郵便ポストの続き。
前回は、秋田市ではちょっと珍しいポストを紹介した。
※前回の記事で細長い11号ポストが、秋田市内に「4つしかない」としていましたが、その後、さらに5つ存在することが分かったので、訂正します。それでも、9本だから「ちょっと珍しい」でしょう。
今回は、おそらく秋田市内には1つしかないと思われるポスト2タイプ。
最初は、最近の現地は未確認ながら、意外なポストが意外な場所にあるもの。【その後、2017年1月時点で現役なのを確認】
現物の写真はない【上の2017年1月の記事に写真を掲載しました】ので、山形県戸沢村のJR陸羽西線・古口駅で2009年に撮影した、同型ポストの写真を使います。
左が改札口方向、右が駅前広場
駅出入口に風除室があり、その中の柱に、内側(改札口)向きに赤い箱が取り付けられている。
投函口に「おす」とある
取付方法や形状から、一見、郵便物が“届く”ほうのポスト、すなわち「郵便受け」かと思ってしまう。
だけど、「郵〒便POST」と表示があり、側面に、はがれかけながら収集時刻も記載されている。れっきとした、郵便物を“出す”ほうのポスト、「郵便差出箱」なのである。
これは1951年登場の「郵便差出箱2号」。現行ポストの前世代である、朱色のポストの1つ。
明治から終戦直後までは、壁掛けの差出箱も多かったようだが、規格化後の「差出箱○号」の中では、数少ない壁掛けタイプ。もう少し大きい「5号」というのもあって、駅のホームなどに設置されていたそうだが、今は消滅状態。
前世代のポストは、1996年のモデルチェンジ時に、ほぼ同サイズの後継機種が登場したが、壁掛けタイプは後継が出なかった。ただし、いちばん小さい14号は脚なしの壁掛け設置にも対応しているそうなので、2号は実質的に14号を後継として、製造は終わったということだろうか。
映画「男はつらいよ」で寅さんが訪れる駅や店にかかっていそうな、「昭和」の「田舎」の趣きあふれるポストである。
ところが、完全な後継機種がなかったせいか、今も農村部の店先などに2号ポストがかかっているところが、探せばまだそれなりにあるようだ。一方で、街中にも存在することがなくもないそうだ。その1つが、秋田市内にある。
おそらく、秋田市内ではそれがただ1つの2号なのだけど、「昭和」の「田舎」とはほど遠いロケーション。
それは、秋田市新屋の秋田公立美術大学。※秋田公立美術工芸短期大学時代から設置。
学生食堂などが入るレストハウス(厚生棟)の中にある。
(再掲)右の建物内
以前、中に入った時に目に留まって、「おやっ!」とは思ったが、あまり興味はなく、それきりだった。
その後、古口駅でまた目に留まって写真を撮影していたのだが、美短のものと同じであることまでは考えが及ばなかった。
美大でも、昭和初期に建てられた旧米倉庫のほうならともかく、1995年の短大開学時に建てられた、コンクリート打ちっぱなしの建物にこのポストがあるのは、不思議な組み合わせ。
ポストのモデルチェンジ(製造終了)が1996年だから、おそらく最末期製造・設置の2号ポストだろう。
美大敷地内には、別に普通のポスト(旧型の中型1口の1号かな)もある。レストハウスの裏側、ATMコーナーや駐車場出入口の道路側。
レストハウスは休日は閉鎖されると思われるから、平日のみの収集なんだろうか。(実は古口駅のもそうだった)
【29日追記】そういう条件の場所なのに、あえて屋内に、しかも当時としても珍しいであろうポストを設置した、郵政省(当時)の判断がおもしろい。現在は、秋田中央郵便局の管轄だが、2003年までは地元の新屋郵便局が収集を行っていたので、当時の新屋局の方針なのだろうか。(企業などが自由に設置できる私設ポストというのもあるが、それは安くない手数料を取られるそうで、立地を考慮した必要性や公立大学がそこまで費用を出せるかという点から、考えにくい)
古口駅も美大も、屋内設置で状態が良いだろうから、末永く残ってほしい。
【2017年2月1日追記】秋田魁新報の購読者向け折り込み月刊誌「郷 Vol.122」の写真によれば、由利本荘市の羽越本線羽後亀田駅にも、2号ポストが設置されている。こちらも屋根付きの風除室風の場所に設置されており、状態は良さそう。
もう1つは、新しいポスト。
2010年頃、秋田中央郵便局前の北側にポストが増設されたことを紹介した。
秋田市中央部では珍しい、投函口が1つで中型の「郵便差出箱10号」であるが、それこそ新屋とかちょっと郊外へ行けば、ごく普通に見られる。だけど、ここのはとても珍しい10号なのです。
秋田中央郵便局の10号
(再掲)北秋田市鷹ノ巣駅前。上の大太鼓はさておき、これが一般的な10号
どこが珍しいのか、分かりますか?(側面と天面の分割位置が異なるのは、製造時期による違い)
答えは「庇(ひさし)」。
同時期に登場した他のサイズのポストも含めて、本体と同じ赤であるべき庇が、これは投函口部分と同じ銀色になっているのです!
