を利用することもでき、昼間の特急列車の役目も果たしていることになる。
日本海の代替として秋田-青森間で1本増発したりはしないだろうか。
でも、2008年に日本海が減便された際は、前後の普通列車の時間を動かすことによる、お茶を濁したような対応だったので、今回もそうなるかもしれない。


ところで、このニュースについて、青森の東奥日報では18日12時08分に「速報」として共同通信社の記事を公式サイトにアップしている。
しかし、同じく共同通信の配信を受けているはずの秋田魁新報のサイトには、18日夜時点でまったくアップされていない。他のマスコミも取り上げていないようだ。それだけ、秋田における「日本海」への関心が薄いということだろうか。
【19日追記】19日付の社会面に、共同通信社配信の記事がそのまま掲載されていた。
【19日さらに追記】東奥日報のサイト(見出しとリード文しか見られないけど)では、19日になってさらに独自取材と思われるの2つの記事がアップされた。
8時55分に「「日本海」廃止に惜しむ声相次ぐ」として「乗客、県民、関西地方に住む県人ら」が惜しんでいることを紹介。※ここでの「県」とは青森県のことです。
10時57分には「「日本海」廃止、修学旅行に影響」として廃止の報を受けて「来年度の修学旅行での利用を予定していた津軽地方の高校では、予算との兼ね合いもあって日程変更の検討などを始めた。」とのこと。
秋田では公立高校でも、修学旅行の航空機利用が一般的になっているようだが、青森ではまだなのだろうか?(こういう点でも秋田と青森の県民性の違いが見えるような気がする…)

さて、さきがけさん。秋田県民はどう感じているのでしょうね。

【12月16日追記】JR各社から正式に廃止されることが発表された。ダイヤ改正は来年3月17日。同時に急行「きたぐに」も廃止で、どちらも繁忙期の臨時列車としては今後も運行するという。
秋田から青森にかけては、やはり既存の普通列車の時刻を移動させて対応するようだ。
※関連記事はこちら
※ダイヤ改正についてはこちら
コメント (15)
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