ちいさい頃の記憶なので定かではない。
近所に「みつろう」君という子がいた。
近所と書いたが、僕達の住む地域と
みつろう君ちは少し離れていた。
体が小さくて、赤い服を着ていた。
勿論毎日じゃなかったろうが、
胸の下あたりにWの線の入ったシャツ、
みつろう君のイメージはそれだ。
学年は二つ下だったと思う。
あの頃
学校のクラスの友達と遊ぶのとは別に、
学年を超えた隣近所のグループがあり、
草野球を一緒にやったりしたのだ。
地区の少年野球に入っている
一学年上の青田君がピッチャー、
僕と同学年の牛島君がサード。
(ちなみに青田君は地区野球では二塁、
牛島君は控え投手だったけれど……)
僕はショートで、みつろう君は
投手後方でほぼ二塁ベース上という
普通はないポジションに入っていて、
打順もなかった・・・例えば
二死走者なしで七番・鮫洲に回った時
「タイム」を申告して彼が打席に立った。
最近でいえばバレーボールの
リベロがサーブを打つルールに似ている。
広場のレフト後方は草藪で、
打球が飛び込むとプレーを中断し
皆で探した・・・高度成長期の
まだまだ我が国が豊かではなかった頃
・・・軟球一つが高価だった。
頑張っても見つからない時は決まって、
みつろう君の鞄から真新しい
ビニール包まれたボールが出てきて、
ゲームは再開するのだった。
それから夏の暑い日などは
酒屋の豪ちゃん・・・と呼ばれていた、
恐らくは当時三十くらいの従業員
・・・が自転車でジュースを配達し、
必ず、みつろう君に「毎度~」と。
守備位置も、二つのエピソードも
子供心に不思議だったのだが……。
暫くして。
みつろう君は、もっと遠い町に越した。
仲間で手紙を書くことになり、
初めて彼が〈太陽のように明るく
狼のように強く〉という願いから
漢字で書くと「光狼」だと知った。
※※※
まさに燃えあがる太陽のように、
熱いパッションを持って
新しい挑戦に立ち向かっていく
力強さを表す「サン」と、
組織力で獲物を捕らえる、
身体は大きくなくとも、俊敏な
「ウルブズ」を重ね合わせた
・・・スーパーラグビーに参戦する
「サンウルブズ」。
我らがチームが2021年シーズンより
リーグから外れることが発表された。
主催「SANZAAR」は、これまでも
多額な援助を求める一方で
放映料の配分はしない条件を突き付け、
今回、更なる負担を強いてきた。
サンウルブズは、それにNoと答えた。
オーストラリア、ニュージーランド、
南アフリカのラグビー強国の中に
後進国日本を混ぜてやるのだから、
それは求めて当然だということか?
※※
もしも本当に光狼君が存在したら。
僕はどうしていただろう?
近所に「みつろう」君という子がいた。
近所と書いたが、僕達の住む地域と
みつろう君ちは少し離れていた。
体が小さくて、赤い服を着ていた。
勿論毎日じゃなかったろうが、
胸の下あたりにWの線の入ったシャツ、
みつろう君のイメージはそれだ。
学年は二つ下だったと思う。
あの頃
学校のクラスの友達と遊ぶのとは別に、
学年を超えた隣近所のグループがあり、
草野球を一緒にやったりしたのだ。
地区の少年野球に入っている
一学年上の青田君がピッチャー、
僕と同学年の牛島君がサード。
(ちなみに青田君は地区野球では二塁、
牛島君は控え投手だったけれど……)
僕はショートで、みつろう君は
投手後方でほぼ二塁ベース上という
普通はないポジションに入っていて、
打順もなかった・・・例えば
二死走者なしで七番・鮫洲に回った時
「タイム」を申告して彼が打席に立った。
最近でいえばバレーボールの
リベロがサーブを打つルールに似ている。
広場のレフト後方は草藪で、
打球が飛び込むとプレーを中断し
皆で探した・・・高度成長期の
まだまだ我が国が豊かではなかった頃
・・・軟球一つが高価だった。
頑張っても見つからない時は決まって、
みつろう君の鞄から真新しい
ビニール包まれたボールが出てきて、
ゲームは再開するのだった。
それから夏の暑い日などは
酒屋の豪ちゃん・・・と呼ばれていた、
恐らくは当時三十くらいの従業員
・・・が自転車でジュースを配達し、
必ず、みつろう君に「毎度~」と。
守備位置も、二つのエピソードも
子供心に不思議だったのだが……。
暫くして。
みつろう君は、もっと遠い町に越した。
仲間で手紙を書くことになり、
初めて彼が〈太陽のように明るく
狼のように強く〉という願いから
漢字で書くと「光狼」だと知った。
※※※
まさに燃えあがる太陽のように、
熱いパッションを持って
新しい挑戦に立ち向かっていく
力強さを表す「サン」と、
組織力で獲物を捕らえる、
身体は大きくなくとも、俊敏な
「ウルブズ」を重ね合わせた
・・・スーパーラグビーに参戦する
「サンウルブズ」。
我らがチームが2021年シーズンより
リーグから外れることが発表された。
主催「SANZAAR」は、これまでも
多額な援助を求める一方で
放映料の配分はしない条件を突き付け、
今回、更なる負担を強いてきた。
サンウルブズは、それにNoと答えた。
オーストラリア、ニュージーランド、
南アフリカのラグビー強国の中に
後進国日本を混ぜてやるのだから、
それは求めて当然だということか?
※※
もしも本当に光狼君が存在したら。
僕はどうしていただろう?