以前取り上げたように、このポストは新品ではなく、どこかの中古品。
そのため、再設置時に再塗装されて、その時に庇が銀にされてしまったと考えられる。意図的に銀に変えたのか、間違ってしまったのかは知らないけど。
正面から見ると、赤い部分が少なくて「ポストは赤」という印象が薄くなってしまう気がしなくもないけれど、全体的に引き締まってスタイリッシュかもしれない。
【29日追記】ポストの存在は5年以上前から知っていたが、庇の違いには最近、ポストの庇に興味を持って写真を比較するまで気付かなかったくらいだから、どっちみち大した違いではない。
夏の日差しに輝く
ネットで調べる限り、庇が銀色のポストなど見たことがない。
ひょっとしたら、銀庇のポストは秋田で1つどころか日本で唯一の、丸ポスト以上にとてもレアなポストかもしれない。
※2019年4月頃に、このポストは撤去された。
3回にわたったポストの話題は、とりあえずこれにて終わります。
前回は、秋田市ではちょっと珍しいポストを紹介した。
※前回の記事で細長い11号ポストが、秋田市内に「4つしかない」としていましたが、その後、さらに5つ存在することが分かったので、訂正します。それでも、9本だから「ちょっと珍しい」でしょう。
今回は、おそらく秋田市内には1つしかないと思われるポスト2タイプ。
最初は、
現物の写真はない【上の2017年1月の記事に写真を掲載しました】ので、山形県戸沢村のJR陸羽西線・古口駅で2009年に撮影した、同型ポストの写真を使います。
左が改札口方向、右が駅前広場
駅出入口に風除室があり、その中の柱に、内側(改札口)向きに赤い箱が取り付けられている。
投函口に「おす」とある
取付方法や形状から、一見、郵便物が“届く”ほうのポスト、すなわち「郵便受け」かと思ってしまう。
だけど、「郵〒便POST」と表示があり、側面に、はがれかけながら収集時刻も記載されている。れっきとした、郵便物を“出す”ほうのポスト、「郵便差出箱」なのである。
これは1951年登場の「郵便差出箱2号」。現行ポストの前世代である、朱色のポストの1つ。
明治から終戦直後までは、壁掛けの差出箱も多かったようだが、規格化後の「差出箱○号」の中では、数少ない壁掛けタイプ。もう少し大きい「5号」というのもあって、駅のホームなどに設置されていたそうだが、今は消滅状態。
前世代のポストは、1996年のモデルチェンジ時に、ほぼ同サイズの後継機種が登場したが、壁掛けタイプは後継が出なかった。ただし、いちばん小さい14号は脚なしの壁掛け設置にも対応しているそうなので、2号は実質的に14号を後継として、製造は終わったということだろうか。
映画「男はつらいよ」で寅さんが訪れる駅や店にかかっていそうな、「昭和」の「田舎」の趣きあふれるポストである。
ところが、完全な後継機種がなかったせいか、今も農村部の店先などに2号ポストがかかっているところが、探せばまだそれなりにあるようだ。一方で、街中にも存在することがなくもないそうだ。その1つが、秋田市内にある。
おそらく、秋田市内ではそれがただ1つの2号なのだけど、「昭和」の「田舎」とはほど遠いロケーション。
それは、秋田市新屋の秋田公立美術大学。※秋田公立美術工芸短期大学時代から設置。
学生食堂などが入るレストハウス(厚生棟)の中にある。
(再掲)右の建物内
