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葉室麟著 「津軽双花」

2025年02月17日 17時47分16秒 | 読書記

図書館から借りていた、葉室麟著 「津軽双花」(講談社)を読み終えた。
本書には、戦国時代末期から徳川江戸時代初期、著者独自の新鮮な解釈を投げかけた、「津軽双花」「鳳凰記」「孤狼なり」「鷹、翔ける」の、長編1篇、短編3篇の時代小説が収録されている。


読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。



「津軽双花」(表題作)
▢主な登場人物
 満天姫(まてひめ)・直秀、蔦(つた)、
 津軽信枚(つがるのぶひら)・辰姫(大舘御前)、
 福島正則・福島正之、
 南光坊天海僧正
 高台院(寧々、北政所)
 杉山源吾、
 大熊(熊千代、信枚の兄の子)
 本多正純
▢あらすじ等
 福島正則の養嗣子福島正之に嫁し、十八歳で嫡男直秀を生んだ満天姫、夫の死後、実家の下総国
 関宿藩松平康元家に戻っていたが、家康に呼び出され、津軽家、津軽信枚に再嫁を命じられる。
 信枚にはすでに正室辰姫がおり、家康の姪であり養女である満天姫と石田三成の娘である辰姫、
 共に津軽家に嫁した二人の間には、あたかも、関ヶ原の戦から十三年越し、家康と三成の因縁の
 戦いの様相があり、
 秀吉の正室、高台院(寧々)と淀君(茶々)と確執関係に相似するような女の戦いでもあった。

 さらに、信枚が家臣としている杉山源吾は、石田三成の遺児石田隼人正重成であり、
 石田家の血を残したいとの思いを持った辰姫の兄だった。
 辰姫が平蔵を生み病死。平蔵は、信枚亡き後、信義と名を改め、家督を相続。
 一方で、満天姫の実子直秀は、福島家再興を謀る者達に担ぎ出され、藩内抗争になりかねない
 事態となり、悲壮な覚悟を固め

 「母上、お別れの御挨拶に参りました」
 「直秀殿、母はあなたを誇りにいたしてこれからも生きてまいりますぞ」
 福島家再興の謀は絶たれ、満天姫は信義の母として津軽で生き、信枚に遅れること七年、
 弘前で生涯を終える。
 将軍徳川家光に「満天姫はわが祖父家康公の養女、余にとっては叔母にあたる。
 そなたたちも身内のように思えるぞ」と、認められ、津軽で、石田家の血が受け継がれる
 ことになったという物語である。


「鳳凰記」
▢主な登場人物
 茶々(淀君)、秀頼、
 寧々(高台院、北政所)、完子(さだこ)
 片桐且元
 後陽成天皇、
 清韓(せいかん)、
 阿茶局、本多正純、
▢あらすじ等
 亡き豊臣秀吉の正室で落飾し高台院と呼ばれていた寧々が、大阪城を訪れ、
 秀吉の側室ながら御台様と呼ばれている茶々に対面、徳川家康に対する対応について
 諫言するのだが・・・。

 豊臣家を率いる淀君は、立ちふさがる徳川家康という強大な敵に対して、
 一族存亡を懸ける覚悟を。日一日、家康の命を削っていく戦略に。

 方広寺大仏殿の鐘の銘文に家康の諱(いなみ)を刻ませ・・、
 片桐且元が大阪城を出て、戦いの火ぶたが切って落とされ、・・・、
 秀頼が立ち上がり、「母上、どうやら豊臣の最期は父上の名に恥じぬものになりそうで
 ございます」

 「皆、頼みますぞ」
 あたかも鳳凰が天高く飛び去るのを見るがのように男たちは見送った。


「孤狼なり」
▢主な登場人物
 石田三成、大谷吉継、安国寺恵瓊(あんこくじえけい
 徳川家康、小早川秀秋(金吾中納言)、毛利輝元
▢あらすじ等
 関ヶ原の戦で、敗軍の将となり、京の六条河原で処刑されることになった毛利家の軍師
 安国寺恵瓊は獄舎の中で、石田三成に「関ヶ原の戦は、自分だけでなく、徳川も毛利も負けた。
 勝った者などいない戦いだった」と語られ、床に突っ伏した。
 「貴様は何ということを・・・」

 中国の「三国志」時代の策、「駆虎呑狼(くこどんろう)」(豹に虎をけしかけ、虎の穴が
 留守になったところを狼に襲わせる)を用いようとした三成、
 恵瓊の策はどうして破れたのか?

