広く浅く

秋田市を中心に青森県津軽・動植物・旅行記などをご紹介します。

坂の向こうの光景

2016-07-14 18:49:23 | 秋田の季節・風景
平成初期、中学校に入学して最初の国語(光村図書の教科書)の単元が、「あの坂をのぼれば」だった。
※光村図書ホームページによれば、1987年度から1992年度まで使われた教科書に掲載。限られた年代の人しか学習しなかったことになる。

「あの坂をのぼれば、海が見える。」という祖母の言葉を信じ、(【15日追記】その祖母の言葉が「しごく大ざっぱな言葉のあや」だったせいで)いくつもの坂を越えて海を目指す少年の話。
1982年刊行の杉みき子の作品集「小さな町の風景」が出典。商店、鳥、橋など8つの風景ごとに章分けされ、その中にさらに複数の作品がある。「坂のある風景」の1つが「あの坂をのぼれば」。

内容はよく分かったけれど、秋田市に住む者としては現実感は乏しい作品だった。海沿いで平坦な地形の秋田市なら、坂など越えなくても海にたどり着くのだから。
むしろ、「坂のてっぺんを越えると、突如視界が開けて海が見える」シチュエーションにどこか憧れを覚えた。
【2017年6月8日追記】余談だが、教科書の掲載部分には「草いきれ」という言葉が出てきた。初めて聞いた言葉で、響きにインパクトがあった。

秋田市南西部、浜田地区の大森山動物園前は、その条件を満たす場所だ。
(再掲)


秋田市北部の寺内地区は、高清水公園の小高い丘になっている。
公園内を旧国道(市道)、東側のふもとを新国道(秋田県道)、西側ふもとの秋田運河(旧雄物川)との間を、国道7号線(臨海バイパス。現在はこれが本道)が、いずれも南北に伸びる。
高清水公園の西側では、傾斜がきついからか、旧国道と臨海バイパスを直接つなぐ東西方向の道路はない(港大橋前~土崎臨海十字路の間)。
しかし、その部分にも住宅がそれなりにあり、旧国道からそこへつながる道がある。今春、初めてそこを通って知った風景。
※今年4月初めの撮影です。
旧国道から曲がって少し上り坂で、今春オープンした秋田市秋田城跡歴史資料館の前を過ぎる。
資料館前から振り返る。坂の下が旧国道、左が土崎・右が中央部方向

資料館前から西方向
資料館の先には家がなく、畑、空き地、原野、山林のようなものが続く。夜だったら怖い道。昼でも、先に何もなさそうで、行くのが気が引けるけど進む。
しかも、道が少しカーブしていて、見通しが利かない。やがてその先に、
路面が見えなくなり、先に何か見える


道路が急な下り坂になり、その下に家が見える、さらに向こうには、工場と海!
予備知識がなかったこともあり、いきなり目の前に海が広がって、はっとさせられた。

上下方向にはわずかだけだけど、左右方向は全幅に渡って日本海が見渡せる。
住宅は寺内後城(てらうちうしろじょう)地内、工場は秋田運河対岸・向浜の日本製紙。臨海バイパスや運河の水面は、住宅に隠れるのか、高低差のせいか、ほとんど認識できない。

坂を少し下ると、隠れていた右方が見える。
男鹿半島
秋田港のポートタワー・セリオンは、ぎりぎり見えない。

旧国道から来ると、だらだらと上り坂があって、曲がった後に急に下り坂になるわけだから、「坂を“のぼれば”海が見える」という状況ではないけれど、劇的な風景の変化は気持ちいい。
住宅や工場は別として、坂をのぼり詰めた先に海がある光景としては、「あの坂をのぼれば」の少年が目的を達した時に見たであろう光景もこんな感じだったのではないだろうか。ちなみに作品は、海を見る直前、海が近いことを示唆して終わっている。

この南側にも同じような道があり、そちらについても後日。 さらに南の別の道の風景

【2018年5月3日追記】関連した話題。
・秋田市新屋の雄物川河口近くには、海方向に向かって上る大きな坂があるが、その坂をのぼっても海は見えない。

・中学校で「あの坂をのぼれば」と、ちょっと関連づけて記憶に残っているのが、歌い出しが「乾いた空に続く坂道」である岡村孝子の「夢をあきらめないで」。
フジテレビのワイドショー「タイム3(スリー)」のエンディング曲として使われて、存在を知った歌。
シングルリリースは1987年、タイム3は1988年に始まって(「3時のあなた」の後継)、2代目のエンディング曲だったそうだ。僕が中学校で「あの坂を~」を習ったのは、1989年だから、まさに同時期になろう。
コメント (4)
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