以前、中に入った時に目に留まって、「おやっ!」とは思ったが、あまり興味はなく、それきりだった。
その後、古口駅でまた目に留まって写真を撮影していたのだが、美短のものと同じであることまでは考えが及ばなかった。
美大でも、昭和初期に建てられた旧米倉庫のほうならともかく、1995年の短大開学時に建てられた、コンクリート打ちっぱなしの建物にこのポストがあるのは、不思議な組み合わせ。
ポストのモデルチェンジ(製造終了)が1996年だから、おそらく最末期製造・設置の2号ポストだろう。
美大敷地内には、別に普通のポスト(旧型の中型1口の1号かな)もある。レストハウスの裏側、ATMコーナーや駐車場出入口の道路側。
レストハウスは休日は閉鎖されると思われるから、平日のみの収集なんだろうか。(実は古口駅のもそうだった)
【29日追記】そういう条件の場所なのに、あえて屋内に、しかも当時としても珍しいであろうポストを設置した、郵政省(当時)の判断がおもしろい。現在は、秋田中央郵便局の管轄だが、2003年までは地元の新屋郵便局が収集を行っていたので、当時の新屋局の方針なのだろうか。(企業などが自由に設置できる私設ポストというのもあるが、それは安くない手数料を取られるそうで、立地を考慮した必要性や公立大学がそこまで費用を出せるかという点から、考えにくい)
古口駅も美大も、屋内設置で状態が良いだろうから、末永く残ってほしい。
【2017年2月1日追記】秋田魁新報の購読者向け折り込み月刊誌「郷 Vol.122」の写真によれば、由利本荘市の羽越本線羽後亀田駅にも、2号ポストが設置されている。こちらも屋根付きの風除室風の場所に設置されており、状態は良さそう。
もう1つは、新しいポスト。
2010年頃、秋田中央郵便局前の北側にポストが増設されたことを紹介した。
秋田市中央部では珍しい、投函口が1つで中型の「郵便差出箱10号」であるが、それこそ新屋とかちょっと郊外へ行けば、ごく普通に見られる。だけど、ここのはとても珍しい10号なのです。
秋田中央郵便局の10号
(再掲)北秋田市鷹ノ巣駅前。上の大太鼓はさておき、これが一般的な10号
どこが珍しいのか、分かりますか?(側面と天面の分割位置が異なるのは、製造時期による違い)
答えは「庇(ひさし)」。
同時期に登場した他のサイズのポストも含めて、本体と同じ赤であるべき庇が、これは投函口部分と同じ銀色になっているのです!
以前取り上げたように、このポストは新品ではなく、どこかの中古品。
そのため、再設置時に再塗装されて、その時に庇が銀にされてしまったと考えられる。意図的に銀に変えたのか、間違ってしまったのかは知らないけど。
正面から見ると、赤い部分が少なくて「ポストは赤」という印象が薄くなってしまう気がしなくもないけれど、全体的に引き締まってスタイリッシュかもしれない。
【29日追記】ポストの存在は5年以上前から知っていたが、庇の違いには最近、ポストの庇に興味を持って写真を比較するまで気付かなかったくらいだから、どっちみち大した違いではない。
夏の日差しに輝く
ネットで調べる限り、庇が銀色のポストなど見たことがない。
ひょっとしたら、銀庇のポストは秋田で1つどころか日本で唯一の、丸ポスト以上にとてもレアなポストかもしれない。
※2019年4月頃に、このポストは撤去された。
3回にわたったポストの話題は、とりあえずこれにて終わります。