 「わたしは恵瓊殿の策に操られり一匹狼」だったが、孤狼には、孤狼の戦い方があったと
 いうことだ」

 三成は、遊行上人の読経をも断り、恵瓊、行長と共に、従容として死に向かった。


「鷹、翔ける」
▢主な登場人物
 斎藤内蔵助利三(さいとうくらのすけとしみつ)、
 土岐成頼(ときしげより)、斎藤妙椿(さいとうみょうちん
 松波庄五郎、斎藤道三、
 明智光秀、織田信長、羽柴秀吉、
▢あらすじ等
 天正十年(1582年)六月一日夜半、丹波亀山城を出発した明智光秀の軍勢一万三千、
 その先鋒を務める斎藤内蔵助を主人公にした物語である。

 内蔵助は、美濃の国主土岐氏に仕えた守護代、美濃斎藤家を祖先に持つ武将、
 下剋上により、美濃は、道三に乗っ取られ、さらに、織田信長に奪われ、その積年の恨みを
 抱きながら、光秀に仕え、その恨みを晴らす時がついにやってきた。
 光秀と内蔵助、土岐家の家紋「水色桔梗」を掲げ、本能寺へ、まっしぐら。

 「本能寺の変」の数日前、光秀が京の愛宕山参詣の際に詠んだ句、
 「ときは今、あめが下しる 五月哉」(土岐氏の光秀が天下を取る)
 内蔵助については、「言経卿記(ときつねきょうき)」に、
 「日向守斎藤内蔵助、今度謀叛随一也」(明智光秀の家臣である斎藤内蔵助こそ、
 「本能寺の変」を起こした随一の者である)

 との記述が有るのだそうだ。
 内蔵助は、生涯最後に、美濃斎藤の名を轟かせた人物だったということになる。


 


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4 コメント

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戦国時代の女人 (アナザン・スター)
2025-02-17 17:59:33
この物語は、史実であるのでしょう。
潔さと、清らかさを併せ持ち、主君に仕えるという難事を、果たした者は少ないです。

作者は、歴史に奔放される人間模様を、覚めた視点で捉えています。
毎日新聞掲載後、単行本に。

有難うございます。
返信する
アナザン・スターさん、こんばんは、 (takezii)
2025-02-17 18:19:25
>戦国時代の女人... への返信

コメントいただき有難うございます。
氷山の一角の史実にも、歴史に翻弄された、数多の人間が隠されていて、作者は、丁寧に考証しながら、描き出して、小説としての面白さにしてくれるということでしょうね。
返信する
Unknown (おとめ)
2025-02-17 21:47:33
ちょうど私も今読んでます。
ついつい夢中になり、時間を忘れてしまいます。
葉室麟…blogでお見かけしてから、ずっときになってました。

また、お薦めをご紹介下さい。
返信する
おとめさん、こんばんは、 (takezii)
2025-02-17 22:42:15
>ちょうど私も今読んでます。... への返信

共感同感していただければ幸いです。
つい数年前まで、読書の習慣等、まるで無かった爺さんですが、藤沢周平の著作を、ほとんど読み終えと頃から、葉室麟の著作にはまっている次第なんです。
どの著作も、味わい深く、にわかに、おすすめする力が有りませんが、備忘のため、私の、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留めてありますので、
「ブログ内検索」で、「葉室麟」入力、検索していただければ、ずらっと抽出されますので、よろしかったら、覗いてみて下さい。
よろしくお願いします。
コメントいただき有難うございます。
返信する

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