昨年まで、大きな鉢で勢いがあったシャコバサボテン(クリスマス・カクタス)、
今年になって、「花と庭の係」妻が いくつかの小さな鉢に小分けにしたようで
それぞれ これまでと比べてかなり勢いがない。
多分 花の数も グンと少なくなりそうだ。
昨年の今頃は 次々開花し始めていたような気がするが
今年は ぼちぼち 蕾が膨らんできた程度、
「写真を撮るだけ係」の爺さんの出番が まだ来ない。
昨年11月のシャコバサボテン(クリスマス・カクタス)
昨年まで、大きな鉢で勢いがあったシャコバサボテン(クリスマス・カクタス)、
今年になって、「花と庭の係」妻が いくつかの小さな鉢に小分けにしたようで
それぞれ これまでと比べてかなり勢いがない。
多分 花の数も グンと少なくなりそうだ。
昨年の今頃は 次々開花し始めていたような気がするが
今年は ぼちぼち 蕾が膨らんできた程度、
「写真を撮るだけ係」の爺さんの出番が まだ来ない。
昨年11月のシャコバサボテン(クリスマス・カクタス)
図書館から借りていた 藤沢周平著 「よろずや平四郎活人剣(下巻)・浮草の女」(文藝春秋)を 読み終えた。「オール読物」1980年(昭和55年)10月号から1982年(昭和57年)11月号に連載された連作短篇構成の長編時代小説で、1983年(昭和58年)に発刊された(上巻)(中巻)(下巻)の内の(下巻)である。
第12代将軍徳川家慶の下、天保12年(1841年)頃から天保14年頃、老中水野忠邦が「天保の改革」を行い、一切の贅沢、無駄の取り締まりを強化した。挙げ句、不景気を招き、庶民は疲弊し、不平不満が充満、失脚するまでの期間、水野派と反水野派の政争が有った時代を背景にした時代小説。主人公は 幕府目付神名監物の腹違いの末弟で、剣の達人でありながら 長屋に住み 「よろずもめごと仲裁」の手数料で生計を立てる神名平四郎(かんなへいしろう)。お人好し、お節介焼きな性分、ユーモアをも混じえながら、時には金銭で、時には剣力で、双方に傷が残らないようにもめごとを収める物語。一方で 兄の目付神名監物の命令で 対立する水野派、鳥居派との暗闘に駆り出され、剣客としても活躍する。細やかな江戸の情景描写有り、凄まじい斬り合い場面有り、庶民の暮らしと武家の諸問題、並列で描いた、藤沢周平ならではの痛快娯楽時代劇だと思う。
読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう爺さん、読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも その都度、備忘録としてブログに書き留め置くことにしている。
藤沢周平著 「よろずや平四郎活人剣(下巻)・浮草の女」
本書には 表題の「浮草の女」の他、「家出女房」、「走る男」、「逆転」、「襲う蛇」、「暁の決闘」、「宿敵」、「燃える落日」の 連作短篇8篇が収録されている。
「家出女房」
正月早々、神名平四郎は 住んでいる長屋与助店の井戸端で 周囲を気にしながら、暮れからたまった越中ふんどし等汚れ物の洗濯に励んでいて、表通りの煮しめ屋の子持ち後家美人おちかがやってきたことに気づかず、不覚にも 「あら、旦那。お洗濯ですか?」と声を掛けられてしまう。「もめごと仲裁」の依頼は おちかの隣家、女房おきちに家出された大工芳次郎問題。手間賃は 50文と煮しめ1皿。「・・・気の乗らん仕事だ」。船頭長吉の手に匕首が・・。「今度の仕事は足が出たぞ」「悪かったねえ・・気軽に頼んで」。兄神名監物の下男嘉助が平四郎の家にやってきて おちかを見掛け、「・・・年増で美人というのは よくありません。・・・女子はこわいものですからな、お気をつけなさいまし」、まったくだと平四郎は思った。
「走る男」
神名平四郎は ノミを持った髭面の男に追い詰められた男と出合う。小間物問屋小花屋の手代清助、檜物職人熊五郎は女房およしが清助に間男されたと怒り狂っている。「もめごと仲裁」依頼人は清助、手間賃は 1分。「いや 悪かったよ、手代さん」、仲直り出来ればけっこうではないか。
「おい、どうした?」、熊五郎が右手に木槌を持って 清助を追い掛けてくる。「今度は本物なんでえ、・・あいつただじゃおかねえ」
いやはや・・・男女のことはひと筋縄ではいかないものだと 平四郎は憮然として 二人の走り去った方を眺めた。
「逆転」
幕政の綱紀一新を改革の柱とする老中水野忠邦の密命を受けた町奉行鳥居甲斐守は 本来は目付の支配下である御家人の取締りにも密かに乗り出して、神名平四郎の許嫁早苗の嫁ぎ先御家人菱沼惣兵衛も、内職に高利貸していることがバレ、御書物同心の役を解かれ 無役の小普請組に編入された。平四郎は 許嫁であり初恋の女性である早苗のことが気になって仕方無い。
