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諸田玲子著 「昔日より」

2022年04月20日 15時53分52秒 | 読書記

図書館から借りていた、諸田玲子著 「昔日より」(講談社)を 読み終えた。本書には、「新天地」「黄鷹」「似非侍」「微笑」「女犯」「子竜」「打役」「船出」の、短編時代小説、8篇が収録されている。いずれも、江戸時代、初期、中期、末期の、武士とその周辺の人達の暮らしぶりや、過去を引きずって生きる人達の生き様を描いた作品。


読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう爺さん、読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に 書き留め置くことにしている。


「新天地」
主な登場人物・黒左衛門、国太郎、浜野屋金兵衛、佐次郎、伊勢熊
信州から、新天地江戸に向かう黒左衛門、国太郎 父子。国太郎は、黒左衛門が関ケ原の合戦の猛者だったことを信じていたが、次第に疑惑が深まりだす。失望した国太郎は、父親と袂を分かつが・・・、最後に、堂々とした姿を息子に見せる父親が・・・・、
「伊勢熊と黒左衛門はがっちりと組み合った」・・・、「お父ーっ。負けるなよーオ」

「黄鷹」
主な登場人物・清雲院(お奈津)、黄鷹(わかたか)、蓮華院(お梅)、ぎん、多次郎、
清雲院は、徳川家康の元愛妾だったお奈津、伊勢生まれの清雲院を頼って、道ならぬ恋の成就を懇願してきた町娘ぎん、清雲院は、配下の老忍び黄鷹と共に、その願いを叶えてやろうとするが・・・、
「黄鷹は、庵では死ななかった。・・・、明け方・・姿を消した」・・・・、「遠いあの夜、黄鷹と自分は、声と体を一つにして家康の命を救ったのである」

「似非侍(えせざむらい)」
主な登場人物・石川弥次郎右衛門、田所猪之助、おこよ
武士の一分のため中間にまで身を落としていた男石川弥次郎右衛門と、武士の風上にもおけない「似非侍」を演じる田所猪之助の心の交流が描かれているが、実は、最後に思わぬ結末が待っている。田所猪之助は、実は、一刀流の指南で・・・、
「おこよ、許せ・・」・・・「門番にしておくのは宝の持ち腐れじゃのう」「郎党として召し抱えよう・・」、「曲則全」(曲なればこそ則ち全し)(曲がっていればこそ命を全う出来る)・老子

「微笑」
主な登場人物・前島弥右衛門(新三郎)、良江、弥太郎、新十郎、万之助、水野十郎左衛門、
大番組番士坂屋儀兵衛の次男新三郎は、後妻嘉代の子、腹違いの嫡男儀一郎とは犬猿の仲、無類の徒旗本奴水野十郎左衛門の真似をして気取り、世をすね、江戸の市中をのし歩く神祇組に属した不良旗本だったが、突然、上役の前島家へ養子が決まり、「許せ、万之助、おれは、水野にはなれぬ・・・」、仲間と袂を分かったが・・・、好き勝手に生きるはずが、風紀を取り締まる側に身を置くことになり・・・、
「庭に控える仕置役に合図を送る。昔日の微笑が生涯ついてまわるだろうと、苦い唾を呑み下しつつ・・・」

「女犯(にょぼん)」
主な登場人物・安藤平十郎、朋代、平太郎、真二郎、香代、伊助、紀美、文妙、日道、
下級武士、御蔵奉行手代安藤平十郎の妻朋代は、若い頃、唆されて、若き僧文妙とたった一度だけ過ちを犯してしまっているが、寺社の風紀の乱れを取り締まる延命院事件発生で、古傷が痛み出し、心が揺れる。「女犯」は、今日の不倫であるが、僧侶には特に厳しく、極刑に処せられた。
「その場に笄が落ちておったそうじゃ。・・・(中略)、朋代は身をこわばらせた。夫に廃寺の侍の姿が重なる。それも一瞬、空を仰いだ。お姑さまをお呼びしましょう。お茶を入れて参ります」

「子竜(しりょう)」
主な登場人物・平山行蔵(こうぞう)(子竜)、増井新左衛門、里和(りわ)、寺尾文三郎、
度を超した厳格さで生きる老武芸者平山行蔵(実在の人物)が、旗本の娘、若い里和に秘めた片想いを抱くというユーモラスな物語。その心の恋人を弟子寺尾文三郎に奪われ、二人の逃避行に、身を挺して護衛までするという切ない心情を描かれている。
「行くのだぞ。蝦夷へ。なんとしてもたどり着け、文三郎、里和どの・・・(中略)、枯葉が舞う。老人と古参の弟子は代わる代わるくしゃみをする。冬は、目前まできている」

「打役」
主な登場人物・杉浦吉之助、琴江、佐代、杉浦左兵衛、小夜、早瀬作次郎、兼吉、おたき、矢平、
「打役」とは、牢屋同心の内、囚人に笞打ちや拷問を執行する役割のこと、牢屋同心は世襲であり、杉浦吉之助は、牢屋同心打役だった亡き父親の恋、苦悩を知り、自分も淡い恋心を抑制、打役同心を全うする。武士の悲哀を静かに描いた作品。
「二人は役人然とした顔になった」

「船出」
主な登場人物・伊都子(いつこ)、作太郎、章三郎、とめ、矢羽根模様の着物の女、
慶応が明治に変わり、徳川家の幼君家達が駿府藩の領主となり、旧幕臣と家族は、駿府・遠江へ移住を命じられた。米国から借り入れた3000tも有る大型船ゴールデン・エージ号の船倉に詰め込まれ、清水港に向かって護送される2500余りの武士や家族の様子、出来事を描いた物語。
「昔日の1件は、どちらも口にしなかった。・・・、江戸は、はるかに消えた。武士の世は終わりを告げた。伊都子の目の先には、まっさらな明日がひろがっていた」

 


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