ステキな銅版画の挿絵の付いた本である。
百合子さん(もう何冊も読んでいるうちに
ついこう呼びたくなる)は食べることが何
より好きであり、「枇杷」も枇杷の実を八
個もぺろりと泰淳氏がモゴモゴと食す間に
食べてしまったと書いてある。僕が百合子
さんの文章で好きなのは、美味しいものを
上げつらってゆくのではなく、不味いもの
を食べてしまったことが書いてあるものだ。
「夏の終わり」も、オムレツをビルの四階
にある、いかにもおいしそうなオムレツやで
まずいオムレツを喰わされた、と書いておら
れる。この裏切られた感は、なんともおかし
みを誘う。ひどく可哀想になってしまうので
あるが……。
百合子さん(もう何冊も読んでいるうちに
ついこう呼びたくなる)は食べることが何
より好きであり、「枇杷」も枇杷の実を八
個もぺろりと泰淳氏がモゴモゴと食す間に
食べてしまったと書いてある。僕が百合子
さんの文章で好きなのは、美味しいものを
上げつらってゆくのではなく、不味いもの
を食べてしまったことが書いてあるものだ。
「夏の終わり」も、オムレツをビルの四階
にある、いかにもおいしそうなオムレツやで
まずいオムレツを喰わされた、と書いておら
れる。この裏切られた感は、なんともおかし
みを誘う。ひどく可哀想になってしまうので
あるが……。