図書館から借りていた 安住洋子著 「しずり雪」(小学館)を 読み終えた。随分前に どなただったか記憶曖昧になっているが コメントをいただき おすすめいただいた時代小説で、ふっと気が付いて借りてきたものだ。1999年に 第3回長塚節文学賞短篇小説部門大賞を受賞した作品なのだそうだ。もちろん、読書初心者とて 安住洋子氏の著作を読むのは 初めてのこと、その作風も知らず分からずだったが 随所に やや説明文が長過ぎる感を受けたものの、時代小説の面白さを十分堪能出来る作品だと思った。
安住洋子著 「しずり雪」
本書は 「しずり雪」、「寒月冴える」、「昇り龍」、「城沼の風 (一)虎落笛、(二)浅霧」、4篇からなる短篇集のような構成になっているが 4篇に 決して主人公では無い 岡っ引きの友五郎が登場し、緩い繋がりを持たせているという作品である。
「しずり雪」
主な登場人物 孝太・・蒔絵職人
お小夜・・孝太の女房
作次・・孝太の幼馴染
友五郎・・岡っ引き
老中水野忠邦の天保の改革により奢侈取締りが始まり贅沢品娯楽品禁止され江戸の町が火が消えたようになり 蒔絵職人孝太も仕事が無くなってしまった。うまい話を持ち込んできたのは 幼馴染の作次。岡っ引きの友五郎がやってきた。「おまえ、作次って知ってるな」、作次は殺されるが、友五郎は粋な計らいをする。顔を上げると 枝から絶え間なく雪がこぼれ落ちていた。
「寒月冴える」
主な登場人物 高橋淳之祐・・小石川養生所の医師
おえい・・小石川養生所賄所で下働きする娘
荘介・・千駄木団子坂下の田圃に突き落とされ死んだ男
長吉・・荘介の同居人、
おきみ・・荘介の妹
おやえ・・おきみの娘
友五郎・・岡っ引き
高橋淳之祐は医師でありながら 荘介が死の直線言い残したの願いを叶えるべく、友五郎と共に探索、おきみは死んでおり、その娘おやえは?、淳之祐は友五郎に酒をついだ。友五郎は分厚い手で淳之祐の背を叩いた。三日月だけが雲の切れ間から煌々と輝いていた。
「昇り龍」
主な登場人物 おさと・・小間物屋春日屋勘助の妻
勘助・・おさとの夫(実は 三之助)
留蔵・・おさとの父
松吉・・大工
庄三・・左官屋
貞次・・盗人
五十幡真吾・・定町廻同心
友五郎・・岡っ引き
新助・・友五郎の下っ引き
高橋淳之祐・・小石川養生所の医師
矢源太・・?
おさとが夫勘助と別れて父親留造の面倒をみようと思っていた矢先のこと、留造が何者かに襲われ、庄三と松吉が担ぎこんできた。岡っ引きの友五郎は 小石川養生所の医師高橋淳之祐に手当を頼むが・・・、留造の背中には 昇り龍の刺青。留造を襲った三人組の一人が水死体で見つかり・・、留造が死の直前、言い残した「矢源太」とは?、夫勘助が伊勢に行くと言う。
友五郎、新助の探索が続き・・、まさか、、まさか。松吉はおさとの手をとった。おさとの目に涙が溜まっていく。
「城沼の風 (一)虎落笛、(二)狭霧」
主な登場人物 浅丘祐真・・沢木祐三郎の息子沢木太一郎(祐真)・浅丘家の養子
浅丘新右衛門・・町火消人足改与力
野江・・新右衛門の妻
千歳・・平松勝蔵の娘・浅丘祐真の妻
平松勝蔵・・養生所見廻同心
美之里・・平松勝蔵の妻・千歳の母、
五十幡弘江・・五十幡真吾の娘・千歳の親友、
五十幡真吾・・定町廻同心
友五郎・・岡っ引き
羽鳥誠志郎・・浅丘祐真(沢木祐真)と道場仲間、幼馴染、
沢木祐三郎・・浅丘祐真の父、高石藩勘定方
美代・・沢木祐三郎の娘・浅丘祐真(沢木祐真)の姉
吉野貴久・・美代の夫
秋葉銀十郎・・高石藩勘定方・沢木祐三郎と同僚、
筆頭家老安藤國の遠縁、
水木麻右衛門・・高石藩勘定方・沢木祐三郎と同僚
遠野朔之丞・・高石藩番頭、
物語は 足尾の山並みが見え、城沼の風景が広がる高石藩の勘定方、藩庫管理を携わっていた沢木祐三郎が同僚の秋葉銀十郎の不正を見抜き詰め寄ったが、殺されてしまうところから始まっている。主人公は 祐三郎の息子太一郎(元服後沢木祐真、後に浅丘家の養子となり浅丘祐真)。不正が明るみになっては藩の存亡に関わる事件、祐三郎の同僚水木麻右衛門は 筆頭家老安藤照國の差し向けた刺客に殺され、安藤の遠縁の秋葉銀十郎は断罪されなかったものの謹慎処分後出奔、祐三郎の遺児祐真は 番頭の遠野朔之丞の差配で江戸へ。祐真は 町火消人足改与力浅丘新右衛門の養子となり、養生所見廻同心平岡勝蔵の娘千歳を結婚するが 父親の仇、秋葉銀十郎を見かけてから 幸せな家庭生活と仇討ちへの思いの間で一人葛藤する。羽鳥誠志郎が江戸詰めとなり再会。定町廻同心五十幡真吾、岡っ引き友五郎の存在にも気が付くのだが・・・、
「千歳に城沼を見せたいのだ」、祐真は空を仰いだ。城沼に吹く風を思い出し、祐真は目を閉じた。千歳も立ち止まり、祐真の視線を辿った。
「しずり雪」の姉妹作として 岡っ引き友五郎を主人公にした 安住洋子著「夜半の綺羅星」が有るとのことを知った。いずれ読んでみたいと思っている。