一方で 古着商手島屋彦六(42歳)が「もめごと仲裁」依頼にやってきた。女房おうらは 彦六より身体が大きく、力が強い。夫婦喧嘩の仲裁?。「どうも いかんな」。「この手しかない・・」。八郎兵衛屋敷。「おてるさん、お世話になったね」。おうらが片手おがみに亭主をなだめ、小男の彦六がふんぞり返っている。・・・先行きのことはわからない。「もめごと仲裁」の手間賃は 3両。
「襲う蛇」
平四郎の家に「もめごと仲裁」依頼にやってきたのは 北国の小藩の江戸留守居役宮内喜平。素性が分からぬ浪人につけられ殺気を感じているという厄介事。手間賃は6両。平四郎は兄神名監物の配下樫村喜左衛門の小者仙吉に探索を依頼、常陸笠間藩の出の戌井勘十郎であることが判明。
一方 平四郎は 菱沼惣兵衛に 借金のかたで嫁いでしまった許嫁で初恋の女性早苗の姿を見掛け、うどん屋に誘い対面。長い間早苗を想ってきて 再会する喜びが胸に溢れて、その時に決心する。この人のほかに生涯をともにする女子は、この世にいまい。と。
平四郎は 直心影流戌井勘十郎と死闘、「6両じゃ、ちと安かった。命がけだ」
「暁の決闘」
北見十蔵の家に 国元から元女房高江、息子保之助が来ていることを 明石半太夫から聞かされ、十蔵が 国元で婿入りし、塚原十蔵だった頃の事件絡みで 果し合いに挑むことを知る。その相手は 三徳流の使い手野瀬金十郎。
一方で 真綿問屋山城屋善助からは 息子万之助か身代をよこさないと皆殺しにするという脅しの相談を受ける平四郎。相手は おくみ?、香具師の親分灰屋門左衛門?、脅し請負人枡六?、「じゃ 500両だ」。
平四郎が真綿問屋山城屋に降り掛かった災難を片付けてから半月程して 青山梅窓院裏の空き地に十人程の人影。北見十蔵の野瀬金十郎との果し合いが・・。果たして・・。
「浮草の女」
明石半太夫の裏切りでいったん頓挫した剣術道場開設を 改めて 明石半太夫、北見十蔵、神名平四郎、3人で開設する具体的な相談が始まった。
一方で 平四郎の家に 雪駄屋筑波屋の娘なみが「もめごと仲裁」の依頼にやってきた。手間賃は 1分。父親弥助が持ち出した金が200両、場末の飲み屋のおまつとは?、作蔵が振り向いた。「おれ、しつっこいのは嫌いなんだよ」、手には匕首が光り・・・、
早苗が 平四郎の家にやってきて・・、「そのお覚悟、お有りですか」
「宿敵」
平四郎は 興奮気味な兄の目付神名監物から幕府の政治情勢を懇懇と聞かされ 睡魔と戦っている。「・・・・こらっ、聞いとるのか」、老中水野忠邦の上知令に対して 幕閣、大名、旗本、民百姓・・から猛烈な反対がでており 鳥居耀蔵等も 水野派を見限る動きが有るという。
一方で 平四郎の家には 呉服商の桔梗屋小兵衛が 「もめごと仲裁」の依頼にやってきた。小兵衛は 小田原城下の呉服屋に勤めていた頃は宗吉といい、女郎屋に通い、店の金を盗み入牢、入れ墨者となったが 出牢後、女郎おはつと逃亡、江戸にやってきて呉服商を成功させた。小兵衛の素性を知っている元岡っ引き勘七が突然現われ、脅し、強請り、たかりを仕掛けてきた。平四郎は 勘七に、20両で手を打たせる。
兄の目付神名監物の命令で見張り、護衛に駆り出された平四郎、ライバルの鳥居耀蔵の警護をしている剣客奥田伝之丞との宿命の対決となった。死闘の末・・・、「平四郎、お前は剣だけは見どころがある男と思っていたが わしの眼に狂いはなかった。よくやった」、めったにない兄の褒め言葉だが、平四郎は息がはずんですぐには答えられなかった。
「燃える落日」
明石半太夫、北見十蔵、神名平四郎、3人の男は ついに剣術道場開設の念願が叶う。「雲弘流指南」の看板を表に掲げ、万感の思いだが・・、「やはり 匂うな」、元醤油問屋の納屋を改築した道場、建物には醤油の匂いがしみ込んでおり・・。母屋を増設予定で その留守番を誰にするか。結局 平四郎がすることに決まる。道場開き前の内輪の酒盛りを終えて、平四郎はいい気分で長屋与助店の家に戻ったが、家の中に灯がともっており、そこに早苗が水仕事をしているではないか。「菱沼の家を出てきました。今夜から この家に置いていただきます」。平四郎は 御家人菱沼惣兵衛と 早苗の離縁状取り付けの交渉をするが、惣兵衛は平四郎に刺客を差し向ける。10両の約束だったが、平四郎は 5両を畳にばらまいた。惣兵衛は這い回ってその金を拾っている。
「旦那、お似合いだよ」、平四郎、早苗が 長屋与助店から道場母屋に引っ越す日、「よろずもめごと仲裁」の看板をはずし、小脇に抱え、「さあ。行くか」。長屋の女達、煮しめ屋のおちか、隣りのおきち・・みんなに見送られ・・。
「何事が起きたのかね?」「水野が老中をやめさせられたんだよ」
その町も金色の日没の光にまぶしく彩られつつあった。天保14年閏九月13日の日が沈むところだった。
長編時代小説ながら 連作短篇構成なので 記憶力無しの爺さんでも、読み進めやすかったように思う。詩情有り、ユーモア有り、ラブストーリー有り、壮絶な斬り合い場面有り、娯楽時代劇を堪能させてくれる作品。ハッピー エンドで終わっているのも 後味が良い。
(おわり)