図書館から借りていた、上田秀人著 江戸役人物語「武士の職分」(角川文庫)を、読み終えた。数年前まで、読書の習慣などまるで無かった爺さん、作家上田秀人についても、その作品についても、ほとんど無知だったが、最近になって、相互フォロワー登録している方のブログで知り、読んでみたい気分になり、先日、初めて、「峠道・鷹の見た風景」を読んだばかりだった。今回も、内容等、事前情報ゼロで、ふっと手を伸ばして借りてきた書だったが、短編、4篇からなる構成で、時代小説というより、江戸時代の幕府の役職で、あまりよく知られていないような役職について、具体的な事例で解説している風な作品だった。
読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。
▢目次
変わった役職についてのまえがき
第一章 表御番医師の章、あとがき
第二章 奥右筆の章、あとがき
第三章 目付の章、あとがき
第四章 小納戸の章、あとがき
◯「表御番医師」とは、
江戸城内で発生する傷害事故等に携わる町医者。
世襲を旨とする幕府が、唯一実力主義を徹底した医師のこと。
矢切良衛、お城坊主、土井縫殿助利意、吉佐鶏庵、
◯「奥右筆」とは、
大名、旗本等の届け出や陳情等を、裁量出来る役職で、
大名、旗本は、敵に回すことを最も恐れた役職。
江田参左衛門、
◯「目付」とは、
大名、旗本の非違観察や、江戸城中の安穏を守る役職。旗本の俊英が選ばれる。
公正厳粛、清廉潔白、親兄弟であろうと罪を暴き、なりふりかまわぬ手柄を求めた役職。
多田朔馬、美保、左兵衛、
◯「小納戸」とは、
「若年寄」の支配下で、将軍の身の回りの世話をする役職。
身分は低いが、出世する可能性が大で、人が羨む役職だが、
将軍に嫌われて、お手討ちもありえた。
柳沢保明、堀田筑前守正俊、徳川綱吉、桂昌院、亮賢、稲葉石見守正休、大久保加賀守忠朝、
これまで読んできた時代小説にも、随所に登場している江戸時代の役職名であり、なんとなくその職分について、分かっているような気がしていたが、著者が、新たな観点と筆致で、その職分の在り方、武士、役人達の熾烈な競争、闘い、宮仕えの真髄を描いている。